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「ここは輝く巣崩しの土地」

私は日課として朝、会社で掃除を行っている。
その際、ほうきで倉庫の扉の表面をなでるのだが、私はその行為に意味を感じない。

蜘蛛の巣が張らないようにだと勝手に思っているが、毎日掃いていてはほぼ何も付いていない。
虚無を掃いている。

でも、掃かないとサボっているように思われるかもしれない。

こういう時は扉が120%で美しくなった様子を思い浮かべる。ほうきによって何万回も撫でられ続け、ピカピカとまるで鏡のように朝日を反射する扉……。
そうするとまだ完璧じゃないと思えてきてモチベーションが保てる。

一方、蜘蛛側はどう思っているのだろう。
最近聞いたゆる民俗学ラジオでパーソナリティーの黒川さんが言っていた。
ある民俗学者が雪深い地域にフィールドワークに行った時のこと、その地域の人々は雪崩が起きやすい場所を熟知していて、そこには建物を建てたりしないし、立ち入るなどしないらしい。


――あそこに巣を作ってはならんぞ

年老いたクモは言った。

「なぜですか?」と若いクモ。

「あそこは必ず巣崩しの化け物が出るんじゃ。」


クモの世界ではうちの会社の扉はそうやって語り継がれているのかもしれない。


その点、私の住むアパートのドアはどうだろう。
昼間は何の変哲もないドアだが、毎晩明らかに同じ個体のクモがいる。

完全にナメられている。




追記:本来載せる予定だった記事が間に合わなかったため、急遽内容を変更してお送りしています。

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