
花物語 〜カンゾウ〜
パートで花屋に勤め出した頃、花き市場から仕入れてきた箱入りの花を、水揚げする作業があった。
大量の花の水揚げは大変だが、色んな花があり楽しくもあった。菊の花は農薬がきついので、手は荒れるわ…くしゃみは出るわ…かなり泣かされた。
トリカブトの花が来た時には、ドキドキだったし
(買う人いるかね〜?)スズランなんか胸キュンもの。
どの花も水揚げすると、生き生きと蘇るのだが、その中で忘れられない思い出がある。
運ばれてきたカンゾウの花はオレンジ色で、一見チューリップのバレリーナという品種に似ているのだけれど、あまりにもクッタクタでミイラみたいだった。
一本一本茎の先を斜めカットして、たっぷりの冷水を入れたバケツに入れていく。すると数分後には、目でわかるくらい、スローモーションのように蘇っていくのがわかった。イキイキと「私はカンゾウです!」と宣言しているかのよう……。
その頃の私は、夫との仲が上手くいかず別れようか悩んでいて、いつも心の中がモヤモヤしていた。でも、そのカンゾウの蘇りを目の当たりにして、心が晴れ渡ったのを覚えている。花に元気をもらったのだ。
結局、離婚して、その後も波乱万丈な日々を過ごすことにはなるが、この時の感動は忘れられない。
『花には水を 人には愛を』という相田みつをさんの言葉があるが、まさにこの通りではないか。
アイフルの宣伝で大地真央扮する女将さんのセリフ
『そこに愛はあるんか?』と、自分に問いながら、少しでも愛のある自分でいたいと思う。
写真はカンゾウではなく、かすみ草ですが、何か?
by 大前春子 (笑)