
「肥えたニオイ」Feb 6,2025
久しぶりに被る帽子。これがいつからあるのか忘れてしまった。忘れてしまうほどの存在ということは誰かがプレゼントしてくれた場合が多い。母親だろうか。
「まぁこれで良いか、もうすでに間に合わない」
急いでいるのに間に合わない時がある。
これは遅刻と言うより寝坊なんだろうがもうこの際どうでもいい。今日ここ数年に一度の寒波がやって来ているからクローゼットの中を掻き回し発掘した、いつからあるのか分からない帽子をかぶる羽目になった。しかしまぁまぁ結構似合う。
今日は「この時間を目処に各々集まろう」と言う集合の仕方なので大丈夫だ。これでも早いくらいかも知れない。
玄関の扉をあけると冷気が顔の皮膚に突き刺さる。眼球にこんな突き刺さる冷気を当てたくない。玄関から一歩踏み出すまでに何かもう諦めというかもうどうしようもない気持ちになってしまう。
(書類をまとめる為に使う一本の針金で出来たクリップがあるでしょ?あれで結構厚めの書類を留めると、次そのクリップを使う際にその前に留めてあった書類よりも厚みがないとそのクリップは使い物にならない時のどうしようもなさ)
足を速め駅へと向かう。
家から駅までのルートが2つある。どちらもさほど距離は変わらないのだが信号の兼ね合いでいつもあまり歩かないルートで駅に向かうことになった。久しぶりに通る、一、二ヶ月ぶりか。
歩いていたら気絶しそうになった。
猛烈な臭いで。
思わず目をかっ開いてしまう。
凍える寒さを一蹴する激臭が一体どこから臭っているのか臭いの正体は何なんだろうか。何かネズミやイタチなんかの死体が腐っているのか?もしそうだとしたらこんな臭いになるだろうか、いや違うだろうな。もう少し違った肥えた臭いというか、尋常じゃない。
にしても臭いがキツすぎて空気を吸い込むことが出来ない。一旦ここから離れないと。
駅までの道中私の中で一つの答えに辿り着くが色々言うと場所が特定されそうなので控えておく。
肥えたニオイで思い出したとても面白い話を友人から聞いたのだが…本当に面白すぎて誰にも教えたくない。
今日歩いたあのルートはよっぽどのことがない限り当分歩かないだろう。もし今後あの道を歩いたとしたら気絶してしまうほどの激臭と共に友人から聞いた面白い話を思い出せるので悪くはないのかも知れない。