死因究明拠点設置 日本 新型コロナウイルス 20220225
高齢化などにより、周りに気付かれずに孤立死するケースが各地で相次いでいます。
また、新型コロナウイルスの感染拡大以降、自宅などで症状が悪化して亡くなる人も多くなっています。
現在の日本の制度では、事件性がない場合、死因について詳しい調査を行うことはほとんどありません。
日本政府は、死因の究明を行うための拠点を一部の自治体に試験的に設けるとしています。
死因の究明をめぐってはこれまでにも解剖が行われず暴行などが見落とされていた事例が発生しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20220225/k10013500161000.html
自宅などでの死亡増 死因究明拠点を一部自治体に試験的設置へ | 新型コロナウイルス | NHKニュース
死因究明の仕組みである監察医制度は、特定の地域(東京23区、大阪市、神戸市、名古屋市)でしか施行されておらず、それ以外の監察医制度非施行地域は、監察医が死体検案を行いません。
この場合、たとえ犯罪であっても、現場の警察の判断によって事故死、自殺、病死と判断されれば、解剖されることはなく、その犯罪が明らかになることはありません。
http://www.shiga-med.ac.jp/~hqlegal/kaibou.html
<法医解剖と監察医制度>
司法解剖
犯罪性がある、或いはその疑いがあるときに行われる。『刑事訴訟法』(第168条)に基づき、検察官あるいは警察官の嘱託により、裁判所の発行する鑑定処分許可状が得て行われる。
結果は鑑定書として嘱託者に報告される。
行政解剖(承諾解剖)
犯罪性はないが、死因を究明する目的で行われる解剖。『死体解剖保存法』に基づき、遺族の承諾のもとに行われる。
監察医制度施行地域では、監察医が死体検案を行い、必要な場合は解剖(行政解剖)が行われる。この場合は遺族の承諾がなくても行うことができる。多くの地域は監察医制度非施行地域であるため、遺族の承諾のもとに、死因を究明する承諾解剖が行われる。
監察医制度
特定の地域(東京23区、大阪市、神戸市)では監察医をおき、異状死体外部リンクの検案を行う。検案によっても死因が判明しない場合は、解剖させることができる(行政解剖)。
上記は、日本国内における一般的な考えであり、下記の指摘では、司法解剖という言葉さえ、法律上は存在していません。
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/houi/suggestion/suggestion-3.html
Vol. 3 司法解剖の定義再考 | 千葉大学附属法医学教育研究センター Education and Research Center of Legal Medicine
そもそも、法律上、司法解剖という言葉は存在しない。ましてや、犯罪が疑われない場合には司法解剖が選択できないという記載もない。一般に司法解剖と呼ばれている解剖は、「警察または検察の嘱託により行われ、国が経費を支払う解剖」という要件を満たす解剖を意味している。
監察医制度が施行されていない多くの地域では、10%以下の解剖実施率となっています。
https://www.asahi.com/articles/ASM8Z76KMM8ZULBJ00P.html
死因究明の解剖率に地域格差 神奈川41%、広島は1%
都道府県別で解剖率が最も高かったのは神奈川で41%。次いで兵庫36%、沖縄25%、東京17%だった。一方、広島1%、岐阜2%、大分3%と、34府県で10%に満たなかった。
監察医制度という死因究明の仕組みがある一部の大都市では、犯罪の疑いがないとされた遺体の解剖が比較的多い。都道府県が運営し、法医学が専門の監察医が死因を調べ、解剖が必要か判断できる。ただ、対象の地域は現在、東京23区と大阪、名古屋、神戸の3市のみ。その他の地域では司法解剖を担う大学の法医学教室などで対応するケースもあるが数は少なかった。
以上から日本の犯罪発生率の低さは、実際には、犯罪が発生していないと恣意的に判断することで実現していると判断することが可能です。
解剖する以前に犯罪の有無を判断している点が問題となります。
本来であれば、犯罪を判断するためには、まずは解剖をし、医学的な判断に基づいて、その犯罪性の有無を判断する必要があります。
こうした問題の背景には、大日本帝国憲法下において官憲が、恣意的に犯罪の有無を判断できるようにするために、解剖によって事実が露見することを避ける目的があったと判断されます。
これには、官憲が犯罪者を逮捕し、拷問し死亡させた場合であっても、官憲の判断で事故死、自殺、病死とすることを可能とする目的も含まれます。
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000171009
以下の出来事に関する新聞記事を探しています。
小林多喜二取り調べ中に死亡(1933年2月)
朝日新聞[東京]
(当時の題号は『東京朝日新聞』)
1933年2月22日・夕刊2頁・「小林多喜二氏 築地署で急逝 街頭連絡中捕はる」
1933年2月22日・朝刊11面・「相次ぐ急死 左翼に大衝動 小林多喜二問題に作家同盟 警察側に抗議せん」「老母半狂亂 病院で涙の對面 母思ひだつた小林」
こうした目的のために、解剖に関して事前の犯罪の有無の判断が方便として用いられ、それが暗黙の了解となって今に至ったと判断されます。
もちろん明治初期の医学における技術水準や人員の問題で解剖が実施不可能であった時期もあったとは考えられます。
しかし、その後、日本の医学の技術水準の向上や人員が増加しても、改善されることはありません。
日本では、刃物などによる刺殺か、鈍器による出血を大量に伴う撲殺など、一見して犯罪行為が確認できる場合を除けば、多くは事故死、自殺、病死として片付けられています。
こうした問題は、小泉純一郎政権時代に取り上げられていますが、提案は退けられています。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a159104.htm
平成十六年五月十九日提出
質問第一〇四号
検視、検案、司法解剖等に関する質問主意書
六
そもそも、法医解剖を司法解剖と行政解剖に分類している国はほとんどない。行政解剖の結果犯罪の疑いが現れることもあり、犯罪可能性の有無によって、二種に分類するという制度自体、本末転倒であると言わざるを得ない。今後、法医解剖の制度を改めるため、検討する考えはあるか。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b159104.htm
平成十六年六月二十九日受領
答弁第一〇四号
内閣衆質一五九第一〇四号
平成十六年六月二十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎
六について
刑事訴訟法に規定する手続以外の手続により行われた解剖において、当該死体につき犯罪と関係のある異常が認められたときは、死体解剖保存法(昭和二十四年法律第二百四号)第十一条により、死体を解剖した者は、二十四時間以内に解剖をした地の警察署長に届け出なければならないこととされ、これにより捜査機関への情報提供がなされ、適正な捜査活動の開始が期待されることから、刑事訴訟法に規定する解剖とそれ以外の解剖とが制度上区別されていることによる特段の弊害はないと考えている。
2013年には、死因・身元調査法(調査法)が施行されましたが、その判断は、警察署長に任されています。
医学の専門家ではない警察署長に、こうした判断が可能であるとする考え方そのものが、この制度の利用を阻害しています。
そもそも警察署長は、その管轄地域において犯罪の発生が低いことで、その評価が高まります。
こうした場合、犯罪発生を証明するために、積極的に解剖を判断するインセンティブが警察署長には一切発生しません。
一方で、自分の評価を高めるために犯罪が発生していないと判断する高いインセンティブが警察署長には発生します。
これらを勘案すれば、死因・身元調査法(調査法)が機能不全となることは避けられません。
この法律を考案した官僚の方々は、この法律が機能不全になることを了解した上で、もしくは意図的に、解剖に際し警察署長の判断を条件にしたと判断されます。
もし、この法律を考案した官僚の方々が、機能不全になることを了解せず、もしくは意図的でなかったとすれば、その官僚の方々には法律を考案する能力が大幅に欠如していると判断できます。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=424AC1000000034
警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律 (平成二十四年法律第三十四号)
第六条
警察署長は、取扱死体について、第三項に規定する法人又は機関に所属する医師その他法医学に関する専門的な知識経験を有する者の意見を聴き、死因を明らかにするため特に必要があると認めるときは、解剖を実施することができる。この場合において、当該解剖は、医師に行わせるものとする。
https://www.asahi.com/articles/ASM8Z76KMM8ZULBJ00P.html
死因究明の解剖率に地域格差 神奈川41%、広島は1%
このため、13年4月に死因・身元調査法(調査法)が施行され、犯罪の疑いがないとされた遺体でも、警察署長の判断で家族の承諾がなくても解剖できるようになった。
筧千佐子被告による青酸連続殺人では、被害者の交際相手ら8人のうち6人が司法解剖されていません。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/7652
青酸連続殺人・筧被告「死刑と言われるの嫌なの」二審判決前に
これに関して、専門家が警告しています。
https://www.afpbb.com/articles/-/3077947
司法解剖率低い日本、犯罪死見逃す要因か
被害者とされる交際相手ら8人のうち6人については、司法解剖は行われなかった。このことについて専門家らは、日本のシステムの欠陥だと指摘し、国内での解剖率の低さは、殺人犯が逃げおおせていることを意味する可能性もあると警告している。
海外の事例と比較すると日本における解剖の割合が、非常に低いことがわかります。
警察庁の統計によれば、2014年に死因不明の「異状死」のうち、解剖に回されたのは、わずか11.7%だった。英イングランド(England)とウェールズ(Wales)で同年、解剖が行われた割合は40%、スウェーデンでは同95%だった。
千葉大学法医学教室の岩瀬博太郎教授は、長年この問題に取り組まれています。
「解剖率が低ければ、犯罪発見ができない可能性は高くなります」と、千葉大学(Chiba University)法医学教室の岩瀬博太郎(Hirotaro Iwase)教授は言う。
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038335
死体は今日も泣いている日本の「死因」はウソだらけ
岩瀬博太郎 著
第1章 検死はこうして行われる
1-1法医学者は何を見ているのか
1-2死体が教えてくれること
1-3あっさり下された「病死」診断が招いた連続殺人
首都圏連続不審死・婚活詐欺(木嶋香苗)事件
岩瀬博太郎
1967年千葉県生まれ。千葉大学大学院教授、解剖医。東京大学医学部卒業、同大学法医学教室を経て2003年より現職。2014年より東京大学法医学講座も兼務。日本法医学会理事。内閣府「死因究明等推進計画検討会」委員。年間300体以上の司法解剖を行いながら、警察庁・厚生労働省等の政府機関に、死因究明制度改革の必要性を訴えかけている。著書に『焼かれる前に語れ』『法医学者、死者と語る』(ともにWAVE出版)がある。
https://iss.ndl.go.jp/books?ar=4e1f&any=%E5%B2%A9%E7%80%AC%E5%8D%9A%E5%A4%AA%E9%83%8E&op_id=1&display=&sort=ud
「岩瀬博太郎」に一致する資料|国立国会図書館サーチ
実際に、死因究明のための解剖が行われなかったために警察は、犯罪を立証する機会を失っています。
https://www.afpbb.com/articles/-/3077947
司法解剖率低い日本、犯罪死見逃す要因か
筧被告は、殺人罪3件と強盗殺人未遂罪1件で起訴されている。国内のメディアによると、警察はほかの4件についても捜査したが、起訴できるだけの十分な証拠を見つけられなかったという。
日本の犯罪発生率の低さには、解剖率の低さが影響している可能性があります。
経済協力開発機構(OECD)が2015年に発表した統計によると、人口10万人当たりの殺人件数を示す殺人率が、日本ではわずか0.3%。これに対し、米国は5.2%、フランス0.6%、ドイツ0.5%だった。
警察によると、日本では2015年、殺人は未遂も含め933件発生し、その数は2004年から減少傾向にあるという。だが解剖率の低さが、本当の数字を隠している可能性があると、専門家たちは語る。
また、解剖によって犯罪を見逃すことが減少すると指摘しています。
「犯罪死でないと考えられた場合でも、死因が明らかでない場合に解剖して死因を究明する制度があれば、一定の確率で見逃しは減るものと考える」と、福岡大学(Fukuoka University)法医学教室の久保真一(Shinichi Kubo)教授は語る。
『問題の一端は大きな負担が強いられるために、警察が殺人事件にしたくないことにあるのでは』と指摘しています。
常磐大学(Tokiwa University)大学院の諸澤英道(Hidemichi Morosawa)教授は、推測の範囲としながら、問題の一端は大きな負担が強いられるために、警察が殺人事件にしたくないことにあるのではと見方を示し、犯罪を特定する機会を増やすためにも、警察は「できるだけ解剖するというのが基本原則だと思う」と述べた。
以上から、現在の日本では、死因について『必要な解剖、調査をした上で、医学的な根拠に基づき結論を出していない』と判断されます。
解剖が基本原則となれば、犯罪の有無にかかわらず、日本人の死因を厳密に突き止めることも可能となります。
これによって、さまざまな疾病や事故への対策が可能となり、健康と安全に大きく寄与することになります。
新型コロナウイルスのような未知の感染症が発生しても、厳密な死因究明が実施されれば、早期にこれを発見し、そのまん延を阻止することも可能となります。
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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20220225/k10013500161000.html
自宅などでの死亡増 死因究明拠点を一部自治体に試験的設置へ | 新型コロナウイルス | NHKニュース
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