妊婦になっても、ブリンブリンでゴッリゴリな自分になりたい私。
鏡の前に立つと、ガチ妊婦体型の私と出会う。
女性の美しさと聞かれたら「くびれ」や「フラットなお腹」だと思い込んでいた私にとって、妊婦さんになるということは美の基準からも、女からも遠ざかることに近い。
最初はそんな自分を受け入れられず、物珍しくも感じていた。
自分の身体なのに、自分ではない様な違和感。
そして何より、無事赤ちゃんを産むことが出来るのか自信がなかったから怖かった。
でも最近、私がコントロールしたくても、そんなことは不可能だと思えるほど、お腹は大きく迫り出し、成長する赤ちゃんの様子を胎動を通じて感じている。
先日、お母さんのお腹の中にいた時の記憶を持つ(胎動記憶)子供達に関する本を読んだ。
胎動記憶を持つ子供たちが言うには、赤ちゃんは「お母さんを選んで産まれてくる」らしい。
しかも、子供たちはこぞって言う。
「お母さんを幸せにするために産まれてきた」
嘘か本当かはわからない。
しかし、「産んでくれって誰も頼んでねぇし!!」と、罵声を浴びせられる日が来ることにビビり、「ちゃんと」お母さんしなくちゃいけないとプレッシャーを感じまくっていた私にとって、これほど力強いメッセージはなかった。
「お腹の赤ちゃんに何かあったらどうしよう!」
妊娠してからというもの、口にする物、身に付ける物、家事や仕事、運動など、自分の行動や選択、全てがずっと不安だった。
でも、赤ちゃんは私を幸せにするため、私を選んでお腹に来たと思ったら、気がとても楽になった。
赤ちゃんは私を幸せにするために産まれてくるのであれば、「もしも」に怯えて、不幸になっている場合ではない。
この子のためにも、今を楽しまなくてどうするんだ!!!
不安になる度に「俺はやる!」という底知れぬ自信と力強いパワーをお腹の中の赤ちゃんから感じていた私は信じることにした。
気のせいかも知れないし、一体なにを「やる!」つもりなのかはわからない。
でも、何があっても、この子は大丈夫。
そして、私も大丈夫なんだ!
そんなコミュニケーション(妄想)をしていくうちに、やっと安心してお腹の赤ちゃんを愛でることが出来るようになってきた。
そして、妊婦体型の自分も好きになった時、
「せっかくなら、今しかないこの奇妙奇天烈な体型を楽しもう!」
そんな気持ちが湧いてきた。
私が今、着たいのは、「ドヤさ!」と言わんばかりのド派手な服。
鮮やかなブルー、パープル、レッド、イエローなどのゴリッゴリの原色のワンピース。
大きなフープピアスやブレスレットをジャラジャラさせて、腹を敢えて強調するようなファッションにも挑戦したい。
しかし、今の体型では普通サイズの服が入らない。
そう思った私は、マタニティファッションサイトを見漁る日々を過ごすことになった。
しかし、どのマタニティウェアもグレー、くすみピンク、黒、茶、紺、白。
淡いパステルカラーばかり。
そんな薄らぼんやりした洋服に身を包み、自分のお腹を嬉しそうに撫でる「ママ」モデルたちのマタニティウェアを見つめながら、引いている自分がいた。
これは、そうだ。
まさにアレだ。
モテ服というカテゴリーにゴリッゴリの原色、威圧系ファッションが入らないことと同じ、
婚活時の制服(モテ服)の恐怖の再来。
モテたかったら「ふわっ、ゆるっ、キラッ」を意識したファッションをしろと婚活アドバイザーに忠告され、薄らぼんやりしたモテ服で婚活していた日々を思い出した私は身震いした。
私は異性にモテたくてオシャレがしたい訳でもないし(そもそも妊婦になった途端、恋愛や性の対象から除外される)、「妊婦」を強調したいわけでもない。
そもそも、この腹を抱えて外出できるのは、近所のスーパーかカフェくらいなのだ。
わざわざオシャレして出掛ける場所も機会もないが、だからこそ、ゴリッゴリの原色で今の私のカラダを楽しみたいと思った。
だって今、わたし史上、ものすごいビッグバンを起こそうとしているんだから。
身体も心も思うように動けないけど、今しかないこの時を、ファッションで表現して日々を少しでも楽しく過ごしたいと思った。
しかし、私が求めるファッションは「マタニティウェア」というカテゴリーで検索しても見つからず。
そこで思い出すのは、デザインもサイズ展開もバラエティ豊かなあのお店。
私は「マタニティ」という枠から自分を解放させ、サイズ展開豊富、かつリーズナブルなH&M、そしてZARAへ向かった。
身長170センチ。
モデルでも、なんでもない私の体型とお財布に優しい海外ファストブランドは、カラーもデザインも豊富。
「一体誰が、どこで着るの? 」的なものが売られていてテンションが上がる。
ブリンブリンでゴッリゴリ。
女全開の洋服や、ハロウィンでも着られないランドマークになるようなド派手な服を思う存分購入して家路に着いた。
今の体型は胸よりお腹の方が大きく、巨大化したお尻からはオナラが、口からはゲップが勝手に放出される。
立つ時は恥骨痛に悩みながら「よっこらしょ」とネイティブで言うし、歩くとすぐに動悸と息切れを起こし、額からは汗が吹き出している。
そんな私は側から見たらガチ妊婦。
だけど、わたしは私のため、赤ちゃんのためにも、今日もゴリッゴリな自分を表現して、楽しい時間を過ごそうと思う。
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