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小うるさい経験者

#10年前の南極越冬記  2010/2/12

ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。

◇◇◇

明日13日には昭和基地を離れ、僕ら50次隊と51次夏隊は全員しらせへと向かう。僕らの最後の日は、残される51次越冬隊28人にとっては、本格的な越冬生活の始まりの日だ。一年前、50次夏隊を乗せた最後のヘリを見送ったあとには、急に基地が広く感じられ、「本当に置いてかれちゃったんだな」と寂しく思う反面、「これから自分たちの手で、28人だけの越冬生活をつくりあげるんだ」というワクワクする気持ちでいっぱいだったのを覚えている。きっと51次越冬隊も今まさに同じ気持ちでいるに違いない。

この1年間で培った僕らの越冬生活への強い思い入れが、ついつい厳しい言葉へと変わり、この約2ヶ月の引継期間に51次へとぶつけてしまったこともあった。「きっと嫌な気持ちをさせてしまっているんだろうな」と申し訳なく思いながらも、たとえどんなにうるさく思われようと「何としてもこれだけはここに残していかなきゃならない」と思う強い気持ちと、限りある時間とが、それを抑えることを許してくれなかった。自己満足なのかもしれないけれど、長い越冬生活の中でいつかきっと、僕らが伝え残した言葉やスキルが51次隊のプラスになると信じている。どうか頑張って、そして南極の全てを思いっきり楽しんで欲しい。

南極越冬生活の、冬の間の「極夜」と夏の間の「白夜」を冗談めかして、越冬を「1泊2日」、夏隊を「日帰り隊」なんて言う。僕の「1泊2日」が間もなく終わりを迎えようとしている。終わってしまう実感はまだ無いけれど、「またいつかここに来たい」という気持ちだけは今はっきりと自分の中に感じることができる。今よりももっと大きくなってから、またここに戻ってきたい。

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村上祐資|FIELD architect
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