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無名の私がドイツの専門誌に掲載された話。

昨年、私はドイツのフェルト専門誌に、日本のフェルトアーティストとして掲載された。

コロナ禍、東京は緊急事態宣言中、ドイツもロックダウンしていた時、突然その雑誌の編集長からメールが来た。

「私はあなたを見つけた!!あなたの作品は素晴らしい。私の雑誌でぜひ紹介したい。あなたにインタビューしたい!!」との事。

日本でもほとんど誰にも知られていないのによく見つけてくれたなぁ。まさか騙されてたりしないよねと疑心暗鬼な私。

インタビューに承諾したところ、たくさんの質問がかかれたpdfが送られてきた。その内容に驚いた。作品についての考え方やプロフィールだけでなく、生い立ちや家族構成、幼少期、趣味、ペットなど私について丸ごと全部という感じだった。

英語は苦手だが、その質問一つ一つに英語で答え返送した。

そして、実際その雑誌は発行された。ドイツ語の分かる友人に訳してもらったので、その文章も読んでいただきたい。

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『ウールとの対話-小野彩香。白色ウールから創られる、艶のあるスカルプチャーを愛する-』

”日本人アーティスト小野彩香は、フェルトを陶器のように創り上げる”

小野彩香氏による、白いウールから出来た印象深いフェルトの作品を見たとき、44歳の彼女が芸術の道を歩んでこなかったとは、誰も信じないでしょう。事実、彼女は、高校を卒業して、法律を学びました。彼女曰く、「芸術について、何もわかりませんでした」。

その後、テキスタイルの学校で、織物や、染め物を勉強し、最終的に芸術を学びました。
「こんな風になるなんて、まったく想像していませんでしたね」彼女は嬉しそうに話します。


“試行錯誤と混乱”
一冊の本をきっかけに彼女はフェルトに興味を持ちましたが、そう上手くはいきませんでした。試行錯誤と混乱の時期だったと言います。その時間がフェルト作家・小野彩香を生み出したのです。彼女は、夫と娘と共に、東京の西に住んでいます。車で約40分、三階建てのアトリエは、天気の良い日には、富士山を眺めることができます。

最初は、アクセサリーやバッグを製作していました。「それから、私は1つの形を追求するようになったんです。白いスカルプチャーを作りました」彼女は、様々な色を試しましたが、光と影を強調するのに良いのは、ウールの持つ自然な白さだということに辿り着きました。

帽子やバッグもありますが(p.35ff参照)、オーストラリア産メリノウールで創る白い彫刻のような作品は彼女の特別な喜びです。

空洞のあるフェルト作品から、音や風、水、幼少時代の思い出のインスピレーションを受け取ります。そうして時折、この先どんな形になるかわからない、ざっくりとしたスケッチから作品製作を行うこともあるそうです。


“形の実験”
「ウールと語ることから始めます」小野彩香氏は言います。
「ウールに何かを強制しないようにしています。結果的に出来上がるものは、私の想像を超えるものなんです。」このことから、彼女は自分の手以外の道具を使いません。
「私は、ウールを粘土のようにみています。そして、新しく形作りを試みているんです」
彼女の製作プロセスは、自身のライフスタイルに合わせていて、その仕事の品質向上につながっています。


“ツィターでリラックス”
「私にとってフェルトは人生と同じです」小野彩香氏は語ります。「人生と芸術創作は、お互いにポジティブに影響していると確信しています」それには、音楽も含まれます:日本人アーティストは余暇にツィターを演奏します。「ツィターの音に癒されるんです」
こうして彼女は、紡ぎ、織り、時計を作るのです。

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友人が訳してくれた文章を読んで、あまりにも美しくまとまっていて感動した。遠く日本に住んでいる私をこんな風に紹介してくださってうれしかった。

snsを通じて、記事を見てとげとげバッグを作ったよと報告してくれた読者の方がいたり、ドイツではいつ個展をするの?と聞いてくれる方もいた。

私は、自分の作品を言葉巧みに説明するのは苦手だ。言葉で説明できないものを形で表していると思うから。

しかし、今回は地道にコツコツと制作していれば、見ていてくれる人は必ずいるんだと勇気づけられた。

いつかドイツで個展を開きたい。


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