再開の2番出口
みなさん、お久しぶりです。夏、ものすごく満喫してます。嶺葉です🍀︎
今回は、5年ぶりに親友と会った話をちょっと、書こうかなぁと。
彼女と連絡が着いたのは高校1年の冬。現代国語の授業で誰でもいいから葉書を贈る、という課題が出されたことがきっかけでした。当時の私は特に渡したい人も思いつかず、提出日ぎりぎりまで悩んでいて。
親族に出すのはなにか違うし、両親に書くのもすこし恥ずかしい。東京にいる知り合いに書こうにもいかんせん、住所を知らなかった。もちろん、知る意味もないんですけどね。
提出期限が迫る中、ふっ、と脳裏を掠めたのが彼女だった。これだ、と思った。彼女しか居ないと感覚で感じた。
それにこの機会を逃したら次にこちらから、あるいは向こうから、コンタクトをとれる機会は一生訪れないと思ったから。
私はあまり絵が得意じゃないから。精一杯、新年の挨拶をアレンジしたものと彼女へ向けたメッセージを。葉書の最後にそっと、自分のメールアドレスと携帯番号を添えて完成させた。出せたのは提出締切前日の放課後だった。
葉書を出したこともすっかり忘れて、冬課題に追われていた冬休み。原案の書籍収録が決まった裏で「ある人」から受けていた傷、私の作家人生最大の「汚点」であるあの人からここでは言えないようないろいろを受けた。いつか話せるようになればいいですね。
話が逸れましたね、そんな忙しい冬を過ごしていた私に一通のメッセージが届きました。
それが彼女でした。
今思い返すと、驚きと嬉しさで混乱してたような気がします。いい意味で。返信の内容は覚えていないのにキーボードを打った指先の冷たさを鮮明に憶えている。すぐにお互いのLINEを教えあって、その日のうちに「夏に逢おうね」という約束をした。
正直、ここまで頑張れてきたのも。彼女との約束があったから、だと思う。
昨日、8/13
ついに会ってきました。たくさんたくさん、写真とか動画を撮りました。
この日のために、珍しく朝は早起きとかしてみちゃったりして。ちゃんと朝ごはん、食べて。
いつもよりヘアセットの時間を長めにとってみたり、ヘアオイルだけで整えてる髪に、いつもはしない(オイルだけで整うため)ブローをかけてみたり。
再開して、すぐには声をかけられず、改札を抜けたその先で思わず立ち止まってしまったあの時の景色も、もちろん鮮明に焼き付いてる。
自分が彼女の姿をみつけて息をのむ微かな音が鼓膜に遠く聴こえた。恐る恐る踏み出した1歩、なんて声をかければいいのか分からないから右手でそっと触れた左手の温度。
わたしに気づき、ふっ、とこっちをみつめる3秒にどれほどの想いが込められていたのか。もしかしたらなんの思いも込められていないのかも。
お互いひとことも話さずにエスカレーターへと踏み出した、左右の揃わない踏み切り足。私が左足で、彼女が右足。
ごちゃごちゃして絡んだ思考を柔く解いたのは親友だった。やっぱり彼女は変わっていなかった。わたしの右側で口火を切った、彼女が軽やかに話す声にぐちゃぐちゃに散らばっていた思考や言葉がすっと、まとまって軽くなっていくのを感じた。
いちばん最初に出逢った11年前のあの日から。そして最後に会った5年前より。当たり前に伸びた上背。ふわりと優しく色づいた目元に口元。
「嶺葉、メイクしてるね。ちゃんと気づいたよ笑」
近づいてもわかるかわからないか程度の薄いメイクに気づいてくれたそこに、当たり前だけど自分の中の、大好きを再認識した。
思い出の中のちいさな彼女より、すこし掠れる落ち着いた声で穏やかに話すその姿に私も自然と笑みが溢れた。
ふわふわ。ゆっくりとぎこちない雰囲気が溶けていく。どこでも聞いたことあるような音楽がかかるショッピングモールの中でお互いの「今」を話した。
高校はどこなのか。部活はなにをしているのか。
わたしは高校からテニスを始めたこと、彼女はバトミントンをしていること。
似てるね、なんて言う言葉がお互い、被って。ふたり眼をあわせてそっと、はにかんだ。
ふたり、小さな狭い箱の中で撮るプリクラはいつも以上に楽しくて。わたしと10cm近く違う身長差を感じさせないように、何も言わずにわざとしゃがんでくれたそれに際限のない愛を感じた。
ヴィレヴァンをみつけてはしゃぐその姿が大人っぽく魅せてる癖にとても可愛かったこと。
コスメをみる時間がとてもきらきらしていて楽しかったこと。売り場でいろいろなブランドを見ながら。私はこれ使ってる、このグロス可愛い、このチークの色タイプすぎる、この新しく発売されたアイライナーの色欲しいんだよね。なんて、会話をした。
文房具がすきなこと、本がすきなこと。
わさび、キムチ…などの辛いものが相変わらず食べられないこと。
牛乳も未だに好きになれないこと。
これはまだ小学生のときに彼女が引っ越してしまったときにやり取りしてた交換日記の内容。
もちろん、当時いっしょにいて分かっていたこともたくさんたくさんある。言葉にできないほど。
「しょうらいのゆめ」の欄に几帳面な字で書かれた「シンガーソングライター」の文字を私が思い出して、伝え、今はベースを演(や)っていることを知った。奇遇だね、私はアコギを弾いてるよ。
また、似ているところをみつけることができてやっぱりふたりではにかんだ。
そんな、いろいろな話が弾み、できてくる頃には
お互いが幼稚園の頃呼びあっていた呼び名に戻っていた。エスカレーターに踏み出す足も揃うし、思考パターンや感覚も戻ってきていた。そのことが嬉しかった。伝わるかな、分からないけれど、わたしと彼女の内側のリズムが、揃ってきた、みたいな。
きっと、わたしたちだけにしか、分からない間隔、感覚。たぶん、きっと、そう。そんな感じ。
喫茶店に入り、お互いの進路についてすこし、話した。彼女は、東京の大学への進学を決めているらしい。
距離は離れてしまうけど、またいつでもこうして会いたいね。ぽつりと、どちらかがこぼした。
お揃いのもの、なにか持ちたいよね。思っていることは2人とも同じだった。
雑貨屋さんで手頃なペンを色違いで買うことに。
優柔不断なところ、全然変わってない。逆にちょっと安心した、笑。
決め終えた私と、ずっと迷ってる彼女。最後には、「どっちがいいか嶺葉に決めてほしい」とこちらに任せてくる次第。ふたりとも笑いながらペンを買った。
店内を歩き回りながら、私が小説を書いている。小説家の活動をしていることを、ペンネームは明かさずに、カミングアウトした。彼女に隠し事はしたくないし、小説を書いている「わたし」としての存在も知ってほしかったから。
原案収録のことも、話した。
ちょうど書店に向かう途中だったから。
もしかしたら(名前が載ってる)作品あるかもね、なんて言ったら間髪入れずに「見たい!」と言ってくれた。本当に彼女に打ち明けてよかった、そう心の底から思った。
そう、長くは続かない楽しい時間。
用事があるとのことで早めの解散となった、15時。
彼女が電車に乗るのを見届けてから私も下りの電車に乗った。ばいばいを告げた3秒後に振動した、スマホが知らせるメッセージの通知が嬉しかった。
これから、逢える回数はもっと減るのかもしれない。まだ、無邪気に走り回ってた頃の天真爛漫な貴女の本当の笑顔、は見れてないのかもしれない。
だから、何回でも逢おう、距離が近くても遠くても。そんなような話を電車乗るドアが閉まる寸前までしていたような、いや、していた。
「またね」
そう、耳元で言われ、ふわりと、11年前と変わらない残り香が私の鼻を掠めていった。電車の中から小さく頷いて微笑んだ貴女は私を振り返らなかった。
振り返られなかったことに対して不満を言う訳ではない。
これが彼女なりのやりかた、というのをもう何年も前から知っているから私も戸惑うことはなかった。
とてもいい日になりました。5年ぶりの空白を埋めることができました。とてもいい日でした、また会いたいな。
(p.s. 写真、貼っておきます)