#084 先客
夏は4時を過ぎると白々と明るくなる。早朝、ひと仕事を済ませ、いつもなら5時頃に散歩に出掛けるが、今日はちょっと早めに出てみるかと思い立ち、4時半に家を出た。
ひんやりとした空気が頬に触れる。車もほとんど走っていない。静寂のなかを数分歩くと、いつもの川沿いの散歩コースに着く。せせらぎの音を聞きながら、左に水田が拡がる小径を歩く。今日は少し早い時間だから、誰も歩いていないなと思いながら足を進めていたら、先客がいた。
鴨のつがい。不器用に体重移動しながら、ヨタヨタと歩いている。鴨は飛び方も下手だし、鳴き声もフグワァー、フグワァーと煩いだけだし、歩き方も不器用だ。ただし、水面を滑るように移動する様はとても見事だ。
実はこのつがい、私は何度か見掛ているが、散歩道を共に歩くのは初めてのことだった。一緒に歩きながらシャッターを押したので、写真がブレてしまった。
子ども達はどこにいるのだろうと思ったら、いたいた、水田の中だ。首を水中に突っ込んで無我夢中で食べ物を漁っている。その無我夢中さも、どこか不器用で思わず笑ってしまった。まるで私自身を見ているよう。不器用な生き方では、私は誰にも負けない。
明日の朝も、鴨の親子に会えることを期待して、ちょっと早めに散歩に出掛けようと思う。