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福岡インディペンデント映画祭2022 作品紹介 その⑭(1105-P1)

11/5(土)第1プログラム(10:20~12:00)
'傑作短編アニメーション特集'

 
今回のコンペティションでとにかく目立ち、そして完成度の高さが際立っていたのがアニメーション作品(実写とのハイブリッド作品含む)。

このプログラムではその中でも特に個性が強く、鮮烈な印象を残した授賞&優秀作品7本を一挙上映します。今年度の目玉プログラムです(画像クリックで作品ページに飛びます)。
 
『古代戦殻ジェノサイダー第22話 OP・ED・CM集』(監督:細川晃佑、5.20min)

2020年からYouTube上では「なつかしの」番組“リアルナイトかんさい”などを送り出した‘にしい’さんの作品が界隈を賑わせたが、アニメなら断然これ。

インディペンデントスピリッツ賞にふさわしい、長い労苦の形跡と隅々まで行き渡った仕込み。80年代世代も、知らない世代も魂震える怪作。歌が小室哲哉っぽいのがまた何とも言えぬ味わい。
 
『軟膏母さん』(監督:阪上彰馬、11.07min)

コメディー賞に輝いた、短編アニメーション界の異端児(?)阪上彰馬監督の2作品を連続上映。

少しレトロでサブカル臭の漂うキャラデザイン、紫が目に付く色づかい。コミカルな動き、ナンセンスなようで人の習性をうまく掘ったストーリー。口内炎という目の付け所も最高!
 
『愚問のぐぅもん』(監督:阪上彰馬、10.16min)

こちらもコメディー賞授賞作品。『軟膏母さん』が徹底してミニマムさを追求した作品なら、こちらは徹底して低い目線から世の中を風刺した痛快作!だからと言って啓蒙性・説教臭さは前面に出て来ず、むしろぐぅもんのかわいさにハマってしまいそうな楽しさが。

こういう作品が応募されて、そして上映できて本当によかった!
 
『MARE』(監督:石田たまき、7.46min)

3DCG賞授賞作品。キャラクターの造形や表情の変化、効果音の良さ、細部に至る精密な描写、現代を巧みに反映したストーリー、画面の向こうから感じるチーム力の高さ…などなど、3DCG短編作品の中では文句なしに最高の作品でした。

作り手の気持ちが伝わる、観るこちらも真摯な気持ちで向き合いたい一作。
 
『おやすみ ~Lullaby of Flame~』(監督:若見ありさ、6.52min)

オムニバスアニメーション『Birth』シリーズに続き、ドキュメンタリー映画『プリズンサークル』(監督:坂上香)でも強い存在感を示した若見監督。

監督独特の砂絵アニメーションと音楽が融合し、再び唯一無二の時間を生み出してくれます。文句なしの素晴らしさ。
 
『ガラッパどんと暮らす村』(監督:若見ありさ、16.53min)

この作品があったからこそ新設した『文化映画賞』。貴重な口伝・民話、そして方言を、芸術性が高く、かつ親しみやすいアニメーションによって後世に遺す。しかもマスメディアではなく地域と作家が主体となった試みという点でも文化的な意義が非常に大きい作品です。

実写とは異なる、アニメーションならではの「記録性」にも新たな可能性を感じさせてくれます。
 
『ミラクルトイズ リカバー ザ ドクター』(監督:草刈成雄、24.30min)

インディペンデントスピリッツ賞授賞作品。コマ撮りで20分以上の作品を撮っただけでも凄いのに、手製の木のおもちゃも映画自体も、作ったのは長野・木曽に住む木工職人さん…と、文字通りインディペンデントスピリッツの塊でしかないインパクト最強の作品。

ここ2年半の世相を反映しつつも、独特の不気味さと謎にあふれ、かつてのパテー、8mm時代の味わいまで含んだ質感がたまりません。「個人映画」という呼称がピッタリ。

文:大塚 大輔(プログラミングディレクター)
福岡インディペンデント映画祭2022は、11月3日から6日まで開催されます


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