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世界の兄貴奮闘記 物怖じしないK野さんの結末 後編
K野さんが正式に俺の上司になった。それから数か月はパワハラ課長からの長い説教を受けなかった。
パワハラ課長が激怒すると、工場中のさらし者になり、一緒に働いている社員からも冷ややかな態度で接してくる。
人間の心理として、パワハラ課長についていたほうが自分の身の安全を確保されるので、他の社員はパワハラ課長に怒られた社員を一緒に攻撃していた。
特に女性社員がかなり、この冷ややかな対応を行っていた。俺から見たら女性社員はパワハラ課長の喜び組に見えとった。
この当時は、若手男性社員が標的にされていて、若手潰しと思われるパワハラ三昧がまかり通っていた。
K野さんは俺ら男性若手社員を守ってくれていた。当時、今の俺と同じくらいの年齢(40代前半)で専門知識があり、論破できるくらいの知識を持っていた。
こうして俺はK野さんのもとで、安心して仕事ができると信じていた。しかし、次第に状況に変化が出てきた。
K野さんでも設備の状態をつかめない部分が出てきてしまい、パワハラ課長の説教の餌食になっていった。
最初はパワハラ課長とバトルしとったが、次第に不利な状態に立たされることになり、当然会社では上になればなるほど権力を持ち強くなる。
このパワハラ課長はK野さんを標的にしていき、物怖じしなかったK野さんも精神を病んでいった。
K野さんはだんだん休みがちになり、とうとう無断欠勤するようになった。
パワハラ課長の説教時の怒鳴り声は凄まじいものがあり、普通にうつ病に追いやられるくらいの凄さやった。
K野さんは会社を無断欠勤し、近くのショッピングセンターをうろつくなど、おかしな行動を取るようになっていた。
K野さんの親から会社に電話があり、息子を探している、息子がいない。会社で何かあったのか?など連絡があったようやった。
最終的にK野さんは行方不明となり、親が会社に来て会社側と話し合いになる事態まで発展した。
そして、とうとうK野さんは会社を退職した。
俺のおった会社はこのようなことが頻繁に発生しており、真実が隠されたまま、次なる餌食が出る仕組みが出来上がっとった。
今考えると、酷い会社におったなと思う。もう今は、この会社を辞めて別の会社に変わっている。
数年前、スーパーで買い物をしてたら、偶然、K野さんを見かけた。髪の毛が真っ白になっとって、かなり、老いていた。
それもそのはず、あの事件から17~18年も経ってるからなぁ。
K野さんも俺に気づいていたが、一瞬、驚いた表情をして通り過ぎて行った。
俺もK野さんに話かけんかった。アルツハイマーになってる感じではなかったから、それだけでも安心した。
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