自費出版備忘録(番外)

製本や印刷のことを考えていたら、自分の本棚にある古本のことを思い出したので、ちょっと書いておく。
今、本の綴じ方といったら、平綴じ・無線綴じが当たり前で、平綴じは週刊誌の綴じ方だというイメージが強い。
だけどこんな本もある。

瀧井孝作『無限抱擁』の、多分初版。創元社刊。昭和十年九月発行。
362ページくらいあって、紐で綴じてある。

活版印刷、いいなぁ・・・

これ、どうやって作ったのだろう。多分、綴じるところまでは、でっかいミシンみたいな機械があったんじゃないかと思う(そう思う理由は後述)。
だけど背で結ぶのは手作業じゃないだろうか。紐を結ぶ機械があったような気がしない。
・・・なんてことを考えていたら、同じように中綴じの古本を持っているのを思い出した。谷崎潤一郎の『新版春琴抄』だ。

薄くて贅沢な和紙を使っているので、めくりにくい。


中央の綴じ方も同じだし、並べてみたら、穴の位置も同じだった。
だからやっぱり穴をあけるところまでは機械があったんだね。おそらくその機械は紐も通したと思う。

本のサイズは微妙に違う

『新版春琴抄』も創元社から出ていて、昭和九年刊。
あ!
今気がついた。

大阪市西区阿波座

同じ人が作ってる。井下精一郎。個人。職人の矜持を思わせる。
装丁や製本が確固とした技術、芸であることは知っていたし、原稿を書いたら本ができるなんて思ってたわけじゃない。
だけどこんな奥付を見ると、なんかがジーンと胸を打つ。
今まで僕の小説を「本」にしてくれた、すべての人に改めて感謝します。




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