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ザックスナイダー版ジャスティスリーグ:ジャスティスリーグが成立する瞬間とは

 ザックスナイダー版ジャスティスリーグ(以下ザック版)が日本でも公開された.これは長年のザック版を待ち望んでいたDCEUのファンにとっては長年待ち望んでいた祭りであり,すでに本国の方でも一定の評価を受けている.

 じつは私は先んじてザック版を見ていたりする.そして日本でも公開されているころだと思うので,レビューを書こうと思った次第である.

 で,結論から言うと....うーん,ザックスナイダー!!!!っていう感じでした.

 そうこの映画,なんといってもものすごくザックスナイダーのDCEU映画なのである.要するに「ザックスナイダーのファンは大喜びするが,原作ファンは相変わらずブチギレちゃう」っていうもうMOSやBVSの時からなんもかわってねぇ~!!というなんだか逆に安心感すらある作りの映画なのでした.

 もちろん,映画として「ザックスナイダーのファンを喜ばせる」というこの映画を公開する最大の目的は達成している.一方で(ある意味MOS)の時からそうだがこの映画がジャスティスリーグとその作品の名前を関する必要性が一切感じられなかった.といってもこれは別にザック版だけではなく,ジョスウィドウ版ジャスティスリーグ(ジョス版)でも同じことが言える.ではななぜ両作品が互いにジャスティスリーグという名前を背負いながらもジャスティスリーグという存在になりえなかったのか.これを紐解こうと思う.

 そもそもジャスティスリーグとはなんなのか? ジャスティスリーグとはDCコミックスで初めて現れたヒーローチームのことであり,アベンジャーズの元ネタともいえる歴史的にも重要なチームなのである.そして彼らが結手した目的は昔から一貫している.それはヒーローが互いに助け合い協力することでより多くの人々を助けるということなのだ.そのような組織であるからこそ,どんな危機(CRISIS)でもヒーローたちは希望を保ち,個々のヒーローで話しえなかった魅力を発揮していくのだ. 

 そういったジャスティスリーグのこととを踏まえると,ザック版とジョス版は両方とも,致命的な欠陥を抱えている.実はこの映画大筋としてはジョス版と話の流れは完全に同じであり,至る結末も同じなのである.それでもこの二つの映画を見たときに受ける印象は大きく異なる.それでも両作品が違うと感じられる点はまさにそこにあると考える.

 そしてその欠点というのがザック版は人を助けることを,ジョスは協力することを完全に放棄してしまったのである.その結果,両作品ともおざなりになっているキャラクターが必ずいるのである.ジョス版ならサイボーグ,ザック版ならスーパーマンといった形だ.そして欠けているもの放置し続けた結果,一番大きな差異が現れたのはステッペンウルフとの最終決戦での描写の仕方である.

 ジョス版は確かに人を助けるシーンが追加され,よりヒーローものとしてはしっかりとしたものとなった.一方でほとんど各ヒーローがバラバラに戦ったり,人を救ったりと一緒に戦っているように見えて,実際のところでは個々のキャラクターが好き勝手している状態が続いていた.特に批判されてしかるべきなのはスーパーマンを活躍させ過ぎたことであろう.確かにスーパーマンは人を助けることを優先する.そこはまちがっていない.しかし,同時にスーパーマンができることを最大限に発揮したおかげでステッペンウルフとの決着もスーパーマンが決めてしまったせいで,他のヒーローたちが非常におざなりであり,一般的な視聴者に「これスーパーマン以外必要ないよね?」という根本的な疑問にぶち当たらせるというチームモノとして明確に失敗してしまっているのである.

 ザック版でのレイフィッシャーのサイボーグは前評判通り,ザック版において彼は作品の中心的な人物ではあった.内面描写も多く他のキャラクターよりも人物像がぼやけずに描写されており,この映画の中で最も重要なキャラクターは間違いなく彼である.その点においてレイフィッシャーがジョスウィドウ版に対して怒りを抱いていたのは当然であると考える.そしてなによりも彼の怒りがチームを結束させる起点として機能している描写もなされていた.特に最終決戦でのワンダーウーマンやアクアマンの連携シーン,バットマンの援護,フラッシュの超高速での全体的な支援など役回りがしっかりとキャラ付けに反映しており,ステッペンウルフとの戦闘シーンはDCEU全体で見ても個々のキャラクターの戦いにおける魅力がとてもよく引き立てられている.しかし人を助けるといったシーンはザック版では皆無である.その結果が特に反映されたのはサイボーグを救出するスーパーマンのシーンだ.ここはジョス版ではシームレスにスーパーマンがサイボーグを助けるのだが,ザック版のスーパーマンはステッペンウルフを殺すことのみに注力してしまった結果,文字通り世界を滅ぼしてしまったのだ.(そしてそのしりぬぐいをフラッシュが行ったという)更に,明らかに人がいたであろう街中なのに一切そういう周りの人間とかを気にせずドンパチと破壊行動を繰り返していたのはどう考えてもヒーローものとして明確に失敗しているのだ.

 むろんそれ以外でも両作品においてクオリティ面で雑な部分が多々あったことも魅力的な部分があったことも事実である.例えばザックなんかは不必要にキャラクターを改悪しているが,戦闘やキャラの登場のさせ方は非常にかっこよくしている.ジョスは脚本の面で改悪しているが,キャラクター同士の掛け合いは原作と近しいものを感じられたり,より人を助ける面においては優れていた.しかし,まずもって両作品ともジャスティスリーグである必要性という根本的な部分が抜けていたのだ.そしてその結果,原作ファンやザックファンは一々他の視聴者層に解説を求められる羽目になり,どちらもファンのみが喜び互いのファンが嫌い合うカルト映画としての需要以外満たせていないのだ.

 とまぁそんなわけなので相変わらず初心者やファンじゃない人にお勧めできないし,かといって別に原作既読者にもお勧めできるわけでもない.でもザックスナイダーに魅かれた人たちにとっては輝きを放つ映画なのであった・・・ じゃあジャスティスリーグで何見ればいいのってなるの? アニメのジャスティスリーグ見てください・・・・っていうオチになっちゃうのでした・・・・



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