仕事の怪我でどん底だった私がVRChatを始めて、大学院進学する話
こんにちは。バーチャル探求学者のLuminです。
Twitterでもちょこちょこ流していましたが、このたびLuminは滋賀大学大学院データサイエンス研究科に進学することが決定しました。
私は7月まで、滋賀県のアクアソリューションベンチャーにて、微生物学・環境学を扱う研究員・エンジニアとして仕事をしつつ、教育コンサルティング事業者の役員として勤務していました。しかし、仕事中の事故により休職し、前者は退職、後者はリハビリもかねてボランタリーに活動しています。
そのような中、次のキャリアとして、今までと全く違う分野の大学院に進むことを決めました。この決断には、VRChatでの経験が強く影響しました。
本noteでは、その経緯を振り返って行こうと思います。
【2021年11月-2022年2月】検討:学び直しの選択を与えてくれたVRChat
私がVRを始めた理由は、仕事上の事故により左目を負傷し、家から出られなくなったことに起因します。
「目を負傷しているのにVRなんてやっていいのかよ!」といわれるかもしれませんが、実はVRを始めてから、負傷していない右目の視力が上がりました。0.7→1.0です。調整力が上がったのかもしれません。しらんけど。
初めのうちは、初心者案内でも無視をされたり、日本人による嫌がらせをされたり。そして個人的に人とイチャイチャしたりすることが苦手なこともあり、日本のVRChatが持つ文化になじめませんでした。
そのため、VRChatの日本人コミュニティに良い印象を持たず、海外コミュニティ(インドネシア・中国)でよく遊んでいました。
VRC理系集会 / バーチャル学会
そのような中、自分自身初めて日本人コミュニティで面白いと感じたイベントが「VRC理系集会」でした。
様々な専門分野の方が、利害関係・バックグラウンド関係無く、自身の研究成果や昨今話題の論文などについて、議論を行う光景は、私にとって非常に心地よい空間でした。
一方、参加者の話題に対して、質問したい点や着眼点を見定められない自分がいることにも気がつきました。皆さんが楽しく話されていることが分からない、話に混じることすらできないことが非常に悔しく感じた時でもあります。
この経験が自分自身、まだまだ分析力や課題抽出力が弱いことを思い知らされる機会になりました。この体験がきっかけで、学術的な学び直しに興味を持ちました。
同様にたまたま理系集会で翌日開催の告知をされていた、VR上のアカデミックな活動である「バーチャル学会2021」にも参加しました。
正直、このイベントは感動しました。これまでVRでの研究発表と聞くと「ただ単にVR上で誰かが講演して、それをヘッドセットをつけて聞くだけ」というものを想像していました。
しかし本イベントでは、ポスターセッション形式により、インタラクティブな発表・質問が行いやすい、すぐに成果が目の前のワールドやモデルから見ることができる等、新鮮な感覚を得ました。
VRC株式投資座談会
そして、バーチャル学会にて様々なポスターセッションを見る中、TAK1123様が行われている株式投資に関する分析に興味を持ち、「VRC株式投資座談会」に参加するようになりました。
株式投資を大学時代から行っていた上、就職後もPineScriptを使ったテクニカル指標の開発を行っていたこともあり、非常に興味深く見せていただいたことが懐かしいです。
そして座談会に入り浸る中で、マーケットの動きとニュースや各種指数との連動、トレンド認知に関する投資家それぞれの手法、参考となるモデルトレーダの取引履歴を見るツール等、投資を情報から図る手法や考え方の片鱗を知ることができました。
このときはあくまで、「そういう手法もあるのか~」という気づきだけでしたが、皆さんの話を聞く中で、研究対象として取り組んでみたいと感じるようになりました。
また、私が行っている教育分野においても、金融教育を行ううえでどのようなことを伝え方が良いか、またどのようなディスカッション手法が良いかも知ることができました。
結果として、実際に大学院で取り組む金融観点からビジネス展開を予測するデータサイエンスと投資情報学に出会うことができました。
私立VRC学園
上記内で触れた3つのイベントはそれぞれ専門性が有り、アカデミックや投資など、プラグマティックな代物がそろっていましたが、こちらはなんとなくで応募しました。楽しそうだったから。
なんとなくで応募したのもつかの間、実際に生徒として授業を受けると共に、次期では講師として登壇する中で、私立VRC学園はSTEAM教育の文脈で、とても良い参考事例になることを知れました。
生徒たちが教員から、VR空間はの楽しみ方からマインドセット、哲学、コミュニケーション、技術の話など、様々な分野の情報を得た上で、メタバース空間に対する意識や技術を体系的に醸成することができる、非常に高度な学習プラットフォームであることに気がつきました。
また、そこで授業を受けた学生たちが教師となり、それぞれの専門性を活かした反転学習にまで持ち込み、集合知・コミュニティの構築に繋がっていることは非常に面白い事例です。
私が関わる法人の役員の言葉を引用しますが、クラウドの知恵の理解として、以下の項目が挙げられています。
上記した状態が私立VRC学園には生まれています。そして、そこから派生した様々な活動が実際に動き出している事実もあります。
ただただ、楽しそうだからと申し込んだ活動でしたが、VRにおける教育の可能性を自分自身で実感できるすごく良い機会をいただくことができました。
ここでの経験、そして前述していたバーチャル学会での経験が、自分自身の次のキャリアでのサブテーマとなる、STEAM教育におけるXRを手段とした教育・学術的な利用可能性の探索に繋がりました。
【2022年3月-6月】決断:選択を深めてくれたVRChat
実は3月に控えた、眼球へのレンズ縫合手術二回目までは、まだまだ大学院に行くことは迷っていました。(学園で高らかに宣言したにもかかわらず)
この手術で前の日常と変わらない生活に戻ることができるなら、また微生物の研究や、培養装置の設計・開発などの仕事に戻ってもいいかもなと。
しかし結果は、若干モノの輪郭が分かるようになった程度。その上、今後は感染症や合併症を考慮しないといけない人生になりました。
つまり、高校生から8年以上続けていた微生物工学の世界から離れざるを得ない現実を突きつけられました。
このときは本当にショックでした。
話は飛びますが、就業していた会社の社長には度々「君は何者になりたいのか」ということを、食事したりするたびに聞かれました。
そして、そのたび「君は自分の道を周りの環境から固める力がある。そして導いてくれる人を惹きつける何かを持っている。だからこそ、チャンスと思ったら逃すな。」と言われつづけてきました。
その言葉があったからこそ、せっかくVRで繋がった人たちから得たことや繋がりを活かし、次に進まなくてはいけないと決心することができました。
幸い、手術までに新たな道として、大学院に戻るという選択肢はでていたため、方針自体はすぐに決めることができました。一方悩んだことは、何を研究するかというポイントでした。B4からM1への進学ですと、ある程度自分の学習から派生した研究を選べば良いですが、自分の場合そうもいかず。
体の事情でウェットでの実験はできないため、ドライでの実験が必須。更に、体の関係で通える範囲も限られていました。
このような中、ぼんやりと「データサイエンスって面白そうだなー」と思い、たまたま受験資格も持っていたため、滋賀大デーサを筆頭に複数校を受験校として、調べていましたが、新しい学問分野故、この選択が正しいのか全く分からなくなりました。
データサイエンティスト集会 in VRC
そこで伺ったのが、データサイエンティスト集会 in VRC。
たまたまVRC学園6期の同期である、ちとせちゃん様が主催されるとのことで、初学者どころか無学者でも、気軽に参加できました。(内容について行けないため、話せはしない。)
実際に活躍するDS人材の皆様の話を、後ろから聞く中で、データサイエンス人材がどういうところで求められているか、そもそも活躍するためにはどういう技術が必要か等の現場感から得られる情報を聞くことができる、非常に良い学習の場所でした。
また、初回参加した際に、そのそも私にとってその大学院は適切かについて、悩んでいた事を話したところ、いろいろな情報をお教えくださる方がいらっしゃったり、前学習するべき教材について教えてくださる方がいらっしゃったり、そもそも何がしたいのかと深掘りしてくださる方がいらっしゃったりと、ありがたい限りでした。
このような活動に参加する中で、自分が進みたい分野について、目星がつき、2つの研究室に絞り込み、受験する先を決定しました。
VRC理系集会②
上記の経験、そして現実との折り合いをつける中、いよいよ受験に臨むこととなりました。
志願書を出し終わり、あとは受験まで学習を続けるのみです。あっという間に日時は過ぎ去り、初めの受験である、6月初頭の滋賀大の受験日が近づいてきました。
そこでまさかの受験前日に、VRC理系集会のゲストとしてバーチャルデータサイエンティストのアイシア=ソリッド様が来られる。
VRにおけるデータサイエンティスト一番有名と言っても過言ではない、アイシア様。自分自身、滋賀大学の受験だけで無く、併願先の京都大学の受験や、自己学習含め、非常に良くyoutubeを見させていただいておりました。
当日はメインインスタンスに伺うことはできませんでしたが、サブインスタンスで講義を伺うことができ、非常にうれしい限りでした。
受験直前で緊張していましたが、半年間独学で学び続けてきたことが、この講演で論理だけでなく、感覚としてスッと腑に落ちた瞬間でもありました。
この体験をベースに試験に臨んだ結果、合格できました。
VRC理系集会にて大学院進学を意識することに始まり、受験前の最後のツメを意識することに終わる。なんとも不思議な縁だと感じました。
これから、来年度からの研究に向けて、非常に忙しく学習を進めて行く必要がありますが、自分の目標ができ、怪我でどん底だった私の人生でしたが、生きる希望が持てるようになりました。
このチャンスを逃さないように、全力で取り組んで行きたいと思います。
ちなみにですが、併願で受験した京都大学は無事爆死。CS分野の中のDS関連研究室を狙い撃ちした形だったのもあり、倍率はかなり高かったです。これを見ても、現在はデータサイエンスがどの大学でも非常に人気があることが分かりました。
せっかく学術関係に戻るからVRでやりたいこと
このような形でVRChatに触れ合い、大学院進学まで決まって、VRChat・VR・メタバース様々な感じですが、母校の情報系学部教員のつぶやきで以下のようなものがございました。
大学の情報関係のオンライン学術会議ですら、このありさま。ただ、もう半年以上過ぎていますので、なにか変わっているかもしれませんが……
VRを学術的・教育的に活用する上で、我々若い世代が感じている課題感を乗り越えるためには、私たち自身で考えて、少しずつ実践していく必要があると思っております。せっかくVR・メタバースの世界で、学術について再考する機会をもらったのですから、逆に自分がそのような場所を作っていけるような取組もしていきたいものです。
まずは自分の手の届く範囲の滋賀県をはじめ、母校の立命館大学や、進学先の滋賀大学から、いろいろとやれることをやっていきたいですね。もちろんVRC上での取組にも参画していきたいです。
やりたいことがたくさん出過ぎて、大変ですがハッピーですね。楽しいです。
お礼
これは私個人の一方的なお礼ですが、VRC理系集会 主催者のKuroly様・hinoride様、VRC株式投資座談会 主催者のTAK1123様、DS集会 in VRC 主催者のちとせちゃん様、私立VRC学園 関係者の皆様、バーチャル学会 関係者の皆様から受けた影響は計り知れません。
皆様が主催してくださったイベント・企画があったからこそ、私は暗礁に乗り上げてしまった人生から、新たな一歩を進めることができたと考えています。
さらに、私の個人的な挑戦を応援いただいたVRChatのフレンドの皆様のおかげで、新たな人生に希望を持って挑むことができました。
そしてなにより、怪我にあったときから、現実で私を応援してくれていた家族・親族、友人、先輩、後輩、会社の皆様のおかげです。(本当は現実側でも、名前を出してお礼したい人がたくさんいますが、今回の文脈はVR関係者向けのため控えます。)
略儀ながら、書面にてお礼申し上げます。
Lumin / Think
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?