トラペジウム感想 東ゆうとコミュニケーション
SaKuraです。
トラペジウムの感想、というかなんとなく自分が思ったことを殴り書きしました。
あらすじ
主な感想
まず初めにこの作品を見る前は「おぉ〜またいつものアイドル物か?」みたいなことを思った気がする、多分。
実際に今日(5月11日)に見て1番最初に感じたのは「なんて人間らしい主人公なんだ...」だった。
人間らしいってなんかすごい曖昧な言い方で申し訳ないが筆者自身が考える人間らしさというのは「目的のためになんでも利用する 犠牲にする」「醜くても抗う 足掻く」「思ったことを歯に衣着せずに言ってしまう」そんな感じだと思う。
作品全体的な部分を評価するのであれば大変面白くて怪作って言いたい気持ちもある一方で、作品として用意された尺が足りないのな多少ダイジェストが多かったところは少し残念でもある。ただそれでもこのトラペジウムという作品は十分面白かったと思う。
東ゆうのお話
コミュニケーション①
この作品の大事なところは主人公 東ゆうのコミュニケーション不足な部分で問題が起きて東ゆうの計画がズレる展開だ。
例えばボランティア活動で四人一緒に同じ班で動くはずが「若い女の子4人が車椅子の補助は危ない 心配」という理由で班を分けられたシーンだ。
多分ある程度の常識のある人間はその理由を聞いて納得するはずだが、東ゆうは目的のために全てを蹴飛ばしていくタイプなので当然抗議もする。まぁ普通に抗議流されて亀井と2人で組むことになるんだけど。
こういうちょっとした部分でも4人一緒を大事にしようとするのは城のガイドをしてるときも見せていて、TVが取材に来たときに欠席していたくるみに連絡をするシーンもある。
このシーンの後だと「ボランティア仲間なんです」って発言があって亀井が怒るシーンがあるんだけど、ここのカットよく見ると既に亀井の鞄に彼氏とのキーホルダー付いてるんだよね。
灯台もと暗し過ぎる気もするが結局は外見的部分しか見ていないコミュニケーションの取り方をしているのがこの辺りからだいぶ読み取れる。
コミュニケーション②
東ゆうのコミュニケーション能力自体は高く、東西南北のアイドルを集めるためにわざわざロボットのことを多少調べたりする努力さもある。しかし東ゆうのコミュニケーション能力は「アイドルにする」部分にのみ付随してるモノで、例えばもっと相手のことを知ろうとするコミュニケーションが出来ていなかったりなどがある。
実際に相手のことを知ろうとしないコミュニケーションが原因で問題が起きてしまってるシーンが亀井の彼氏バレやくるみが発狂してるシーン。
亀井の彼氏バレがあったときはその数日前にSNS対策を考えていたが、結局東ゆうが考えている対策というのは表面上の部分をどう見せてSNS上で上澄みを見せれるか、そんなところだと思う。ただ亀井の彼氏バレは少し前に書いたようにもっと自然な会話をしていればみんな気がつけたはずなのだ。
なぜなら、亀井は少なくともお城のボランティア活動をしている時には既に彼氏がいる、そう思わせるキーホルダーが鞄に付いているのだ。
つまり東ゆうはそういう細かい部分まで実は見ていない、むしろ外見だけを見ていて外見を構成するアクセサリーや衣服にまで目がいっていない。更に言うのであればコミュニケーションをきちんとしていれば亀井に「彼氏がいるのではないか?」と思う発言が出た可能性もある。その時点で対策を打つことを可能だったと思うが、あくまでこれは可能性の話だ。東ゆうの性格を考えれば彼氏にリア凸して別れさせような気もする。ここで言うコミュニケーションというのは何気ない普段の合間にある自然な会話の事だ。帰り道や歩きながら他愛もない話をする、そんなコミュニケーションのことを言いたい。
東西南北が事務所に所属して色んな番組に出るようになると、ロケバスや電車のカットが出てくる。
電車で帰るときは基本的に東西南北が四人席に座っている。画面の左手には華鳥さんとくるみが、右手には東ゆうと亀井がいる。大体はこの形で座っているが、一緒に座っているのに4人で談笑してるシーンが一切ない。疲れているからみんな寝ているシーンはある。そんなときもあるだろう、と見ていくと基本的に東ゆうは電車に乗るとイヤホンをして外界からの情報をシャットダウンして自分の世界に浸ってしまっている。つまり東ゆう自身がコミュニケーションを取れる時間を自分から潰しているのだ。
クイズ番組のシーンでも回答するくるみ本人ではなく東ゆうがボタンを押すことでプレッシャーを与えてしまい、回答できないシーンがある。一言、「分かる?」と相談も出来たのにしない。そういう「分かる人は必ずできる」ように思ってる真っ直ぐ過ぎる部分が東ゆうの良さでも悪さでもある。
少し話を戻すが、クイズ番組の後にもう一度電車で帰るシーンがある。
ここでよく見ると亀井は四人席の右側にある横列の席で電話をしている。恐らくは彼氏と電話しているのだろう。東ゆうはアイドルに彼氏がいるのはダメだとそう考えてるタイプだ。イヤホンをして外界からの情報をシャットダウンしているため、もしかしたら「亀井に彼氏がいるのではないか?」そういった情報もシャットダウンしているのだ。みんなのことを見て先回りして考えているのに、肝心の内面的な部分や何気ない普段の言動から気がつける部分を見逃しているのが東ゆうのコミュニケーション不足たる所以だ。
東ゆうの狂気さ
なんか巷では「主人公がサイコパス!」だとか色々言われてるがそれは違うと断言させて欲しい。確かにサイコパスように感じるというのは分かるが筆者個人としてはサイコパスと言うような定義が曖昧であり、作者や造り手の方達をサイコパス扱いにしてる発言が多く、それに対して怒りがあるため感想を殴り書きしてる部分はある。
本題に入るが、ここで言う東ゆうの狂気さと言うのは
「努力し続ければいずれアイドルという仕事は好きになる」
と本気で思っている部分だ。
くるみは南ちゃんに「自分はもう限界」「自分が壊れそう」って言ってる。
つまりくるみからしたら東ゆうは本音を話しづらい人間で、それは単純に東ゆうが自分の夢「東西南北でアイドルグループを作りプロデュースする」目的の最低限ラインにPとアイドルの対話構造を作っていないこと。ここの対話構造をきちんと作っていればそれぞれがどういう気持ちでアイドルをやっているかが分かって今後どういう問題が起きるかも多少は想像が着くはず。
大河くるみと話してればくるみが誰かに期待される、誰かの偶像崇拝に利用されたくないって部分が分かるし、限界が来てることも言えたかもしれない。
華鳥蘭子と話してれば周りを見ている蘭子さんからそれぞれの今の状態を聞くことが出来た。
亀井美嘉と話していれば彼氏の存在にも気が付き、SNSの投稿による彼氏バレも起きなかった、起こさせなかったことも出来たかもしれない。
座席位置と各キャラの精神状態
図を描いて説明しようと思ったが図を描くのが下手くそすぎるのでこういう感じで説明する。
初期の座席位置はこうである。
南
北
西 東
この座席位置の意味合いとしては
西(くるみ)が1番懐いており友達である東ゆうの隣に
東(東ゆう)はくるみの隣に
右側の1列席は
南(華鳥さん)は全員を支える柱として後ろに
北(亀井)は憧れで自分のヒーローである東ゆうの背中を見る位置になっている。
しかし話が進み亀井の彼氏バレが発生し、東ゆうが亀井に対して
「彼氏がいるなら友達になんかならなきゃ良かった」
と言った時にくるみが1歩引くというより、身体を後ろに下げるという直接的な描写がある。
自分のことを初めて友達と呼び仲良くしてくれた東ゆうが「友達にならなきゃ良かった」と言うのはかなりキツいものがある。
ここでくるみの精神状態について考えれることは、東ゆうの思い通りに、理想的なアイドルとしての行動が出来なければ「自分も友達にならなきゃ良かった」と言われることを恐れて距離を取ろうとする、だと思う。
実際にその事が分かるようにくるみが身体を後ろに引く動きをしている。
そしてこの後にロケバス内で言いすぎたことを亀井に謝る東ゆうのカットがある。
その際の座席位置は
北 西
南
東はロケバスに乗ってきたばかりなのでどこに座るのか分からないが恐らく南の隣だろう。
西(くるみ)は前述した通り、東ゆうから距離をとるために隣の席から1人席に座り
北(亀井)は視線の決して合わない後ろに座っている。
そして1番この中で精神的にも立場的にも大人な南(華鳥)が東の横になるだろう。
このロケバス内の座席位置でこのようなキャラの精神状態を表現しているかどうかは実際のところ明言はされていないので憶測に過ぎないが、筆者はそのような意図で座席位置を変えているのではないかと考えている。
東ゆうという女が好きすぎる話
筆者はトラペジウムを見て1番好きになったキャラクターは東ゆうだ。
何故なら単純に努力し続けてる女の子が好きだからだ。それ以外に理由をいくつか上げるのであれば
・貪欲さがあり諦めが悪い
・歯に衣着せぬ物言い
・表裏がなく基本的に一貫してる(目的は話してないが)
こんなところだろうか。
オーディションに落ち続けても諦めずに突き進む姿勢がかなり好きで、オーディションという最短ルートがあるにも関わらずオーディションじゃ自分はアイドルになれないから東西南北でアイドルグループを作って計画的に話題性を作り、スカウトされるというなんとも緻密なのか緻密じゃないのか怪しいラインで計画を立てている小賢しさが好きなのだ。だからこそ巷で「サイコパス」などという広義な言葉で括られ酷評されているこの作品に対する感想の現状が気に入らない。
例えばこの主人公、普通に顔が良いのだ。なのに何故かSNSを始めても他の3人ほど伸びない。何故なら自分より顔が良く受けの良い3人を連れてきているからなのだ。そんな微妙に抜けている計算違いが起こすアクションに見応えがあると思っている。
東ゆうの好きなセリフがある
「アイドルという称号は私の手からするりと逃げていった」
普通は「するりと落ちていった」=自分に実力がないから落ちてしまった...そんな意味合いで言うようなセリフの1文なのに、この東ゆうという少女は自分に絶対的な自信があり努力人間なので、自分がアイドルに相応しいと本気で思っているのだ。だから「逃げていった(逃げられた)」というセリフになるのだろう。
東ゆうは自己肯定感も高く、努力を怠らない努力人間で、信じたモノを信じ抜き、憧れを夢を現実にする力を持ってる最強人間だと筆者は思う。
最強人間なんだが、この東ゆうとかいうキャラクターは人間味が溢れすぎているのだ。
どういうことかと言うと、東ゆうはちゃんと泣くのだ。悔しかったり嫌なことがあったとき、自分の思い通りにならなかったとき泣くのだ。
けど人前では決して泣かない意志の強さを持っている。
人前では冷酷さを感じさせる言動をしているくせに裏じゃ冷酷さを一切感じさせず泣くのだ。
筆者はそんな人間味溢れる東ゆうというキャラクターが大好きなのだ。
終盤の辺りで東ゆうが母親に
「私って嫌な奴だよね...」と言い
母親は
「ゆうは良い子だよ。良いところも悪いところもゆうらしいよ。」
と返答するシーンがある。
ここが1番好きまであるシーンだ。(全部好きなのだが)
この作品は東ゆうの全てを全肯定するのではなく、良いところも悪いところもあるのが人間で、そんな人間味溢れる東ゆうが東西南北を集めグループを結成し、すれ違い崩壊し、新しくそれぞれの道を歩む話なのだ。
気づいた細かいところ
これ以上書くと書き終わらない気がしたので、箇条書きで気づいたことを書いていく。
多少思ったことを書いてる部分もある。
・アリが入った味噌汁を捨てるシーンのセリフ「水死って苦しいよな」
・お城でのTV局取材後の帰り道の際に、既に亀井のバッグに彼氏とのキーホルダーが付いてる。
・亀井美嘉は作中でほとんど「ありがとう」と言ってない
常に謝ってばかりでネガティブ思考が読み取れる
・スタジオ収録の際に楽屋に入るが、くるみのみは部屋の椅子に座ってる 他の3人は「芸能人みたい」と言いながら鏡を見ている
くるみが芸能人などに興味が無い表れ
最後に
最後に少しだけこの作品の総括をさせて欲しい。
自分なりの総括で解釈だがこのトラペジウムという作品は
失敗した思い出や経験を後悔するのではなく、そんな失敗たちを糧に次に進む糧に、成長する材料にして進化して前に進む
そんな話だったと思う。
トラペジウムはアイドル作品の類ではあるが決してアイドルアニメではない。アイドルをした経験を通して東西南北の4人が成長し、己の道を進むアニメなのだ。
余談だがパンフレットに最後の4人が8年後と書いていた。
亀井美嘉は東ゆうと同い年で尚且つ8年後に6歳の子供がいるという事は...(妙だな...)
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