心太軟。
【1998年2月10日(晴)中国:麗江】
中国の良いところは何処でも湯がもらえるところである。
茶葉とコップを持っていれば何処でも熱いお茶が飲める有り難さと、ホットシャワーが湯水のように使える有り難さに、漢族の文句ばかり言っている旅行者は気づくべきである。カップラーメンだっていつでもいくらでも食べられる。
そんな中国お湯事情であるが話はいつものようにそれて、私が当時ハマっていた生姜茶の話になる。
私の日課は早朝に四方街でお粥を食べ、帰りに近くの市場で生姜とトマトを買う事であった。市場から宿の中庭に戻る前にレセプションでポットいっぱいのお湯をもらって、買っておいた氷砂糖と茶葉とタップリの生姜で激辛の「ジンジャーティー」をつくる。
当時風邪も流行っていたが、麗江は標高2500m以上あり乾燥しているところなので 南方から来た旅行者はみんな喉をやられていた。 私はというと特製「生姜茶」のおかげかピンピンしていて、気がついたら私は宿に泊まっている風邪気味の旅人達に愛情たっぷりの「ジンジャーティー」を振舞う親切な保健委員長として表彰されることになる。(一部嘘)
よく考えたら、私は旅行保険なるものには一切加入せず海外にでてしまったものだから、人一倍健康には気を使わなくてはならないのだ。
病気=帰国でもある。
病気といえば、麗江の街からチャリで1時間くらい郊外に白沙村ってーのがあり、そこに世界でも超有名(らしい)なドクターフーなる漢方薬師がいるという。
一説にはガンでも白血病でも草と石を砕いて練ったもので完治させるらしい。
しかも薬代はタダでも良いと聞く。
あやしい、、、だが旅行界の健康を守るため保健委員長としては行かねばならぬ。
行かねばならぬが、別に頭と顔と足が短い所以外悪いところは見当たらないので私は行かなかった。後々行った人達の話を聞いたりしたが、行かなかった事を後悔させるような話はひとつもなかった。ちょうど頭を緑に染めたさくらももこ先生もいたそうだが、ご愁傷様ですと言わざるをえない。
誰か白沙村に行って「奇跡を見た!」等のドクターフーにまつわる話をお持ちの方、ぜひお聞かせ願いたい。
私を後悔させて欲しい。
【1998年2月11日(晴)中国:麗江】
旅の情報ノートというものが存在する。
主に旅の超個人的情報や、「何々ちゃん元気~?」的なものまで国籍を問わず書き記す雑記帳のようなものだ。
現在では一番近いのはインターネットの匿名掲示板みたいなものではないだろうか。SNSどころかblogですら無かった時代の話だ。
だいたい情報ノートは、安宿のレセプションや、ツーリスト向けのカフェの雑誌コーナーに手垢にまみれて置かれている事が多い。
今までの旅の中で情報ノートを見かける事はあっても、隣に「ゴルゴ13」や「毎日新聞」や「G-ダイアリー」なんかが並べてあれば必然的に読む順番は決まってくるもので、私はそんな手垢まみれのモノに関わる事は殆ど無かった。
先に言っちゃうけどここから私は「情報ノート」というものにドップリと旅中、いや旅が終わっても拘束され続ける事になる。
ちなみに この雲南省麗江で第1回目(情報なんか書いてないけど)を記した後、世界を周りにまわって最終回は第143回を同じ雲南の景洪で記す事になる。当然もうノート自体が無くなってしまっているのが殆どだが、厄介な事に手を出し始めたこの頃に誰もエスカレートする私を止めてくれなかった事を少し恨む。
「地球の荒らし方」
この時はまだこの名称では無かったが、既に「ダメ人間友の会」No3-ケンカ番長はこの時点で名乗っていた。
後日バンコクでこの名称のハンコを自作する事にもなるが、その時以来利用している朱肉は麗江で使われている古代文字「トンパ」で名前のハンコを彫って貰った時に麗江のデパートで買ったときから愛用している伝説の一品である。
私の書く情報ノートはとても情報と呼べる代物ではなく(初期は特に)、長い前置きと、気に入らない旅のヨシナシ事についてと、色付きの情報地図と4コマ漫画と、旅の仲間への挨拶とスタイルはまぁ一環していて、なるべく文字は大きく綺麗に読みやすさと健康と美味しさを合言葉にしているが、すこぶる私本人に会った事の無い長期旅行者には評判が悪い。
私に会ってしまえば「口の達者な小悪魔的子羊」だとみんな理解してくれるが、知らない人からの陰口は凄い。
会った事も無い奴に「嘘つき」とか「ストーカー」とか自分の判断無しに断言している痛い系キチィちゃん(隠語)は、痛くも痒くも無いしまんざら嘘でも無いからにっこり笑って抱きしめてあげるけど、「エバってんじゃねぇよ」とか「偉そうにすんな」「何様だよ」とか影で言っているのについては、戦後●教組の「人類皆平等教育」(偽り)の勝利といわざるを得ないだろう。
いや、私はただの旅行者だって。
いずれ天下取るけどね。才能あるし。(嘘)
私は負けず嫌いではあるがそんなに自尊心は強くないので、自分から初めましての人に「ダメ人間友の会」とか名乗ったりするような格好悪くて恥ずかしい事はしたりしない。
そのせいで中には私と知らずベラベラと私の悪口を目の前で並べ立ててた旅人にも良く会ったりしたものだ。後々になって私がその本人だと気がついた頃を見計らって、その子を夕食に何度も誘ってあげる事はお約束である。
そうそう、明日から麗江の更に北にある「虎跳峡」という所にトレッキングに行く予定だ。
大河長江の源流にあたり、ヒマラヤ山脈から大陸になだれ落ちる最初のポイントだ。
ガイドブックは当時「虎跳峡」についての情報はなく、先々月も盗賊が出て白人が殺されたとか。
ここ最近はツーリストカフェに入りびたり、置いてある情報ノートに書き記してある「虎跳峡」のトレッキング情報を自分のノートに書き記していた。中には字が汚くて読めない情報もたくさんあったけど(笑)。
私もトレッキングから戻ってきたら後から来る人達のために地図と絵付きでトレッキングのコースタイム表をカフェの情報ノートに書き記そう。何にも今は社会の役に立ってないけど、私の経験した事を記す事で少しくらい誰かのためになれれば幸いと切に思う。
、、、てな事を考えていたかといえば、私の心にはそのような殊勝な気持ちは微塵もあろう筈も無く。ただ、いい旅の暇つぶしの日課を見つけたな(ニヤリ)くらいの事である。