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#58.顧問の口癖(F/f) ※加筆


「梨紗、また背筋が曲がってるわ?何度言ったら分かるの。絵は線が命。猫背のままじゃ真っ直ぐな線は描けませんよ」

これは顧問の口癖。
私に対してだけ、毎日のように指摘されるもう何度も聞いて飽きたお小言だ。

私の名前は梨紗。14歳、中二。
市内の学校に通う何事も普通寄りな女の子。

部活は美術部に属していて、趣味程度のイラストが描ける位を目指している。

見た目の特徴は
肩下ほどの長さに生まれつき茶色が混じった黒髪、縛らないかポニーテール。普段はコンタクト、眼鏡姿の自分は好きじゃない。成績はクラスで見れば中の中。若干男性恐怖症の反動か、女の子同士のいちゃいちゃを好んで描く。残念ながら胸は控えめ。一言で言うなら地味系女子と言った所。えっちな事は好き。大人の階段は登っていない。彼氏ではないが幼なじみの男子が別の学校にいる。

その中でも最大の特徴は遠目でも私だとすぐに分かるこの、生粋の猫背。
歩いていても座っていてもいつでも腰より前に顔が垂れてしまうのだ。

だからさっきみたいに美術部の顧問には毎度毎度小言を言われてしまう。
でもこればかりはある種仕方ないと思ってるし、パッとした特徴も無い私のトレードマークならあまり治したくないとも思っている。

注意されてもその時だけ背を伸ばす。
それだけだ。

猫背なのは仕方がない。腹を括っている。

けど理由は一応あると言えばある。

それを端的に言うなれば、私は私生活の中で腰を軸に上体が空中に投げ出されてしまう時間がどうしてもあってしまうからだ。

これだけじゃほとんど意味がわからないと思うけど、この説明が一番最適なのだ。

今日ちょうど帰ったらそうなる予定。
嫌なんだけど。それを受けないと家に入れて貰えないから、仕方が無い。

ぶっちゃけおかんにはその事を忘れていてほしいとさえ思うし、性格悪い話、帰宅中に軽い事故でも遭ってくれないかな、と思う。

朝言われて今日一日ずっと憂鬱だった。
気分がそうならそりゃ猫背にもなる。
続きは学校から帰ってきてからだってさ。

帰らない訳には行かないし、どう遅く歩いても定刻の電車に乗れば定刻に着いてしまうのだから、逃げ道はほとんどない。
そう渋りつつ、私は家の前に帰り着いた。

おかんの車、ある。中にいる。はぁ。。
どう粘ってもここまでかと溜息混じりに引き戸をずらすとやっぱりおかんは忘れていなかった。

おかえり、よりも第一声が「来なさい」の出迎えは全国どこ探してもウチくらいじゃないかな。
こっちは気怠そうでもただいまって言ってんのに。

私の家の1階は玄関から基本どの部屋にも入れる構造で、左は仏間、前が階段で階段をよけて淡く曲がるとお風呂、隣にトイレ。右の手前のドアはリビングで奥がキッチンの間取りになっている。

あのまま不貞腐れてちゃ学校に遅刻するし、朝の約束にハイって言って出てきちゃったから。
おかんの圧にも逆らえない私はまずそのどの部屋にも行ける胸痛通路に掛けてある時計の下でお尻を出す様に言われる。
聞き間違えてない?もう1回言おうか。

お尻を出す。

中二だし恥ずかしいって勿論抵抗はするけど叶った事は記憶にない。

制服のスカートの裾から手を入れてショーツをお尻が見える分だけ下ろす。
見える分だけって言うのは脚の付け根の窪みに下ろしたショーツを食い込ませるイメージで十分合ってる。

あとは制服のスカートをお腹の前で束ねればハダカのお尻が出ちゃう訳で。

これ、すっごく嫌。

例えば来客者が来れば、お兄ちゃんが帰って来ようもんなら、私の背面は当然見られる。
ひとり掛け時計の麓に居て、お尻を1人で出していて、だから、その異常な光景に目を見開かれるだ。

晒されるのやだからって言ってもおかん曰く、この執行前のコーナータイムが効くって全然変えてくれなくて。

時間の関係で少しだけして終わった今朝から一日学校を経てどれぐらい赤みが薄まったかを知る為とも言うけど、別にココじゃなくてもいいと思う。

どうせこの後の本番もあるし。こんなとこで心臓バクバクさせて疲れたくないのが正直な所。

あと端的に恥ずかしいから嫌。

柱上部に付けてある時計の真下だから自分でちょくちょく上を向いて。10分経ったらキッチンで食器洗ってるおかんを呼ぶ。
おかーん、時間経ったーって感じで。

おかんは私の恐る恐るな声に気付くともっとハキハキ言いなさいって言うからイラッとするんだけど。
そのイライラはこれから直ぐ消されるって分かってる。

エプロンを外して食器洗いで元々折ってあった腕を更に2.3回まくって食卓の椅子をぜんぶ端っこに寄せておかんは手際よく準備。
私はテーブルに手を着く様に言われる。

踵に鉛でも着いてるかのような気乗らない重足でテーブルまで行ってその端に手を着く。

するとおかんに制服のスカートをたくし上げられてまとめて左手に収納。折角隠れたお尻はまた出されて決行の準備は殆ど完了。
おかんは右利きだから私の左側に立つ。

お尻がスースーする私は恥ずかしい思いをしながら何言か小言を聞くけど今朝の続きからだからお説教自体は短め。そして始まる。

「梨紗、いくよ」
おかんはそう言って右手は上げる。
私のお尻目掛けてそれを強めに振り下ろす。

バチッと音が鳴る。
私はきゃあっとお尻を引っ込めてしまう。
続けざまにバチッバチッと平手を喰らう私は我慢できずにもたもたと足踏みしながら小さくテーブルへ近付いて進む事を余儀なくされる。
足が前に行けば背は直立に近づく。

「お尻を突き出しなさい」
この言葉はこれから何度も言われるけど出来たらやってるよと思ってる。その内に腰だけグッと強制送還されて無理やり体勢を整えられて。
そして続くバチンバチン。

どんなに我慢しても3回連続でされると「うあっ」と漏れてしまう。
3発以上なんてザラだから私はほとんど呻きっぱなし。お尻の鳴る破裂音と私の痛がる声は呼応している状態。

せっかく10時間ほど経って薄まったお尻がまたピンクになる。
分かると思うがとてもつらいお仕置きだ。

お尻をさすったり庇ったり、両手をテーブルから離す事はウチではご法度とされる。それをしてしまうとそれもめっちゃ叱られてお仕置きの時間が長引く。
お説教も叩く数が増えるから、時間かかるはまぁそりゃそうだ。

そしてカウントも経過時間も容易く忘れる程度に痛くされるに至る。

私はお尻をぶたれる度に小さくジャンプしたりパタパタ足踏みしたり小躍りするのに必死。
洗濯物やらゴミ捨てやらで毎日鍛えてるおかんの腕力は本ッ当に痛くて。

情けないけど私はいつも泣いてしまうんだ。

さっきも言った。私もう中二。幼少期ならまだ受け入れられたかもしれない。でも今。下着まで下ろされてお尻を叩かれるなんてって何度思ったことか。こっちが良い歳ってのもわかってほしい。

私が悪いのは分かってるし罰を受けるのは仕方ない。そう思っていてもこのお仕置きばっかりはつくづく嫌。
しゃがみこんで立たされて、叱られて恥ずかしい所何回も叩かれてごめんなさいって言ってる自分が心底嫌なんだ。

立ったままお尻をうんと叩かれて泣きべそ状態の私。お尻は今朝以上に真っ赤っか。帰宅後は時間がたっぷりあるから嫌でもそうなる。

これで終われたら万々歳。
でもそうはいかないのがおかん。

私の左側から離れて端に寄せた椅子を一脚だけ持ってくる姿を霞んだ目で見つけると私はもうショックでショックで。

お仕置き中テーブルから手を離した、終わってないのに勝手にしゃがんだ、テーブルガタガタ揺らした、指示に従わない。そこら辺を指摘されて私はおかんの膝に招かれる。そう。

「梨紗、膝に乗りなさい」って。

数を増やすって言葉に私が弱いのを知っているおかんはそう言って膝を2度鳴らす、酷い親。
一喝でも二喝でもして私を奮い立たせると、一度スカートの被った赤のお尻はとぼとぼと引き寄せられる。

私は諦めずここでも懇願。拒否。招かれる。
泣く泣くおかんの右側に立つとおかんの右横膝に自分の太腿をピタッと貼り付け。
そしてお辞儀する様に頭を下げておかんの膝の上を滑り通過し、反対側の椅子の縁に両手を着く。
後は自分のお腹をおかんの両膝覆う様にベッタリ着地させて、最後に肘の力をゆっくりと抜く。手順だけなら簡単♪

これでお仕置きの準備は嫌でも完了だ。

そこからはちょっぴり楽。
もう自力で立っていなくていいんだもの。

スカートは再び捲られて腰ゴムの中に押し込められる。今度は重力があるからスカートはわざわざ抑えてなくても捲れ具合は保証される。

おかんの膝の上にうつ伏せで寝かされる間も執行中はお尻に触れる事は許されない。
そう確認を受けると私は今にも泣き出してしまいそうな声で「はい」を漏らすしかない。
その反抗は今までの頑張りを無にするだけ。

数が増えるのはもうやだ。
その一心で椅子の脚を握力検査の如く握りしめる。

同時並行でぴしゃぴしゃとおかんが落下地点の確認と練習。
そうして私の追加バツが再開する。

バチンッ バチンッ 「いいッ!」

私は始めから喘ぐ。
その前にたんと受けてるのだから仕方ないと言えば仕方ない。
続けられてあんあんと地を蹴る足をバタつかせる。
特別強い一発、言わばクリティカルヒットの時は両膝を曲げてグッと持ち上げる事も少なくはない。私「ああッ!!」

当然おかんからのお叱り。
余計なお説教やお仕置き理由が増えた。。

「〜 でしょ!←」
「〜 なの?←」
「〜 しなさい!←」
言い切りのタイミングでキツめに打たれて私は大悶絶。わなわな逃げたくて身体を捻っても腰はおかんに引き寄せられていて動かない。

「おとなしくしなさい」
連打される。
「ごめんなさい!」
バタつきがひどくなる。
「梨紗!」
「あぁんっ!」
椅子の脚から両手を離し遂にはおかんの膝にしがみついて泣き出した。
おかんは止まらない。

昔は床に付かなかった手足は小学生5年生の頃から着いていた。小4の頃でも指先とつま先を突っ張れば着いたかもしれないけど体勢の不安定には変わりない。

私はその歳以上になっているのにも関わらずこうしてお尻を叱られる。
低学年の頃にそっと仲のいい友達に聞いた事もあった。
「○○ちゃんのママって怒るとどうなる?」
その問いにいま私がされているような答えはひとつも無かった。
遊びに来た子にお仕置きが終わるのを待ってもらった時がある、3年生の夏の事だ。

「お尻が痛い」「もうやめて」「痛いよ。」
こんな恥ずかしい泣き言。大きくなれば簡単に耐えられると思っていたし、なんならされないとさえ思っていた。

小学校を卒業すればきっと。
あんなに切望していた中学一年生。
でも現実は違った。

「梨紗、手は?」
耐えられなかった。

分かってるよ。お尻庇っちゃダメなんだよね。
でもとてもとても痛いんだ。 涙が落ちる。

約束守れと横から場外へはたき落とされて。

そして再開。
バチッバチッとまたお尻に痛撃を受ける。
もう耐久性なんてものは無い。
きゃんきゃんと騒ぐ私はきっとご近所さんのお耳に届いている。
それでも私の上限は変わらない。MAXはMAX。
限界なもんは限界だから、こうなる。

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