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『・・・・・相談をいただくうちの2割程度です』(藤井一郎)

 中小企業のM&Aの何たるかを紹介した書籍があります。M&A仲介会社の社長さんが著した書で、豊富な経験を踏まえてセルサイド(売り手側)、 バイサイド(買い手側)のみならずファンド等の関係者の視点からも問い(Q)を立て回答(A)していく形式で、理解し易いものとなっています。

 わたしたちは、米系事業会社で働いていた折に、M&Aにおけるバイサイド・セルサイド双方の立場で仕事をした経験があります。加えてファンドの立場でDD(due diligence = 企業精査・買収監査)からPMI(post-merger integration=企業合併後統合作業)まで手掛けたこともあります。

 また近年では、クライアントの経営支援の一環として株式譲渡の支援もしました。こうした経験からその粗方を理解しているつもりではいましたが、殊に中小企業特有の現状については本書から多くを学ばせてもらいました。

 ヘッドラインは、その中のQの一つ(「売れる会社は何割くらいですか?」)に対するAです。「厳しい目で見ると」との断り書きがありますが、実態はそうそう甘いものではないようです。

 財務内容がいいことは勿論のこと権限移譲が進められ組織的な仕事がなされていること(=俗人的な業務運営でなく・仕事を進める各種しくみが存在していること)が重要なポイントです。

 わたしたちが支援したクライアントの場合は、当初M&Aを視野には入れていませんでした。数年に亘る支援の中で社長や経営幹部の方々と多くの議論の末の帰結でした。思うにそうしたポイントを難なくクリアしてスムーズな売却に至ったのは、知的資産経営(※)を枠組みとした支援を進めたからこそと思っています。
 
※   知的資産経営とは、 人材・技術・組織力・顧客とのネットワーク・ブランド等の目に見えない企業固有の資産を知的資産として認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる企業価値を高める経営手法のこと。結果として「将来の売却を見据えた経営」に通ずる手法です。
 
参照:藤井一郎,2021,『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実』東洋経済新報社


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