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指す将順位戦9th A級1組第9局 vsうりゅんさん
こんにちは。フェローチェです。
先日、9/25にうりゅんさんと指す順9回戦を戦いました。
ここでは、その対局について振り返っていきたいと思います。
なお、指す将順位戦もいよいよ終盤戦ということで、本局から最終局までの3回の自戦記では、冒頭で現在のA級1組のリーグ状況について触れ、本局の持つ意味も確認した上で対局内容の振り返りに入っていくという流れで進めてみたいと思います。
本局を前にしたリーグ状況
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対局前の順位表がこちら。
私フェローチェはここまで7勝1敗。唯一の1敗で、単独首位に立っています。
とはいえ、2敗勢が3人ついてきており、また私は新規参加で順位が一番下なので、まったく余裕のある状況ではありません。本局に勝って、このまま1敗を守りたいところ。
本局で対戦するうりゅんさんはここまで4勝5敗。昇級・降級の可能性ともわずかに残っている状況です。
ひとまず本局を勝って、残留を確定させたいところ。
戦型選択
うりゅんさんは振り飛車も居飛車も両方指せるタイプの方。私は対抗系党なので、このタイプの方が一番困ります。
戦型ですが、現状、自分が先手中飛車に自信を持てているので、指す順で一度負けるまでは、先手では中飛車を採用するということを決めていました。
また、後手になった場合は、相手の居飛車・振り飛車の選択を伺って、対抗系になるように後出しで作戦を決めようと考えていました。
と、対策を考えたような書き方をしていますが、これはいつも通りの序盤思想。特別な対策はせず、普段通り指すというつもりで臨みました。
自分は指せる序盤のレパートリーが少なく、対策を考えていって外れると、リカバリーが効かずに酷い目に遭う可能性が高いので、最近は対策はほどほどにしよう、という考え方になってきています。
自分好みの序盤を求めて
第9期指す将順位戦A級1組9回戦
▲フェローチェ △うりゅんさん
▲5六歩 △3四歩 ▲5八飛 △3二飛
▲7六歩 △4二銀 ▲5五歩 △4四歩
▲7七角 △4三銀 ▲3八銀 △1四歩
▲4六歩 △7二銀 ▲4七銀 △6四歩
▲7八銀 (途中1図) △6二玉 ▲6八玉 △9四歩
▲9六歩 △7四歩 ▲7九玉 △6三銀
▲8六歩 △7三桂 ▲8七銀 △7二金
▲7八金 △5二金 (第1図)
こちらの先手番で対局開始。予定通り初手▲5六歩から中飛車に。
対するうりゅんさんは4手目で△3二飛と三間飛車に。対抗系にならなかった上に、個人的に嫌な三間飛車に振られてしまいました。
とはいえ、先手中飛車に対して三間飛車に振られるのはよくあるので、普段からそれなりに対応を考えてはいる形です。
この戦型になると、こちらには中飛車左穴熊に組むという選択肢があります。しかし、個人的に中飛車左穴熊を指すのは苦手にしており、指したくない気持ちがあります。具体的には、組み上がる前に仕掛けられることへの対応が確立できていないこと。そして、無事組み上がったとしても、私の穴熊感覚が乏しく、うまく指しこなせないことがあります。
他の指し方を試みたいということで、本局は▲7八銀と上がりました。
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以下、駒組みが進んで第1図。
このように組むことで、まず早い仕掛けの可能性を消し、安全に銀冠に構えます。また、自分の得意な対抗形に近い形の将棋にすることができました。
もちろん、棋理的に言えばあまり嬉しい組み上がりではないのでしょう。ですが、私はそれよりも、自分が指しやすい序盤を求めているので、この組み上がりには満足している、というところです。
こちらとしては、この辺りで▲5六銀と出たいところですが、今出ると△3五歩と突かれて歩交換を狙われるのが気になります。
対するうりゅんさんの駒組みですが、ここまで右辺の攻撃態勢を作るところに手数を割いていないことから、おそらくここから△3一飛~△8一飛とする構想だと推測できます。ですので、その順を待ってから▲5六銀と上がる手順で指すことにしました。
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仕掛けたのか、仕掛けさせられたのか
第1図以下の指し手
▲5九金 △3一飛 ▲6八金右 △8四歩
▲1六歩 △8一飛 ▲5六銀 △8五歩
▲同 歩 △同 飛 ▲8六歩 △8一飛
▲3六歩 △3一飛 ▲4五歩 (第2図)
こちらは右金を囲いにくっつけて固め、▲1六歩という手待ちも挟むことにより、△8一飛と回らせてから▲5六銀と出る順に持っていきました。
ただし、手堅く組み上げたとはいえ、現状こちらから動いていくことが難しく、何もできなければ千日手になってしまいます。こちらが先手ですので、千日手で良しとする訳にはいきません。
ということで、桂の活用を見て▲3六歩と突きますが、うりゅんさんは△3一飛として△3五歩を狙ってきます。
そこで▲3八飛と受ける手はありますが、そう指してしまうと飛車が3筋で釘付けになってしまい、余計にこちらから動きづらい局面になってしまいます。
そもそも、動きを見せるために▲3六歩と突いたわけですから、▲3八飛と指すのはその方針に反しています。
私は▲3六歩と突く前に少考を挟んでいるのですが、この考慮時間中に、△3一飛には▲4五歩と仕掛けられるのではないかと考えており、本譜もその順を決行しました。
正直、対局中はうまく仕掛けたつもりでいたのですが、うりゅんさん側からしても、相手に動かせて手に乗って反撃するというのは、うりゅんさん側の陣形においては臨むところだと思うので、これをうまく仕掛けたとみるか、仕掛けさせられたと見るかは微妙なところです。
とにかく、お互い不満のない形で局面は中盤戦へと進んでいきます。
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好調な攻め?
第2図以下の指し手
△同 歩 ▲5四歩 △7七角成 ▲5三歩成
△同 金 ▲7七桂 △8一飛 ▲3七桂
△3三桂(途中3図)▲4五桂 △同 桂
▲同 銀 (第3図)
△同歩に▲5四歩と仕掛けるのが読み筋。角取りですので△7七角成と角交換してきますが、これが王手にならないため、一度▲5三歩成の王手を効かせることで相手陣を少し乱すことができます。
さらに、▲7七桂と戻した局面は、次に▲2二角と飛車香両取りに打つ狙いがあるので、後手はそれも受けなければなりません。ということで、うりゅんさんは△8一飛としましたが、これで手番を握ることができました。
一旦▲3七桂と桂馬を使うのは自然。△3三桂と受けた局面が難しいところです。
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この局面では、▲4二角、▲4五銀、▲4五桂の3つの攻め方があり、どれも魅力的で悩ましいです。本音を言えばこの局面で15分考えたいところですが、残念なことにもう秒読みに入っています。
本譜は▲4五桂を選択しましたが、最善ではなかったようです。局後個人的に検討してもなお難しい局面なので、細かい検討は省いて結論だけ述べると、▲4五銀が有力ということでした。あえて桂交換を挑まないほうが良い理由は、本譜を進めるとわかります。
とはいえ▲4五桂とするのも自然。桂交換することで▲5五桂の両取りの狙いがあり、▲4四歩も有力な攻めとして残っており、好調な攻めに思えますが。
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飛車を責める受け
第3図以下の指し手
△5七歩 ▲同 飛 △6五桂打 ▲5六飛
△5五歩 ▲同 飛 △3七角 (途中4図)
▲5六飛 △5五歩 ▲5八飛 △7七桂成
▲同 金直△6五桂 ▲7八金引△1九角成(第4図)
私は、第3図で△5四歩と受けるぐらいかなと考えていましたが、それは甘い考えでした。
本譜、うりゅんさんの△5七歩~△6五桂打が良い手でした。この△6五桂打という手が生まれたのが、先ほど▲4五桂と桂交換を挑んだ手の罪です。手にした持ち駒の桂を、相手に先に有効に使われてしまったのです。
進んで途中3図、飛車の逃げ場は5六か5八しかありませんが、どちらに逃げても、持ち駒の最後の1歩で飛車先を止めることができます。
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とはいえ、そのように進める他なく、第4図まで進んで形勢不利がはっきりしました。
第3図から第4図に至るまでで、後手は飛車先を止め、馬を作り、香を補充し、7三にいた桂を6五に跳ねて玉を広くできています。
対してこちらはどうでしょうか。本当に何も指していません。相手に先手を取られ続け、やりたいようにやられてしまいました。(これを読んでいるみなさんも、第3図と第4図を見比べてみてください。どれだけうりゅんさんがうまくやっているかがわかります。)
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では、こちらはどうすればよかったのか。ソフト曰く、△6五桂打のときに▲5三飛成!と切るしかなかったようです。
以下、△同玉、▲4四歩と進んで、形勢としてはまったくの互角を示しています。
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しかし、ですよ。こんなにあっさり飛車を切ると、いつでも△4九飛~△4五飛成と銀を抜かれてしまいますし、攻めが細そうすぎてとても指せる順ではありません。
指せていればフェローチェの名に恥じない攻め将棋だったのかもしれませんが、到底無理な話です。
この順しか勝負になる順がなかったというなら、▲4五桂を選んでしまった時点でそもそも勝てるつくりの将棋ではなかったということでしょう。
迫りきれない
第4図以下の指し手
▲5四歩 △同銀右 ▲同 銀 △同 銀
▲6六桂 △4六馬 ▲4七歩 △同 馬(途中5図)
▲5四桂 △同 金 ▲6六桂 △4四金
▲5四歩 △4一桂 ▲5三銀 △同 桂
▲同歩成 △同 玉 ▲5四歩 △4三玉
▲5三銀 △5二香 ▲3二角 △同 玉
▲4四銀成(第5図)
飛車を抑え込まれてしまい、このまま何もしないと完封負けなので、▲5四歩からとにかく迫っていきます。
△4六馬に▲4七歩と打ち捨て、馬のラインをひとまず外しましたが、今度は△5八馬~△7七桂の寄せがあるので、あまり楽になっていません。
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自玉の猶予がない中、本譜、必死に後手玉に迫っていきますが、厳しく攻めようとするあまり、いささか単調な攻めに終始してしまった部分は否めません。丁寧に受けられて、事態は好転しません。
それでも、▲3二角と捨てて▲4四銀成とし、後手玉にプレッシャーをかけましたが、いかんせん駒が足りていませんし、不用意に駒を渡してくれるような相手でもありませんでした。
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華麗に決められる
第5図以下の指し手
△5八馬 ▲4三金 △4一玉 ▲5八金
△4九飛 ▲5九桂 △2四角 ▲8九玉
△8八歩 ▲同 金 △7九銀 ▲7八金
△4四飛成▲同 金 △8八銀打(投了図)
まで、112手で後手の勝ち
後手の勝ち方はいろいろあるでしょうが、ここで△5八馬を決行するのが最もわかりやすいでしょう。
単に▲同金だと△4九飛から成銀を抜かれてしまうので、一度▲4三金と王手を決めるよりありませんが、ここに金を打たせることで局面がわかりやすくなり、ぐっと読みやすくなります。
本譜、△2四角と保険をかけながら、△8八歩~△7九銀が的確な寄せ。最後は飛車を切って銀を補充し、△8八銀打で詰み。淀みなく寄せられました。
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総括
本局は、課題としている対三間飛車で、自分なりの序盤を指してみました。15分60秒というしっかりした持ち時間で指すのは当然初めてでしたが、まずまずの組み上がりに持って行くことができたので、序盤に関しては悪くなく、ひとつ収穫があったと言って良いでしょう。
また、仕掛けについても、△3一飛と回ってきたら仕掛けるという読みで指し進め、読み通り仕掛けることができてまずまずの仕掛けだったので、この点も良かったと思います。
その後、最善を尽くして攻めることができませんでしたが、これに関してはうりゅんさんの懐が深かったという他ありません。読み抜けがあったり、はっきりした悪手を指したわけではなく、難しい局面での選択を誤ったというところなので、仕方ないところです。ゆっくり読みの力をつけていくしかないですね。
そういうわけで、本局は敗れてしまいましたが、そこまで悪い内容ではなかったと思います。ですので、あまり落ち込んでいないというのが正直なところです。
昇級争いを考えると痛い敗戦であるのですが、まだ7勝2敗、最終局がおわたんさんとの直接対決であることも考えるとまだまだ自動昇級のチャンスはあるはずなので、残り2戦、全力を出し切りたいと思います。
それでは今回はこの辺りで。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。