
荒木経惟 / 空事―2004年写狂人日記(2005)
何故か、何もない。それとも悲しかったからかな。この年だけは飛行機雲は空を切り裂いた跡のように私には見えてくる。
全編モノクロで、数枚プロローグのような写真のあとに真っ赤なタイトルが現れる。
癌で乳房を片方失った女流歌人:宮田美乃里を中心に、空、花、市井の人々、愛猫チロ、そして空…荒木さんに撮られることを望み、交流を重ねて、生への活力が湧き上がり、そして燃え尽きる寸前の美しさが記録されています。時系列に連なる写真を通して、荒木さんの心象風景が痛いほどに伝わってくる。最後のワンショットには涙ぐんでしまった。
余談ですが、10代の頃と変わったなあと感じるのは、好みのタイプで、私は女好きな男性が好きです。女の子に優しくするのに照れがないから、こちらも自然と女になれて気楽なんですよね。で、荒木さんは天性の女好き(たらしではない)。被写体が心を許してしまうのもなんとなくわかる気がする。
また時折見返したい写真集です。