ダンジョン・ワールド・ガイド(3)
プレイの例
この項は、私のキャンペーンからの引用だ。記憶に残っている実プレイを元にしているので、ルールと心得が実際に機能する様がうかがえるだろう。ムーヴの実際の運用、さらには本書のアドバイスを実プレイに投入する様子を確認して欲しい。サイドバーには説明と注釈がたっぷり付いているので、テキストを読む流れを遮られることなく理解を深めることができる。ちなみに、当然ながら全PCは名前がついていたが、この例においてはクラス名に置き換えている。
GM:「よし、というわけで、古代の塔へと続く扉は開いている。壊れて蝶番からぶら下がる形だ。君たちは、中に分け入ることにした。石造りの控えの間は、石の粉末と破片だらけだが、所々ごちゃごちゃになってるよ。まるで何かがうろついたかのようだ。前方には、飾りたてられた頑丈な花崗岩製の分厚い両開きの扉が控えている。壁を覆うのは、刻み込まれた美しいフレスコ壁画で、古代のドワーフの戦争の場面が描かれている。ここには興味を引く物がいくつかある。部屋の隅っこにある小さな人型の骨は、ずっと昔に、原形を留めないぐらいに粉砕されている。また、石の床には深いひっかき傷があり、金属を引きずったかのようだ*1」
レンジャー:「両開きの扉は鍵が掛かってる? 開いてみるよ」
シーフ:「待った! 骨があるって言った? そんで、床にひっかいたような傷だって? 刃のトラップに違いない。全員後ろに下がって、僕に任せて欲しい。《トラップの専門家》を使うから……*2」
彼はダイスを手に取って、振ろうとする。
GM:「いいね、どういう行動を取るんだい? 一体全体どうやってトラップを調べるのかな? どう動くの? 棒で突いて、部屋を調べる、とかかな?*3」
シーフ:「いいとこつくね。まずはひっかき傷を調べ、どの角度から付いたのか確認して、それから刃がどこから来たのか目で確認します。とても慎重に歩みを進め、プレッシャープレートやトリップワイヤーを探すんじゃないかな。と。鋭い目でひたすら床板全体を見ますよ。どうでしょう? よし…じゃあ合計は11です! 3つすべての質問ができるってことで。ここにトラップはある?(ある場合は、どうやったら起動する?) 起動したらどうなる? そしてここで他に隠されているものは?*4」
GM:「わお、出目いいなあ。もちろん、トラップは間違いなくあるよ。ドアの取っ手を回したら起動する」
レンジャーは、すぐさまドアの取っ手を放すジェスチャーをする。
GM:「推測していたような刃ではないね。刃を収めておく隙間はない。実際、とても妙な感じだ。扉の枠には目に見える金属線がつけられており、左右の石の壁に刻まれた石のフレスコ画につながっている。扉の取っ手が回されたら、その部分がスライドして開くように見える。一番奇妙なのは、隅っこの骨だね。コボルドのものなんだけど、刃で死んだんじゃない。明らかに、巨大な何かに叩き潰されて死んでいる」
レンジャー:「この状況全体が、かなり変わっているなぁ。辺りをうろついて、《事実の識別》で何が起こっているのかを明らかにしよう。出目との合計は8なので、質問はたったひとつだね。『最近ここで何が起きたの?』かな*5」
GM:「君は姿勢を低くして、埃に残された痕跡を詳しく調べる。数多くの小型のクリーチャーがここを通過している。おそらくたくさんのコボルドだ。そして、石板がスライドして開き、非常に大きな何かが出てきたのは明らかだ。どんなデカブツかはわからないけど、二本の脚で歩き、コボルドを叩き潰して死に至らしめている。残りのコボルドは、扉を通り抜けてから閉めたようだね」
シーフ:「なるほど、じゃあ《裏稼業の秘訣》を使って、トラップを解除します。ペンチとワイヤーと小刀を取り出して、扉の仕掛けに取りかかります*6。出目の合計は7だけど、どういうことになりますか?」
GM:「選択肢ってこと?*7 内部に探りを入れていると、ワイヤーが二組みつかるよ。これはドワーフ職人の手になるものでとても複雑だけど、うち1本が石のフレスコ画を開き、もう1本が何らかの装置を作動させるものだとわかる。1つを解除すれば、もう片方が作動するだろう。つまり、どちらを停止させるか選ぶことになる」
シーフ:「なるほど、未知の仕掛けを作動させるか、フレスコ画を開くかってことですか。うーむ、じゃあ石の絵がが開いちゃうことにしよう。全員、部屋に入って、準備して」
GM:「フレスコ画の石板はがたがたと開く。水圧式とかかな。フレスコ画は壁に引っ込んでいき、小さなアルコーブが露わになる。内部の2体の真鍮製の巨人が、なんとか収まる大きさだ。巨人は、ドワーフ製のオートマトンだね。戦争のために作られた、重みのある真鍮メッキの施された機械人形だ。とはいえ、これらのオートマトンは起動していない。シーフの選択は賢明だったってこと。オートマトンは、完全に静止している。はめ込まれたルビーの瞳が、真っ直ぐ前方を見つめるのみ*8」
ウィザード:「そのルビーはどれぐらいの大きさ?」
全員がどよめく
ファイター:「おいおい、またやらかすんじゃないぞ。ルビーはそのままにしておこう。まったく、強欲とされているシーフよりもひでーな」
ウィザード:「実験に必要なんだ…魔法の材料だからさあ*9」
GM:「そうなの? 君の呪文はすべて、宝石から力を得ているの? 知らなかったよ」
ウィザード:「いや、特定の儀式魔法だけさ。ええっと、粉状にすり潰して、魔法陣を描くのに使うんだ*10」
GM:「ルビーは、ハーフリングの拳ぐらいの大きさがあるよ。君の材料袋にはぴったり」
全員、再度どよめく
ファイター:「ダメだって。たぶんオートマトンが動き出して、皆殺しにされちゃう。放っておこうぜ」
シーフ:「もうひとつのルビーは僕のものですよ! 独り占めは許しません!」
ウィザード:「んじゃ、やるか。機械人形をよじ登り、ポケットナイフでルビーを取り外しにかかろう。何でダイスを振ればいい?」
GM:「ダイス・ロールなしでできちゃうね*11。金属の眼窩のあたりにナイフを差し入れ、ルビーを緩めることで、君の手の中に転がり込んでくる。けれども、そうするやいなや、この機械人形は、驚くべき速さで動きはじめる。その手が、君の喉元を掴もうと伸ばされる。どうする?*12」
ウィザード:「げげっ、飛び退いて、ファイターの後ろに逃れようとする!」
GM:「素早く動くことで《危機打開》する感じだから、ダイス・ロール+【DEX】で。」
ウィザード:「……5だった。完全に失敗?」
GM:「その通り、機械人形の素早さは君を遙かにしのぐ。巨大な真鍮の手が突き出され、君の首を掴まえ、そのまま君を床から持ち上げ、喉を締め上げてくる。君は床の上数フィートの高さに吊り上げられる形だ。残りのみんなはどう対応する?*13」
シーフ:「事態がどう推移するかはっきりするまで、隅っこに隠れます」
ファイター:「走り込んで、機械人形の締め付けを解こうとする。ハンマーを腕に叩き付ける感じかな?」
GM:「なるほど。君が真鍮の怪物に向い走っていく間に、オートマトンは片腕を上げる。すると手首のところが回転して、手は旋回する刃と化す。君が近づいてきたところで、ヤツはそれを振り下ろしてくる」
ファイター:「つまり、この状況は《ハックアンドスラッシュ》?*14」
GM:「そいつを破壊しようとする? それともウィザードの解放に注力する?」
ファイター:「もちろん、壊す方。どっちみち、みんなに攻撃してくるんだろ。その腕をぶっ潰したいな」
GM:「そうなると、やっぱり《ハックアンドスラッシュ》だ。ダイス・ロール+【STR】で」
レンジャー:「9だ、悪くない」
GM:「君は突撃するが、ヤツは思っていたよりずっと素早い。オートマトンは電光石火のごとく腕を突き出し、回転する刃は君の防具をズタズタにする……5ダメージだ。君の胸当てから血が飛び散る。けれどもそれによって隙が生じる。腕が伸びきったところに、君はウォーハンマーをたたき込み、真鍮の装甲を突き破って砕く」
ファイター:「よっしゃ! 9点のダメージだ」
GM:「おー、そうなると、分厚い真鍮の鎧は、君の一撃を吸収するものの、ダメージが大きいのでへこみ砕ける。機械の腕が二つに折れ、ウィザードは苦しそうにあえぎながら床に落ちる*15。レンジャー、君はどうする?*16 この状況を見ているだけかい?」
レンジャー:「んなわけない。ウィザードが落ちた今、遮られることなく撃てるからね。弓を取り出して、その機械人形を撃つ。いやむしろ、《狙い撃ち》で、開いた眼窩に命中させたいかな!」
GM:「ちょっと待って、それには相手が無防備な状態にあるか、不意を打たれている必要があるよ。君はすぐそばにいるんだから、機械人形は間違いなく視認しているって*17」
レンジャー:「なるほど、じゃあ《射撃》だ。合計は7なので、なんとか成功。そうなると選ぶのは……『矢弾を 1 減少させる』かな。何発か撃つ必要があったんだよ」
GM:「こいつは真鍮のプレートで覆われているから、理にかなってるね。最初の何本かは、はじき返されてされてしまうんだ*18」
レンジャー:「そうそう! 最初の何本かの矢はそれてしまうんだけど、ついには2枚のプレートの継ぎ目に命中し、機械仕掛けの奥深くに突き刺さる。6ダメージ。あ、それに《動物の友》である鷹が同じ対象に攻撃したなら、その【獰猛さ】がダメージに加えられるとあるけど」
GM:「いいけど、この徹底的に重武装したタンクに、鷹がダメージを与える方法は? 爪ではこいつにひっかき傷をつけることすらできないと思うけど*19」
レンジャー:「うーん…オレの矢がついに命中したところで、鷹が飛んでいって、その矢を押し込むってのはどうかな? 矢を掴んで、機械仕掛けの奥深くまで到達させる感じで」
GM:「素晴らしい! よし、鷹はそいつに矢を押し入れると、そこから火花が飛び散り始める。機械人形は痙攣するけど、まだ動きを止めない。一瞬、やったと思うけど、そこで肋骨に激しい痛みを感じる。何かに後ろから突き刺されたんだ。1体目に集中していたから眼中になかった、2体目の機械人形だね。君のレザーアーマーを刺し貫いてくるので、6ダメージ食らって」
レンジャー:「おいおい! そっちも起動していたなんて思わなかったよ!」
GM:「そりゃまあ、君たちはウィザードの引き起こした厄介事にかかりっきりだったからね*20」
シーフ:「オーケー、私にとってはチャンスです。私、隅っこで縮こまっていましたよね? 機械人形のどちらも、こちらに気づいていないんじゃないでしょうか? 忍び寄って《バックスタブ》したいです」
GM:「連中の注意がどこに向いているのかは見抜きにくい。普通の人間みたいに動作したり、見渡したりするわけじゃないからね。試しに1体に忍び寄ってみたらいいんじゃないかな21」
シーフ:「《危機打開》ですかね? 【DEX】で? 合計12なので、全く問題ありません。影のごとしですよ」
GM:「すごいな、友人のレンジャーを2体目の機械人形が突き刺している間に、そいつの背後に苦もなく到達できる」
シーフ:「《バックスタブ》には、無条件でダメージを与えるか、ダイス・ロール+【DEX】で追加の恩恵を得ようとするか、そのどちらかだとありますね。このキャラはギャンブラーだから、振ってみます……9。相手のアーマーを1減少させる、を選びますね」
GM:「素晴らしい、具体的には、どうやってアーマーを減らすの?*22」
シーフ:「真鍮のプレートを、梃子の原理で緩めましょう。レイピアを露出した接合部に差し込み、それから反対の手に持ったダガーで、防具の大きなパーツをずらす感じです」
GM:「最高だ。色褪せた真鍮の大きな塊が、騒々しい金属音を立てて床に落ちる。このオートマトンは急に君の方を向く。頭部が180度回り、腕も回転するので、身体の向きを変えることすらせずに、君に向き合うってこと」
シーフ:「私の方を狙うのはわかっていたけど、そう来ましたか。すごいな」
GM:「うむ。この機械人形は、レンジャーの血を滴らせながら両腕を上げ、君めがけて振り下ろさんとする。一方、部屋の反対側では、半ば壊れた機械人形が痙攣を起こしながらも、いまだに動いている。ずんぐりとした足を持ち上げ、床に転がっているウィザードを踏みつぶす構えだ」
ウィザード:「〈マジック・ミサイル〉を撃ち込みたいんだけど!」
GM:「転がって踏みつけをかわさないの?」
ファイター:「彼が呪文を唱えている間、踏みつけられないよう、彼を《防御》できる?*23」
GM:「もちろん。彼を《防御》するにはダイス・ロール+【CON】だ」
ファイター:「くそっ、たった8か。〔ホールド〕は1なので、攻撃のダメージを半減させるのに消費しよう。機械人形が足で蹴ろうとする進路にウォーハンマーを振り、攻撃を払いのける」
GM:「おおう、すごいね。蹴りの衝撃はかなり相殺されたので、ウィザードはたった3ダメージで済む。〈マジック・ミサイル〉をどうぞ」
ウィザード:「……出目合計は9。呪文は放たれるけど、よくない事態を1つ選ぶ必要がある。『いらぬ注意をひくか、術者が困難な状況に置かれる』にするよ。〈マジック・ミサイル〉は、[アーマー無効]の5ダメージだ」
GM:「どういった具合にかな? つまり、呪文は具体的にどういうダメージを発生させるの?*24」
ウィザード:「純粋な魔力とあるけど、電気が放出される感じじゃないかと想像してるよ」
GM:「よしよし! つまり、機械人形が、巨大な金属の足で君を踏みつけて来るので、君は打撲やすり傷を負いつつも、電撃の放出に全神経を集中させる。雷撃は機械人形に命中して徹底的に焼き焦がし、その回路をショートさせる。よろめいてるよ」
ウィザード:「いらぬ注意をひくか、術者が困難な状況に置かれる、は?」
GM:「おっと、忘れるところだった。ええっと、機械人形はよろめき、攻撃の勢いを保ったまま、突如倒れ込んでくる。大きな音を立てつつ、君の上に倒れるので、押し潰されるまでの猶予はほとんどない*25。じゃあ今度は、レンジャーとシーフに振ろう。君たちは敵を挟み撃ちにしたけど、そいつは自由自在に向き直る方向を変えることができるようだ。刃の付いた両手を、シーフに振り下ろしてくる」
シーフ:「レイピアでその攻撃をそらせて、ダガーをさっきプレートを引き剥がした部分に突き立てたいですね」
GM:「《ハックアンドスラッシュ》だと思うけど、どう?」
シーフ:「……うわ! 4だから、完全失敗です!」
GM:「おやまあ、こいつの地力は君を遙かにしのいでおり、受け流しなどできようはずもなかった。機械人形は君のやろうとしたことをまったくものともせず、君の腕に両腕の刃を深々と埋める……7点のダメージで、君は壁を背にしたまま動けなくなる。刃が君の肩を刺し貫いて壁まで達してるので、移動できないんだ。そして、機械人形は頭を後ろに回転させて、レンジャーの方を向く*26」
レンジャー:「そいつが何かする前に、弓を捨てて、スピアを突き入れます」
GM:「よし、同じく《ハックアンドスラッシュ》だ。双方が同時に行動を起こしているのは間違いないから」
レンジャー:「《ハックアンドスラッシュ》は8なので、双方が傷を与えるってこと?」
GM:「うーん、代わりに難しい選択はどう? つまりこうだ。シーフは機械人形のすぐ後ろで身動き取れなくなっており、君はそいつにスピアを突き刺そうとしている。機械人形は空振りして、その一瞬の隙に、君は内部の機械仕掛けに防ぎようのない一撃をたたき込むんだ。スピアをそこに突き入れ、ヤツの装甲を完全に貫通するが、向こうまで刺し貫いたことでシーフを傷つけてしまうかもしれない。ということで、君はダメージを受けないが、シーフが喰らうんだ。いいかな?*27」
シーフ:「それはすごい」
レンジャー:「いや、最高じゃん。それでいこう。ダメージは7点」
GM:「オーケー、シーフは5ダメージを受けてね。でも、機械人形を機能停止させるには事足りたよ。スピアに貫かれると、そいつは動きを止める。これで機械人形は2体とも動かなくなった。みんなが深呼吸して、身体に付いた汚れを払い始めたとき、リズミカルな打ちつける音が聞こえる。それは両開きの扉からだと分かった。何かが向こう側から扉を押して、開こうとしているみたいだ……*28」
最後に
このゲームについての最終的な考察
さあこれで、このガイドを読み終えたことになる。核心にあるのは、『ダンジョン・ワールド』は驚くべきほどシンプルで、信じがたいほどダイナミックであるものの、正直なところ万能のシステムではない、ということだ。できないことだってかなりたくさんある。たとえば、技能ランクがない。椅子をどれほど上手に作れたか、あるいは水兵結びの出来映えを知る術はない。短距離や長距離の難易度修正値もなければ、出目20狙いの「いちかばちか」ルールもない。けどそれらは手抜かりではなく、完全に意図されたものだ。Sage Kobold Productionsが、中世の世界を正確にシミュレートするためのルールだらけのゲームとしてデザインしていないからだ。そういうことを求めるなら、山ほどある他のゲームから選べばいい。
彼らがこのゲームを生み出したのは、私たちが卓について、本や映画のようなものすごい冒険を体験できるようするためだ。キャラクターに籠編み技能はないのは、このゲームの目的がそこにないからだ。あるアクションがどれぐらい難しいものになるのかを決める代わりに、『ダンジョン・ワールド』は「失敗の対価」を問うてくる。ムーヴはアクションを停滞させずに進め、成り行きと代償、自己犠牲と英雄的なアクションでいっぱいの、ワクワクするようなセッションにつながるようデザインされている。『ダンジョン・ワールド』は、やりたいことを理解しているゲームであり、その目的に100%注力している。そして、それを達成しているのは確かだと思う。
この小冊子が助けとなることを願う。このシステムにまつわる君たちの混乱が解消されているといいのだが。ゲーム内のフィクションを構築することにひたすら注力しよう。せわしなく質問しよう。決められないときは直感に従って、しっくりくること、冒険が求めること、プレイヤー・キャタクターの人生を最も面白くすること、を口にしよう。もしGMとプレイヤーが、大きなリスクをとって多大な報酬を手にすべく、このゲームに参加するなら、とても楽しい時間が過ごせるはずだ。さあ、取りかかろう!