S. J. Rozan (1950- ) S.J.ローザン『苦い祝宴(創元推理文庫)』直良和美訳 東京創元社 2004.1 『春を待つ谷間で(創元推理文庫)』2005.9 『天を映す早瀬(創元推理文庫)』2005.8 『冬そして夜(創元推理文庫)』2008.6 『夜の試写会(創元推理文庫)』2010.4
S. J. Rozan (1950- )
S.J.ローザン『苦い祝宴(創元推理文庫)』
直良和美訳 カバー 朝倉めぐみ
東京創元社 2004年1月刊
2009年9月23日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4488153062
「中華料理店で働く青年四人が、ある日突然揃って姿を消した。彼らが勤めていたのは、チャイナタウンの大物が経営する有名店。最近始められた組合活動に関して、店と対立があったらしいが、その程度のことで拉致されたり消されたりするはずもない。半ば強引に捜索の仕事を引き受けたリディアは、相次ぐ予想外の展開に翻弄される。“リディア・チン&ビル・スミス” シリーズ第五弾。」
「S・J・ローザン
アメリカの作家。1950年生まれ。様々な職業を経て、90年頃から書き始めたミステリで、ふたりの私立探偵、中国系女性のリディア・チンと白人男性のビル・スミスを生み出し、94年に発表した『チャイナタウン』を第一作とする長編や多くの中短編で活躍させている。『ピアノ・ソナタ』『天を映す早瀬』でシェイマス賞、『どこよりも冷たいところ』でアンソニー賞、『冬そして夜』でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長編賞を、「ペテン師ディランシー」でMWA最優秀短編賞を受賞するなど、現代を代表する私立探偵小説の書き手として高く評価されている。」
S. J. Rozan
http://sjrozan.net/
https://ja.wikipedia.org/wiki/S・J・ローザン
https://en.wikipedia.org/wiki/S._J._Rozan
現代私立探偵小説の旗手 S・J・ローザンの長編を読む
http://www.tsogen.co.jp/wadai/0401_01.html
S. J. Rozan (1950- )
A Bitter Feast (1998)
1998年に発表された、
ニュ−ヨークの私立探偵
リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ第5作。
2009年9月当時、
第8作 『冬そして夜』 Winter and Night (2002)
まで発表されていたので、
あと3冊楽しめるなぁ、
二人の関係は変化するのかなぁ、
などと思いながら読んでいました。
このシリーズは食事の描写が毎回美味しそうで、
犯罪の謎解き以上に、
何度も登場する食べ物の方が魅力的だったりします。
「ピーターはうなずいてポットを置き、もう暗記しているであろうメニューに丹念に目を通した。
ミスター・シェンがテーブルを訪れ、自ら獲ってきたといわんばかりの笑顔で新鮮な貝柱を薦める。そこで、お薦めに従い、併せてクレソンと腐乳(フウルウ)の炒め合わせも注文した。
店のサービスの揚げ麺や、揚げて唐辛子をまぶし一インチほどに切った干魚をつまんで、用件に入った。……
わたしは小さな干魚の先端を特製激辛ソースに浸し、考え込んだ。
料理が運ばれてきて、わたしは口をつぐんだ。
肉厚のシイタケで囲んだ白くつややかな貝柱の油炒め、
エメラルド色のクレソンを盛った皿、
いい匂いの湯気を立てる山盛りのご飯、
ピーターには中国産のビールと並べられていく。
わたしは貝柱とシイタケを頬張った。
なめらかで甘みのある貝柱が明るく広々とした大洋の潮の香りを、
歯ごたえのある分厚いシイタケが豊饒な黒い大地の味わいをもたらした。」p.29
「キャナル・ストリートに沿って連なる屋台のひとつで、
葱餅(ツオンビン)を四枚と鶏の照り焼きを買った。
わたしは恐怖が去り、早鐘のような鼓動が収まり、危険を察知して粟立った肌がもとに戻ると、常に猛烈な空腹感に襲われる。だが、そのためではないと胸のうちで言い張った。
鶏の照り焼きで額から拭った汗を補えるものではないし、
オフィスで懸命に呼吸を平常に戻そうとした努力と葱餅はなんら関係がない。たまたま昼食どきになったからだ。
「リディア、どうしたんだい? それはなに?」
「昼ご飯よ。お茶はあるかしら?」
ピーターはやかんを火にかけた。
わたしは葱餅の容器を開け、蓋をデスクのピーターの側に置いて二枚と半分を載せた。アルミの容器と葱餅の残り一枚半はこちら側に留まった。
わたしは間に合わせの皿にテイクアウト容器からご飯をよそい、醤油色に光る手羽を載せた。
「誰か変な人は訪ねてきた?」
「きみのほかに?」
わたしはパリッと焼けた塩味の葱餅を口に入れた。」p.94
『美味しんぼ』に出てきた葱餅を真似して作って食べたことがありますけど、ニューヨークのチャイナタウンの屋台で売っている葱餅(ツオンビン)と同じものでしょうか?
ツレヅレハナコ 2012年10月7日(日)
池袋「陳さん台湾料理教室(葱油餅)」
http://turehana.exblog.jp/19780005/
S.J.ローザン『春を待つ谷間で(創元推理文庫)』
直良和美訳 カバー 朝倉めぐみ
東京創元社 2005年9月刊
2009年11月2日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4488153070
「晩冬のある日、中年の私立探偵ビル・スミスは、いつもは休暇を過ごすために訪れる州北部の郡で、初めて仕事を引き受けた。イヴという女性の依頼は、自宅から盗まれた品物を取り戻すこと。だが調査を開始したとたん、彼は死体の発見者となり、家出少女捜しを頼まれ、何者かに襲われるはめに…。ビルとリディアがマンハッタンを離れて、複雑な事件と取り組む、シリーズ第六弾。」
「S・J・ローザン
アメリカの作家。1950年生まれ。様々な職業を経て、90年頃から書き始めたミステリで、ふたりの私立探偵、中国系女性のリディア・チンと白人男性のビル・スミスを生み出し、94年に発表した『チャイナタウン』を第一作とする長編や多くの中短編で活躍させている。『ピアノ・ソナタ』『天を映す早瀬』でシェイマス賞、『どこよりも冷たいところ』でアンソニー賞、『冬そして夜』でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長編賞を、「ペテン師ディランシー」でMWA最優秀短編賞を受賞するなど、現代を代表する私立探偵小説の書き手として高く評価されている。」
S. J. Rozan (1950- )
Stone Quarry (1999)
1999年に発表された、
ニュ−ヨークの私立探偵
リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ第6作。
今回の舞台はニューヨーク州北部。
物語の語り手はビル。
リディアの出番がちょっと少なめです。
「ステーキに卵、ホームフライ(さいの目に切ったジャガイモのフライ)、トースト、コーヒーをカウンターで注文した。
むさぼるように食べた。
牛や鶏のありがたみをしみじみと感じ、
脂肪と塩分に感謝の祈りを捧げながら。
こんがりと炒めてタマネギとコショウをまぶした
ホームフライは絶品だった。」p.399
「わたしは寒風の吹きすさぶ戸外からこぎれいで暖かな部屋に入った。
ハーブにガーリック、トマト、肉の複雑で濃厚な香りに包まれた。
「面倒なことになろうがなるまいが」 イヴは言った。
「ビーフシチューがあることに変わりはないわ。さあ、凝った料理ではないけれど、お腹はふくれるわよ」
凝ってはいなくとも、すばらしい味だった。
ニンジンやジャガイモ、タマネギ、トマトがつややかに光る。
かすかに酸味のあるどっしりしたパンに、
まろやかなバターがよく合った。」p.208
特別な料理ではない普通の食事の美味しそうな描写が
このシリーズの魅力のひとつです。
S.J.ローザン 『天を映す早瀬(創元推理文庫)』
直良和美訳 カバー 朝倉めぐみ 解説 坂木司
東京創元社 2005年8月刊
2009年12月10日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4488153089
「ニューヨークの私立探偵リディアと相棒のビルは、仕事で香港を訪れていた。依頼されたのは、形見の宝石を故人の孫である少年に渡すだけの簡単な仕事。初めての海外に、リディアは興奮を隠せない。だが、たどり着いた少年の家は何者かに荒らされ、少年は誘拐されていた。銃も持てず、探偵免許も通用しない異国の地で、ふたりが巻きこまれた事件の結末は? 人気シリーズ第7弾。」
S. J. Rozan (1950- )
Reflecting the Sky (2001)
2001年に発表された
私立探偵リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ第7作。
奇数作なので語り手はリディア、舞台は香港です。
2009年12月当時は、まだ
第8作 『冬そして夜』 Winter and Night (2002)
までしか翻訳が刊行されていなくて、
このシリーズも読んでいないのがあと一冊になってしまったなぁ、
次の『冬そして夜』を読むのが楽しみというか、
勿体ないというか、いつ読もうかなぁ、
などと思いながら読み終えたのでした。
「女は中華なべに材料を放り込み、じゅうじゅうと音を立てるなべをかき混ぜ、米飯を加えて炒めた。大きな丼ふたつに分け入れ、ソースをかけて運んでくる。
「これは、なんだい? いい匂いだ」
「葱と豆腐と白菜、それにグリーンピースの入ったチャーハンよ」
チャーハンを口に入れると、しょうゆの塩気とキノコのような深みのある味が広がった。
「ソースの材料はわからないわ」」p.170
「わたしも肉饅にかぶりつき、暖かい皮に包まれた、香辛料の効いた甘辛い肉を楽しんだ。」p.97
「丸ごと蒸してみじん切りのタカノツメを散らし、スパイスの効いた金茶色のソースをかけたカサゴ。その横には豚肉入りチャーハンと蒸した青菜。」p.434
「ここの海老の蒸し餃子と蒸した蟹は香港一の絶品だ。」p.489
「食事は野菜の餃子と牛肉の辛味炒め、しいたけの煮物、香り米。」p.497
今回も美味しそうな食事の描写が何度もあり楽しませてくれました。
S.J.ローザン『冬そして夜(創元推理文庫)』
直良和美訳 カバー 朝倉めぐみ 解説 山崎まどか
東京創元社 2008年6月刊
2010年1月3日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4488153097
「11月の深夜、警察署へ呼び出された私立探偵ビル・スミスは、甥のゲイリーと思わぬ再会を果たす。なぜニューヨークへ来たのか話さぬまま、再び姿を消した甥を捜すため、甥一家が住む町ワレンズタウンを訪れたビルと相棒のリディアは、アメリカン・フットボールの盛んな町が抱える歪みと醜聞に、否応なく直面するのだった。私立探偵小説シリーズ第8弾、MWA最優秀長編賞受賞作。」
S. J. Rozan (1950- )
Winter and Night (2002)
2002年に発表された、
ニュ−ヨークの私立探偵
Lydia Chin & Bill Smith Series
リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ第8作。
米国では2009年に
第9作 The Shanghai Moon
が発表されていましたが、
2010年1月当時、日本語訳は今のところ本書が最新作でした。
第6作『春を待つ谷間』
と同様にビルが語り手で、
彼の生い立ちが語られますから、
ビルのファンには本書は必読でしょう。
「ショーティーが棚からメーカーズマークを下ろし、
氷を入れたグラスに注ぐ。
「興味深い事実が出てきたんだ」
ウェイトレスのケイトリンがやってきたので、口をつぐんだ。
ケイトリンはショーティーがリディアのために寄越した、
ライムが三切れ入った炭酸水をギネスのコースターの上にきっちり載せ、
ナプキンでくるんだナイフとフォークをそれぞれの左に置く。
わたしはベーコンバーガー、
リディアはシーザースサラダを注文。」p.207
ビルは自宅でもメーカーズマークを飲んでいます。
私も大好きなバーボンですけど、もう二十年以上飲んでいないなあ。
S.J.ローザン『夜の試写会(創元推理文庫)』
直良和美訳 解説 池上冬樹 カバー 朝倉めぐみ
東京創元社 2010年4月刊
2010年5月23日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4488153100
「対照的なふたりの探偵、リディア・チンとビル・スミスが行き会う事件の数々。MWA賞受賞作ほか全7編を収録した、現代最高の私立探偵小説シリーズ、日本オリジナル短編集。」
「中国系女性のリディアと、中年の白人男性ビル。対照的なふたりの私立探偵の活躍を収めた、日本オリジナル短編集。ふたりが協力して殺人の容疑者を罠にかける「夜の試写会」、リディアと詐欺師のやり取りを描くMWA最優秀短編賞受賞作「ペテン師ディランシー」、ビルが高校生バスケットボール選手の死を探る「ただ一度のチャンス」など、現代私立探偵小説の粋、全7編を収録。」
米国で1992〜2001年に発表された7作品による
私立探偵リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ
日本オリジナル短篇集。
発表済短篇全14作品の半数を収録。
リディアが語り手の物語が4篇、
ビルが3篇。
二人とも登場するのはその内2篇。
収録作
「夜の試写会」
「熱き想い」
「ペテン師ディランシー」
「ただ一度のチャンス」
「天の与えしもの」
「人でなし」
「虎の尾を踏む者」
これまでに翻訳された長篇8作品と同様に、
美味しそうな食べ物が随所に登場しました。
「ビルと、シュウマイを前にして二、三の点を話し合った。エビの塩気と豚ひき肉の旨みを堪能する傍ら、依頼人の要望と法の遵守をいかに両立させるかについて議論した。」
p.315「虎の尾を踏む者」
著者のウェブサイト http://sjrozan.net/ を見ると、
米国では2011年9月に長篇第11作 Ghost Hero が刊行されているので、
早く日本語訳が出版されないかなぁ。
追記
S.J.ローザン 『ゴースト・ヒーロー(創元推理文庫)』
東京創元社 2014年7月刊
2014年9月8日読了
読書メーター S.J.ローザンの本棚(長篇12冊・短篇集2冊 刊行年順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091271
ミステリの本棚(登録冊数355冊 著者名五十音順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091193
https://note.com/fe1955/n/n0204b24b491f
S. J. Rozan (1950- )
S.J.ローザン
『チャイナタウン (創元推理文庫)』直良和美訳 東京創元社 1997.11
『ピアノ・ソナタ (創元推理文庫)』1998.12
『新生の街 (創元推理文庫))』2000.4
『どこよりも冷たいところ (創元推理文庫)』2002.6
https://note.com/fe1955/n/n60bf9583961a
Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18)
ロバート・B・パーカー
『ゴッドウルフの行方』菊池光訳 早川書房 1984.10
『誘拐』飯島永昭訳 立風書房 1980.10
『誘拐』菊池光訳 早川書房 1989.2
『失投』飯島永昭訳 立風書房 1977.3
『失投』菊池光訳 早川書房 1985.10
https://note.com/fe1955/n/n6ed20bab5a3b
Robert B. Parker (1932.9.17-2010.1.18)
ロバート・B・パーカー
『約束の地』菊池光訳 早川書房 1978.8
『ユダの山羊』菊池光訳 早川書房 1979.9
『レイチェル・ウォレスを捜せ』菊池光訳 早川書房 1981.12
『初秋』菊池光訳 早川書房 1982.9
https://note.com/fe1955/n/na6b78450f7c1
Dick Francis (1920.10.31-2010.2.14)
ディック・フランシス
第二作『度胸 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.7
第四作『大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.4
第五作『飛越 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』菊池光訳 早川書房 1976.9
山本一生「D・フランシスの究極のミステリー」
『書斎の競馬学 』
平凡社新書 2008.12
https://note.com/fe1955/n/n704a9c240bcb
Dick Francis (1920.10.31-2010.2.14)
ディック・フランシス
『横断 (ハヤカワ・ノヴェルズ)』
菊池光訳 早川書房 1989.11
Conan Doyle (1859.5.22-1930.7.7)
コナン・ドイル
『回想のシャーロック・ホームズ 新訳版(創元推理文庫)』
深町眞理子訳 東京創元社 2010.7
小池滋先生(1931.7.15- )
小野二郎(1929.8.18-1982.4.26)
https://note.com/fe1955/n/nd41726da27bb
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
『快楽としてのミステリー(ちくま文庫)』 筑摩書房 2012.11
https://note.com/fe1955/n/nf236daad7399
福永武彦・中村真一郎・丸谷才一
『決定版 深夜の散歩 ミステリの愉しみ』講談社 1978.6
https://note.com/fe1955/n/n26e000989c48
福永武彦・中村真一郎・丸谷才一
『深夜の散歩 ミステリの愉しみ(創元推理文庫)』東京創元社 2019.10