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Fender LEAD Series(新旧)のリプレイスメントパーツ
新旧Fender LEAD Seriesのリプレイスメントパーツについて、自身の備忘録とすることを主目的に記したいと思います。
パーツを交換する上で元々搭載されているパーツの把握は重要ですが、オリジナルと現行(2020 Player LEAD)には、搭載されているパーツに多くの共通点がある反面、同様に見えるパーツ間には微妙な差異もあるため若干の注意も必要となります。
Peg(Tuner)
・ペグにはオリジナル・現行ともに所謂F-keyが用いられている
上の画像向かって左からオリジナル,現行,1960年代のMustangに搭載されていたものです。
現行に搭載されているものは、70s F Style Stratocaster®-Telecaster® Tuning Machinesとしてパーツ単体でも販売されています。メッキはクロームでストリングポストの根元部分は太くなっています。
オリジナルに搭載されているのはSchaller社製で、やはりクロームメッキでストリングポストの根元部分は太くなっています。ストリングポスト根元付近には「MADE IN W. GERMANY」の文字が見えます。
Mustangに搭載されているものは、ペグポストが根本まで同じ太さでニッケルメッキとなります。
オリジナルに搭載されていたのはクロームメッキのF-keyですが、同時期に発売されたGold StratocasterやBlack & Gold Telecasterには金メッキされたものが搭載されていました。
金メッキされたものにも、やはりストリングポスト根元付近には「MADE IN W. GERMANY」の文字が見えます。
リプレイスメントパーツとしては、Schaller社製のOriginal F-Series 70'sが利用できます。上の画像はOriginal F-Series 70'sのBLACKCHROMEで、その他GOLDやNICKELなども販売されています。
Original F-Series 70'sと70s F Style Stratocaster®-Telecaster® Tuning Machinesを比較してみると、Original F-Series 70'sには 「MADE IN W. GERMANY」がの文字が認められます。
オリジナル、現行ともにペグ穴の直径は約10mmです。そのため所謂ロトマチックタイプのペグに換装する際、ペグ穴自体を拡張する木部加工は必要ないかもしれません。勿論ペグを固定するためのビス穴など、他の加工はある程度必要であると思われます。
上の画像向かって右はTelecaster Deluxe、Starcaster、The STRATなどに搭載されていた、Schaller社製のロトマチックタイプペグです。向かって左はFender社のAmerican Professional Staggered Stratocaster®/Telecaster® Tuning Machinesです。
どちらもペグ本体のネック裏に面する部分に突起が2つあり、搭載するにはこの突起に対応した木部加工が必要となります。オリジナルの一部にも搭載されていたSchaller社製のロトマチックタイプペグは、上の画像のものとは仕様がやや異なっていたようです。
String Guide
・ストリングガイドは所謂羽根型(波型)のものが2つ用いられている
オリジナルでは、1982年の仕様変更までナイロン製のスペーサーが3・4弦用のみに入れられています。
仕様変更以降は3・4弦用よりも低めのナイロン製スペーサーが1・2弦用にも追加されています。
真正面から見ると横に倒した樽型というか両方の外側に向かってややテーパーがかかっているように見えます。この形状のものは1963年の途中からの採用とのことです。
それ以前のものではテーパーはかかっていないように見えます。
現行のストリングガイドは、羽型ですがオリジナルとはかなり形状が異なります。スペーサーは金属製で同じ高さのものがの両方に入れられています。
リプレイスメントパーツとしては、市販のストリングガイドなら特に問題なく使えますが、ネジの径や長さの違いには注意が必要です。上の画像の左からノーブランドの廉価なもの、Fender社のVintage-Style Stratocaster® String Guidesで、その右側はオリジナル搭載のもので上が仕様変更前、下が変更後です。オリジナル搭載のものは、固定用ネジの長さが1・2弦用と3・4弦用で異なります。
現行のストリングガイドとFender社のVintage-Style Stratocaster® String Guidesを比べてみると固定用ネジや金属製スペーサーは同じもののようですが、ストリングガイド自体の形状はかなり異なります。
Pickguard
・ピックガードの素材は塩化ビニールで、オリジナルでは黒-白-黒、または白-黒-白の3Pで、現行では黒-白-黒の3Pのみである
オリジナルのピックガードです。向かって左のLEAD3用のもののみ1・2とは外周の形状が異なります。
オリジナルLEAD2のピックガードを現行LEAD2に重ねてみると、6弦側外周形状の違いと、リアピックアップ位置の違いが見て取れます。
オリジナルLEAD2のピックガードを現行LEAD3に重ねた場合も、6弦側外周形状の違いが見て取れます。現行LEAD2と3の外周形状は基本的に全く同じでピックアップホールのみ異なります。
しかし、製作開始初期に作られたと思われる個体(1・2弦用ストリングガイドがヘッド先端方向に変位している)ではピックガードの形状やネジ穴位置が微妙に異なりました(上の画像青丸の部分)。
オリジナルのピックガード裏面には、全面にシールド目的のアルミ箔が貼られています。
1982年の仕様変更後、一部のものではアルミ箔の貼り方に変更があり、上の画像のような貼り方がされています。
現行では、アルミ箔はコントロール部のみに貼られています。
リプレイスメントパーツとしてはWD Musicにオリジナル用のピックガードが取り揃えられていますが、全体の形状、ネジ穴の位置などオリジナルのものとは微妙に異なる点があるようで、取り付けに際しては多少の加工が必要になる可能性があるため注意が必要です。
また、現行用のピックガードも販売されているようですが、未入手のため詳細は不明です。
Pickup
・オリジナルLEAD2にはX-1(カタログでは「ワイドレンジシングルコイルPU」)が搭載
・現行LEAD2には、Player Series Alnico 5 Strat® Single-Coil Pickupが搭載
・オリジナルLEAD1と3には、LEAD Original Humbuckerが搭載
・現行LEAD3には、Player Series Alnico 2 Humbucking Pickupが搭載
上の画像中央上下がPlayer Series Alnico 5 Strat® Single-Coil Pickupで、メーカーの説明文によると「本物のフェンダートーンに少しだけエッジを加えたPlayer Seriesピックアップ。クラシックなサウンドを現代的に微調整しています。」だそうです。ポールピースは面取りされていて、3・4弦用が1・2・5・6弦用よりもやや高めになる、ヴィンテージとは異なるスタガードです。フロントとリアピックアップは逆磁極・逆位相となっており、ミックスポジション(フェイズイン)ではハムキャンセル効果が得られます。
画像の左右はX-1で、フラットポールピース、ワイヤーのターン数は約9600ターン(同時期の通常のST用が約7600ターン)、ボビンやマグネットは通常のST用と共通という仕様です。画像向かって右がファイバー紙ボビン(1980年半ばまで用いられた、ワイヤー皮膜はエナメル)、向かって左がプラスティックモールドボビン(1980年半ば以降に用いられた、ワイヤー皮膜はウレタン)です。
リプレイスメントパーツとしてはストラトキャスター用といわれるピックアップが殆ど問題なく使えます。オリジナルLEAD2においては、キャビティーのザグリは深いためノイズレス系の高さのあるピックアップでも搭載が可能であることが殆どです。上の画像向かって左から順にX-1、 SEYMOUR DUNCAN/ SSL-4 Quarter-Pound Flat、 DIMARZIO / DP111 SDS-1、 Bill Lawrence/L-250の高さを比較したものです。
現行LEAD2において、キャビティーのザグリはオリジナルLEAD2よりもやや浅めですが、それでも高さのあるピックアップは概ね搭載可能であると思われます。上の画像では現行(3ですが)のフロントピックアップに DIMARZIO / DP111 SDS-1を搭載しています。
次にハムバッキングピックアップについて触れます。
オリジナルに搭載されているLEAD Original Humbuckerは、Gibsonタイプより縦横とも10mm程大きいため、無加工で搭載可能なリプレイスメントピックアップは筆者の知る限り存在しません。ボビン自体の大きさはStratocasterのシングルコイル並で、直流抵抗値も高め(約13kΩ)です。
ただ、ピックアップキャビティーは広くて深いため、ピックガードを新調すれば大概のピックアップが搭載可能であると思われます。
上の画像のようにWide Range Humbuckerの搭載も可能です。
現行LEAD3にはPlayer Series Alnico 2 Humbucking Pickupが搭載されています。Fender社によれば「本物のフェンダートーンに少しだけエッジを加えたPlayer Seriesピックアップ。クラシックなサウンドを現代的に微調整しています。」とのことです。
Olympic White、Sienna Sunburstにはブラックボビンのものが、Purple Metallicにはホワイトボビンのものがそれぞれ搭載されていますが、直流抵抗値等はフロントが7.17~7.26kΩ、リアが7.54~7.97kΩでボビンの色による違いは特に無さそうです。
現行LEAD3では、1弦側のピックアップ高さ調整用ネジが2つあるため、通常のハムバッキングピックアップを無加工で搭載することは困難です。リプレイスメントピックアップとしては、FENDER社のShawBuckerやDouble Tap Humbucking Pickupなどであれば、ピックガードの加工なしに搭載可能です。ただし、カバードタイプの場合は形状が異なるため、加工が必要となります。
上の画像ではShawbucker Tという刻印入りカバー付きピックアップをSienna Sunburstの現行LEAD3に搭載していますが、前述の理由でピックガードを新調して対応しました。
POT、Switch、Knob
・オリジナル、現行ともに、1ボリューム1トーン、アウトプットジャック(いずれも取り付け穴径Φ=3/8インチ=約9.5mm)、スイッチ✕2(いずれも取り付け穴径Φ=約12mm)がピックガード上にマウントされている
オリジナルでは、POTがヴォリューム・トーンともCTS社製で250KΩAカーブ、アウトプットジャックはスイッチクラフト社製で、何れもインチ規格です。ノブはストラトキャスター等と同様でやはりインチ規格です。トーン用キャパシターはBestran Corporation製のセラミックで値は0.05μfです。
スイッチにはトグルスイッチ(米C&K社製)が使われており詳細は以下のとおりです。
#7211(ON-ON-ON)
:コイル選択(LEAD1) 、ピックアップ切り替え(LEAD2・3)、コイルタップ選択(LEAD3)
#7201(ON-ON)
:シリーズ/パラレル切り替え(LEAD1)フェイズ切り替え(LEAD2)
スイッチを上部から見ると、中にはナイロン製と思われる白色のスペーサーが見えます。
現行では、POTがヴォリューム・トーンともCTS社の250kΩAカーブ、アウトプットジャックはブランド不明で、何れもインチ規格です。ノブはストラトキャスター等と同様でやはりインチ規格です。トーン用キャパシターはIllinois Capacitor社のフイルムで値は0.022µFです。
スイッチには、台湾Salecom社のT80-T Toggle Switchesが用いられており、詳細は以下のとおりです。
ON-ON-ON:ピックアップ切り替え(Player LEAD2・3)
ON-ON:コイルタップ選択(Player LEAD3)、フェイズ切り替え(Player LEAD2)
スイッチが回ってしまわないように突起のあるワッシャーが固定に使われていて、その突起を固定するための穴がピックガードに開けられています。
POT・ジャック・ノブ・ピックアップカバー(LEAD2のみ)については、インチ規格であることに注意すれば、特に問題なく交換等が可能であると思われます。
スイッチについては、日本のフジソク社やNKKスイッチズのトグルスイッチがサイズ、端子の形状なども含めて流用に適していると考えられます。現在入手しやすいのはNKKのもので、ON-ON-ONスイッチにはM-2020L/Bを、ON-ONスイッチにはM-2022L/Bが適しています。
Neck Joint Plate
・オリジナル、現行ともに、ネックジョイントプレートは「F」の刻印が入った4点止めタイプのものが用いられている
上の画像上段向かって左と中央がオリジナル(と同年代)のもので、向かって右は現行のものです。いずれも「F」の刻印が入れられていますが、オリジナルと現行では書体や位置がやや異なります。中央の金メッキされたものは、ペグと同様でGold StratocasterやBlack & Gold Telecasterに使用されていたものだと思われます。下段はオリジナルに用いられていたナイロン製クッションです。
ジョイントプレートは、4点止めタイプのものであれば基本的に問題なく用いることが出来ると思われます。
Bridge
・ブリッジやサドルについては別記事にしているため省略
Strap Button
・ストラップピンについては、オリジナル・現行ともに所謂Fenderタイプのものが搭載
以上オリジナル・現行のLEAD Seriesのリプレイスメントパーツについて記しました。
【了】