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昭和のディスラプター「宅急便」を生み出した、論理的思考と善い循環。『小倉昌男 経営学』を読んで

僕にとって「戦略」は永遠のテーマのようであり、ことあるたびに戦略の本を読んでいる。今回この本を手に取ったのは、『戦略の思考法』という書籍を読む中でおすすめの本だと紹介されていたからだ。

小倉昌男は言わずと知れたヤマト運輸の社長だった方であり、すでに亡くなられているが、当時、郵便が独占していた個人宅配に切り込み僕らが知っている「宅急便」を生み出した方だ。ヤマト運輸は百貨店から送られる荷物をビジネスの主としていたが、そこから180度異なる個人宅配に切り替え、事業の成功を納めた。

本書は、氏が経験してきたリアルな奮闘記であるし、経営者が考えてきた思考の数々が紹介されている。

論理的思考

小倉は経営リーダーの10の条件の一番先頭に、「論理的思考」をあげている。これは、他社が実現している結果にとらわれるのではなく、自社が直面する状況下においてどのような行動に出るか、仮説を立てて考えて、行動、検証することが重要であると言っている。

 経営者にとって一番必要な条件は、論理的に考える力を持っていることである。なぜなら、経営は論理の積み重ねだからである。  
 経営にはいろいろな場面で計画が必要である。そして計画を立てるには、予測をしなければならない。その予測が当たるか、当たらないか。経営者にとって鼎の軽重を問われる場面である。  
 前提条件があり、与件が与えられ、目標が決められ、行動に移す。そして、予期した通りの結果が出るかどうか。それは経営者の読みが深いか浅いかにかかっている。  

p272『小倉昌男 経営学』

本書を読めば、「宅急便」を生みだすまでの小倉の考え方を知ることができる。数値的な思考実験(フェルミ推定的な)ものも含めてかなりリアルに述べられており、論理的思考の如何が分かると思う(わかった気にも当然なるので注意)。

善い循環

儲かる会社には「善い循環」がある。「善い循環」という表現もまた本書で散見されるキーワードだ。循環とは、ジェフベゾスが紙ナプキンに書いたと言われるループ図的なものだろう。これの起点になるものを見極め、起点を作りだすことにとことんリソースを投入していく。時代背景という条件もあると思うが、小倉はヤマト運輸におけるその起点を「良く働くこと」、「労働生産性」とした(p35−36)。

本書で読み取れるシンプル化した「善い循環」

各要素(まるの中身)にはさまざまなことが含まれているものの、このような全体感を掴みつつ、起点部分を実現するための手段を明確にしていくことで、この歯車を回せるようになる。そしてこの歯車がひとたび回ってしまえば、さらにビジネスは加速するようになる。善い循環の起点を見つける、それをロジカルに明確にし周囲を動かすこれが経営かと思わせられる。

おわりに

結局のところ詳細は本書を読んでもらいたいと思う。郵便局のみがやっており、採算が取れないと思われていた個人配達という業態に一から挑んでいった様子は、今でいう「ディスラプター」のようだ。行政とも戦っていて、その姿勢は凄まじい。

儲からないから止めてしまう、というのでは情けないではないか。それをやるのが経営者の意地ではないかーー。起業家魂というと格好良いが、経営者のロマンというか、夢を追うような気持ちがあったのである。  

p72   『小倉昌男 経営学』

今更ながら本書を読んでよかったと思う。
僕と同じように、戦略について悩んでいる方から、新規事業を立ち上げようとしている方などにも勇気を与えてくれる本だと思う。

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