DNA混入問題はなぜ起きるのか?
大腸菌のプラスミド導入による実験が注目され過ぎて、DNA混入が「大腸菌を使ってプラスミドを使うから起きるのでは?」という誤った認識を持っているひとが多く見受けられましたので整理をしたいと思います。
mRNAワクチン製造についての復習
現在のmRNAワクチンを作るためには、mRNAをたくさんたくさんたくさんたくさん作らないといけません。超ざっくり説明すると、RNAは不安定で人工合成が難しいので2本鎖のDNAとして作ります。そのDNAを1本鎖にバラすことでmRNAが作られます。
で、DNAにすると安定的に増やす仕組みがあります。それが大腸菌をつかった仕組みなのです。プラスミドという環状のDNAの一部に、このmRNAの鋳型になるDNAを組み込んで、大腸菌に入れてやれば、大腸菌を増やすことで大量に環状プラスミドDNAを作ることができるのです。
大量生産した大腸菌から環状プラスミドを取り出して(精製)、そこから鋳型になるDNAを取り出し、さらに1本鎖RNAにしてやれば、はい!大量のmRNAの出来上がりです。
ふたつの問題
大腸菌を使って大量につくった環状プラスミドDNA。これには不要なDNAがたくさん紛れています。カナマイシン耐性遺伝子や、ゴニョゴニョ40プロモーター、もしかしたらあんなDNA、こんなDNAも混じっているかも?とにかく目的の鋳型DNA以外は不要なので、他のDNAはバラバラに粉砕する必要があります。
ここで問題が2つあって、
1.不要なDNAの粉砕がちゃんとできていないのでは?
2.そもそも鋳型のDNAからバラしたDNAとRNAが結合してしまう
という問題です。
DNAをちゃんと粉砕できていないのでは?問題
DNA混入問題提起のきっかけになった「環状のままのプラスミドが混入してるのでは?」から始まり、ディープシーケンシングしてみたらバラバラのDNA断片が大きくて、ゴニョゴニョ40プロモーターとかが検出されたっていう経緯はみなさんご存じでしょう。不要なDNAは粉々に粉砕しておかないと、DNAは修復可能だし機能する大きさがLNPに残っているとさらにゲノム取り込みの危険が増しますよと。粉砕できていないDNAが混入することの危険はここにあります。
DNAとRNAが結合してしまう問題
詳しい仕組みは割愛しますが、DNAとRNAがくっ付きやすいという問題があります。これによりDNAを粉砕しにくくなります。下に東北有志医師の会のニコ動にアップされている村上康文先生のスライドを抜粋します。
実際、Kevin先生の実験でもDNAとRNAが結合しているものが検出されています。そう、つまりこれ、DNAからRNAを作ろうとしたらRNAとDNAがくっ付いてしまって、DNAだけ粉砕することは不可能。RNAもろとも粉砕するか先にRNAを粉砕しないとDNA消せないよねっていう製造上の問題があるのです。これは大腸菌プラスミドは関係ありません。鋳型にDNAを使うと起きる問題です。
末次先生の新技術
立教大学の末次正幸先生の「長鎖DNA増幅技術」を以て、このDNA混入問題が解決できるのではないか?という話題がTwitter上で見受けられました。大腸菌を使っていないからプラスミド混入自体がないのではないか?との意見です。記事を読んでみたのですが、この技術は確かに大腸菌を使わずに、長鎖DNAを増やす技術のようです。
しかし、これではDNA混入問題の解決になりません。前述した二つの問題点は、大腸菌やプラスミドDNAとは全く関係がありません。
環状プラスミドを使わなくていいので不要なゴニョゴニョ40プロモーターとか、カナマイシン耐性DNAとかは入る余地はないかもしれませんが、DNAとRNAが結合しやすいという問題が解決されていない以上、目的のmRNAだけを作るのが難しいままです。鋳型DNAが残ったままゲノムに取り込まれたら大変まずいことになります(;'∀')
結局、末次先生の技術はDNA混入問題の本質解決策になっていないんじゃないでしょうか?
というわけで、RNAをバシバシ大量合成できる技術ができないとmRNAワクチン自体の製造もままならないし、そもそも、他にも問題が山積みなのです。(´;ω;`)ブワッ
あと、「DNA混入問題」よりも「スパイクを中心とした、その他のワクチンの問題」の方が大事という意見ももらいました。えと、どっちも大事なんでどっちも追及したらいいと思います。ワタシは特にDNA問題はワクチン技術自体を止める本丸に考えていますのでこちらに力を入れています。なのでスパイク問題を追及してくれる他の皆様には感謝しますし応援しかないです。ここは対立ではなくそれぞれが一番問題だと思うことをそれぞれ全力で頑張って追及していきましょう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?