大島弓子のこと
学生の頃は古着屋さんの店長と仲が良くて、映画、音楽、文学、漫画、美術と、ファッションにまつわるカルチャー全般を教えてもらいました。
自分よりも20くらい年上の方だったので、同世代よりも少し上の年代のものに馴染みがあり、中でも大島弓子はすごく影響を受けた漫画家のひとりです。
GWに読み返したりして、やっぱり好きな漫画家だな、と。
愛しいと思う気持ちには尊重が含まれる。こういうことを誰にでも伝わるちょっといい言葉に置き換えられるところが詩的ですよね。
女性キャラには共感しがたい部分が多くてイライラしちゃうんですが、その分男性像は紳士で理想だなと思います。
たまに大島弓子は暗くていやだ、という人がいますが、ここで描かれる周囲との違和感は生まれ持ったものとされているのでわたしは一度もそう感じたことはありません(だいたい心底ネアカな人間なんてどれくらいいるんだろうか?誰だってネクラな楽天家、物事に対してシリアスな一面を持っているもんじゃない?)。
全体に薄暗くけしてハッピーな内容ではないのに不思議と浄化作用があるのは、社会との憤りや感情の高ぶりが外へほとばしるのではなく、自分の内面に向けられているから。そしてそこから得た一人きりの達観が世間に解放される瞬間は、いつ読んでも感動的です。他人にはわかりずらい複雑な部分を必要以上に見せたり理解を求めなくても世界とつながっていけるのか、と。
全16巻のこの選集、とくに第12巻は印象深い話が多いです。自分がホモであることに混乱する息子に語りかける言葉も優しくて好きですね。