Fender LEAD 1・3のハムバッキングピックアップをWide Range Humbuckerに近づける試み(ポールピースマグネット化)
Fender LEAD 1・3のハムバッキングピックアップに対するマグネット交換の試みについては、過去に記事としてまとめていますが、今回はFender Wide Range Humbucker(以下WRHB)に仕様を近づけるべく、ポールピースのマグネット化を図ってみました。
Wide Range Humbucker
WRHBについては以前別記事内でまとめていますが、Gibson社でいわゆるラージハムバッカー等を開発したSeth Lover氏が、1967年頃にFender社へ移籍後開発したもので、1971年にTelecaster Thinlineに搭載されたのを皮切りにTelecaster Custom、Telecaster Deluxe、Starcaster等の機種に搭載されていきます
特徴としては外形寸法がいわゆるラージハムバッカーよりも一回り大きい点、ポールピースがCuNiFeと呼ばれる磁力の比較的弱いマグネットである点、社名が刻印された金属製のカバーに覆われている点などが挙げられます。
LEAD Original Humbucker
LEAD 1・3(オリジナル)のみに搭載されたハムバッキングピックアップ(以下LOH:LEAD Original Humbucker)についても、過去に記事としてまとめています。
いくつか特徴を挙げると、外形寸法はいわゆるGibson社のラージハムバッカーより縦横とも10mm程大きく、ボビン自体の大きさはStratocasterのシングルコイル並であり、直流抵抗値はWRHBの10kΩ程度に対し13kΩ程度と高めです。
Gibson社のラージハムバッカータイプのピックアップでは、殆どの場合2つのボビンの中間底面にバータイプのマグネットが位置するという構造になっています。LOHもその例に漏れず、上の画像の通り鉄製のポールピースホルダーの中間にセラミック(フェライト、粉末の酸化鉄化合物を高温高圧で焼き固めたもの)のバーマグネットを確認することができます。
前述の通りWRHBのポールピースはマグネット製ですので、同仕様にするためには、元のポールピースとホルダー、及びバーマグネットを外し、マグネット製のポールピースと置換する必要があります。
今回はAmazonで入手したポールピースマグネットを用います。種別は Alnico5、直径は約5mmで、長さは約15mmのものと約18mmのものがあります。
LOHの鉄製ポールピースのサイズは、上の画像の通り長さが約22.2mmで、直径は約4.7mmとなります。一方購入したマグネットポールピースの直径実測値は4.9mmでした(画像は長さ約15mmのもの)。ボビン側の直径は約5.1mmでしたので挿入にこそ問題はありませんが、逆に容易に抜けてしまうため何らかの方法でマグネットポールピースを固定する必要がありそうです。
ちなみにWRHBですが、ポールピースマグネット構造をレプリカしている上の画像上段のものでは長さが16.1mmで太さが5.2mmですが、鉄製ポールピースで底面にバーマグネットを配した構造をした画像下段の方では長さが15.4mmで太さは5.0mmとなっており、WRHBのポールピースマグネットをそのままLOHに流用するのは難しそうです。
交換作業
LEAD3のピックガード裏面です。LOHの裏面からはベースプレートから12本のポールピースが突出しています。
ベースプレートを外すとバーマグネットとポールピースホルダーが露出します。ポールピースホルダーはベースプレートとボビンに挟まれる形でネジ止めされていますが、バーマグネット自体はパラフィン固定等されておらず、ポールピースホルダーの間に磁力のみで収まっています。
ですのでネジを外せばポールピースホルダーとバーマグネットはボビンから簡単に引き抜くことができます。2つのボビンの中間にはテープが貼られています。
元のセラミックマグネットがあった位置に、マグネットの極性に気をつけながら、長さ18mmのポールピースマグネットを配置します。LOHの場合基本的にブリッジ側のボビンがN極でネック側ボビンがS極となっています。
ネック側のLOHには当初ブリッジ側同様長さ約18mmのものを挿入しましたが、後述の理由で約15mmのものに再置換しました。ポールピース周囲の光沢は固定目的で少量塗布した木工用ボンドです。
元通りにベースプレートをネジ止めして完了です。
結果
今回のマグネットポールピース化で、仕様だけを見ればWRHBに近づいたと言えます。ただし、交換したマグネットポールピースは Alnico5で、WRHBのCuNiFeと比較して磁力は強いとされます。
直流抵抗値ですが、上の画像の通りWRHBの約9.8kΩに対し、LOHでは約12.8kΩと高いです。
鳴らし比べてみたところ、磁力・直流抵抗値とも高いLOH with Alnico5の方が高出力かつ低域が強いと感じました。そのため、磁力が少しでも弱まるようネック側のマグネットポールピースを長さ約15mmのものに再置換したのですが、再置換後も目立った違いは感じ取れず効果的とはいえませんでした。
上の画像は、以前RetroTonePickups社でリワインドとAlnico3マグネットポールピース化(現在は受け付けておられないようです)を行ってもらったLOHです。直流抵抗値は7.5kΩで、鳴らした感じはこちらのほうがWRHBに近いです。
というわけでLOHをWRHBに近づけるためには、置換するマグネットポールピースの種別を磁力が弱いとされるもの(CuNiFe、あるいはAlnico2・3)とし、更に欲を言えばピックアップコイルもリワインドして巻数を減らすなどやや大掛かりな作業が必要かもしれません。
また、コイルタップ時の音は、正直マグネットポールピース化以前のほうが好みで、そのあたりも考慮した上で作業したほうが良いと感じました。
今回行ったマグネット交換自体は、以前行ったときと同様ドライバー(+木工用ボンド)だけで実施可能なお手軽作業と言えます。ただ、やはり故障の原因にならないとも限りませんので、万が一本記事の内容を実行に移される場合にはくれぐれも慎重な作業を自己責任でお願いいたします。
【了】