自費出版備忘録(17)
8月24日(金)
表紙は仲俣さんに直してもらった。自分で直せるところも9割直した。
つまり、9割完成だ。いや、99.9%完成している。
ここからが猛烈にドギマギする。
印刷だ。
印刷屋さんを探して、部数を決める。
印刷屋さん数か所に、見積もりを出してみた。まちまちだ。
それが不安をあおる。
いいもの作らなきゃ意味がない。ここにきてしょうもないものは作れない。
といって僕は、立派な本を作るつもりはない。
最初は、新書版で作りたかった。それはアメリカの安っぽいペーパーバックが好きだからだ。
帯もカバーもなく、推薦文は表紙にじかに刷ってあって、すぐにヨレヨレになってしまう。尻のポケットに突っこんだまま椅子に座っても、シマッタ、なんて思わない。そんなアメリカの安いペーパーバックは、僕の小説にふさわしい。
そもそも日本の単行本や文庫本は、ちょっと綺麗すぎる・立派すぎると僕は思っている。
でも、その趣味を僕の本を買ってくれる方にまで押し付けるわけにはいかない。ある程度の値段を付けなければいけないのでもあるし。
部数の問題もある。
「フィクショネス」レーベル(ということにしている)第一弾の刊行物として『世界でいちばん美しい』を選んだのは、買ってくれそうな人がいるからだ。
それは多分、僕の読者より、ちょっと多いのではないか、と思う。『せかうつ』は、僕の小説というだけの作品ではないから。
(ということは第二弾以降、同じくらいの売れ行きは見込めない、ということでもある)
できたら買います! といってくださる方もおられる。
でもそれが何人なのかが判らない。当たり前だけど。
本来なら、もうひとつ問題があるはずだ。販路である。
私家版の小説を置いてくれる本屋さんというのは、日本にはほとんどない。
いわゆる普通の本屋さんには、無理だと思った方がいい。
だからかつては、私家版というのは事実上、売るための本ではなかった。親戚とか知り合いに配るために作る、記念アルバムみたいなものだった。
しかし今、本は本屋さん以外に売る場所がある。ネットである。
便利なサイトがあって、そこでは注文だけ受け付けて、お客さんには製作者が(つまり、僕が)郵送できるようなシステムになっている。
『せかうつ』は、原則的に注文を受けた本に自筆サインをいれるつもりだから、そういうサイトをフル活用するつもりだ。
躊躇してしまう。
その躊躇のために、本日は特に進展なし。