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カムカム・エヴリバディ論評(第12週)

NHK朝の連ドラ「カムカム・エヴリバディ」の第12週。視聴者の感情が大きくゆさぶられる1週間だったのではないでしょうか? ジョー優勝からの上京、そして帰郷。

私もご多分にもれず、テレビにかじりついて見ていました。どんな伏線をも見逃してはならぬ。本日1月21日(金)の回を独自の視点で批評していきたいと思います(ネタバレ注意)。

トランペットがうまく吹けないジョー

ジョーの生い立ち

ジョーは戦争孤児。優しい大人たちに助けられ、良い場所・仲間にも巡り会ってきました。そんな優しい大人や仲間たちから離れ、周囲の期待に応えながらレコーディングをするプレッシャーは、ジョーとルイの予想をはるかに上回るものだったのでしょう。住まいや練習場所の確保だけではツメが甘かったと思わざるを得ません。

一緒に住まないにしても、ジョーが手紙を書けないにしても、あらかじめ連絡手段を約束しておくことは必要だったように思います。

上京の時にサッチモちゃんがそばに居られる環境整備ができれば良かったのに。

私の見解

精神衛生の観点から

※トランペットがうまく吹けない原因は脳神経に問題があるのか運動障害なのかわかりませんが、ここでは精神衛生の観点から論じます。

産業保健の現場では、従業員の人生の転機(就職、転勤、単身赴任、結婚、出産、引っ越し等々)におけるメンタル不調の予防も大切なことです。

人生の転機は、おめでたいように見える一方で、本人は「初めてのことで大丈夫かな」「頑張らなくては」と必要以上の緊張が続くことがあります。

初めは緊張や気合いでどうにかなっていても、緊張の糸が切れたり、眠れなかったりしてカラダを壊してしまうことがあります。人生の転機を迎えた時は、サポート体制を作り、普段よりも自重する心構えで。本人が自分のストレスにきちんと目を向けることで防げるケースもあるのです。

今のジョーは自動思考に陥ってしまう傾向にある様子。これからの人生ではなるべく不安を蓄積しない思考を身につけることがトランペットと同じぐらい大切なことではないでしょうか。心理学用語で言うとレジリエンス、逆境でもポジティブに柔軟な考え方で乗り切る力です。

奈々との病院巡り

笹川社長からの「ジョーはいつになったら治るのか」という問いに対して「お医者様にもわからないのよ」と奈々。ジョーの回復の見通しを知りたい気持ちは理解できます。自分に経験のないことは理解できないのもわかる。ただ、人のカラダや心の回復に絶対はありません

どうやらジョーと奈々でドクターショッピングを繰り返していたようです。時代背景的に診断そのものが未発達で、はっきりした治療方針が得られなかったのでしょう。ジョー自身も何が良くないのか、どうすれば良いのかわからず。受診によって、わからないことがわかったという状況。

「あの人ははっきり言ってくれないからダメ」と医療職へのクレームを見聞きすることがあります。しかしながら、現在の判断材料では見通しが立てられない、専門的な知見をもっても原因がわからないと判断してくれた点を評価したほうが良いように思います。

同行受診

やがてジョーと奈々が二人で出かける様子は、二人が付き合っているのではないかというあらぬ噂までも立ててしまいます。ここで大きく評価できる点は、奈々がイニシアチブを持って受診、かつ、診察室まで同行しているところ医師にとっては、本人をよく知る者からの情報は大変貴重で、診療を助けるものとなります。

トランペットが吹けないこと以外、不自由なく生活している状態だと「自分で病院に行けるし、一人で受診すれば良いのでは」とも思われがちです。しかし、不調な本人にとって、知らない場所に行って、知らない人に自分のことを説明することは非常に骨が折れること。ですので、奈々のようにジョーを尊重し、受診をサポートしてくれる人は貴重な存在でした。

もし本人単独で受診できない場合、親兄弟や上司が付き添った上で受診することがあります。「とにかく病院に行ってきなよ」という声掛けよりも「私もどうすればいいか知りたいから一緒に行こう」という姿勢が本人に響くことも。困った場合は、地域の相談窓口(専門家)に受診方法を相談してみると良いでしょう。

上京することが決まった18日(火)、奈々がジョーに猛アタックするのではないかと疑ってしまい、ほんと申し訳なかったです。あなた、本当は良い人だったのね。

笹川社長からの心ない声掛け

「本当に病気なのかねえ」こんな言葉が笹川社長からジョーにかけられます。

言葉は暴力になることがある

「やりたくない仕事から逃げているだけでは」「あいつは逃げ癖があるからな」「働かなくても給料入るから良いよね」「休んでるぐらいなら退職してほしい」

こういった言葉は残念ながら現代でも聞かれるものです。聞いているこちらも相手の品性を疑ってしまいますね。

メンタル不調で休んでしまう方がいる職場は、そもそも文化・風潮、上司に問題があることも。休んだ後に職場を異動した途端、心穏やかに働き続けられたとのケースは珍しくありません。損得勘定で動く人間が多い環境はとくに危ういように感じますが、皆さんの周りはいかがでしょうか。

カムカムの場合、親代わりの木暮さん、トミー、ベリー、竹村夫婦といったキーパーソンを支えに進行していきそうな予感がします。笹川社長のような優位な立場にある者による心ない発言は全力で防いでいきたいですね。

ジョーの回復には、周りの理解とまともな大人が重要である。

私の見解

患者さんはすべてを否定的に見がち

トランペットしかないジョー

「認知の歪み」がとても上手く表現されていました。

ジョーは「僕とるいをつないでいたのはトランペットやのに(トランペットができなければルイを幸せにできない)」と決めつけているようです。視聴者から言わせてもらえば「いやいや、違うやろ」と。

先ほども述べた自動思考のうちの白黒思考。0か100かでしか物事を見られない視野狭窄の状態です。

振り返ると、ジョーがいかにトランペット演奏でアイデンティティを保ってきたのかわかる場面がありました。トランペットで優勝したら結婚しようと言っていた場面ですね。雉真勇と同じく、野球で勝ったら告白するみたいなフラグ立てがち人生はときに脆弱ですね。

自分のアイデンティティを保つ方法はいくつか持っておくと精神の安定を保つのに便利です。

思い詰めたジョー

朝早くに突如現れた令嬢、奈々。それを見たルイに、心にもない嘘をつくジョー。

自信喪失したジョーは、ルイに顔向けできないと思い詰めてしまいました。メンタルの具合が悪い時は人生に関わる重大な決断をしてはいけないという大原則があります。うつのときは考え方がネガティブになっているので、本来の考え方で判断できないのです。

重大な決断をしないように

奈々がお金と時間のある品格のあるお嬢様で良かった。ジョーの嘘は奈々によってすぐに修正されることでしょう、Night and Day(木暮さんのお店)での恋のアシストに期待しましょう。城田優の地獄のナレーションで心が苦しくなっている方は次回予告を見て安心されると良いのではないでしょうか。

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fm23🎅
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