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夢は叶わない 3年 渡井翔琉

何万人もの観客が入った大きなスタジアム。
ミドルシュートを決め、耳が痛くなるほどの歓声と共に会場が揺れる。

目が覚めると、ゴールを決めていたのは夢の中の自分だった事に気付く。
あぁ、また夢か。と少し萎えるのと同時に、"よし頑張ろう"という感情が湧き、一日が始まる。

自然なものだ。

調子良くプレーできた日、
酷いプレーが続いた日、
オフでサッカーをしなかった日、
怪我、病気でサッカーができなった日。

どんな1日でも、目を瞑り眠りにつけば、夢に出てきてしまう。

この先立ちたい景色、味わいたい瞬間、叶えたい夢が自然と浮かんでくるのだ。


それが私にとってのサッカー。
自分がやりたいからやっていて、そんな想像に毎日少しでも近づきたいと、自分が思うから今日も走っている。
上を目指しているのだ。


その為に練習して練習して、失敗して、また練習して、できなかった事がようやくできるようになる。

この作業の繰り返し。

確かに大変だけど、できるようになるのは、成長できるのは心地が良い。
だから、「成長実感」という言葉があるように、成長の実感は大切にしている。
そうすれば、成長したいっていう根本的な欲求にもっと向き合えるから。
(もちろん、実感する事が最終地点ではない)


それでも、いつも前に進めている事を実感できる訳ではない。


去年の5月、リーグ戦に途中出場した私は試合終盤に怪我をしてしまった。
膝の靭帯の怪我。
痛みで帰り道、電車の乗り換えが大変だったのをよく覚えている。

後日、病院で全治1〜2ヶ月ほどと診断結果が出た。
あの時ああしてれば、こうしてればとよかった。という後ろ向きな思考が止まらない。
歩くたびに痛みを感じては、ため息を吐いていた。

とはいえ、いつまでも落ち込んではいられないので、そんなマイナス思考、悔しさ、苦しみをまとめてリハビリへの活力に当てる。

悔しいを悔しいのまま終わらせてしまうのは、勿体無いと思うから。
2ヶ月、自分なりに精一杯リハビリに取り組んだ。


しかし、予定していた2ヶ月を過ぎても、膝の痛みが一向に無くならない。
再度病院に向かい、注射を打ってもらったりもしたが、膝の痛みに変化はない。
そんな時に喘息の発作が始まったりして、家から出ることができないなんて期間もあった。

成長の実感なんてちっともない。
体重は減って筋肉は落ちて、体力も落ちただろうし前に進むどころか後ろに戻ってるじゃん。
なんて今じゃ過去の話だけど、その時は先の見えないあの感じが、なんか怖かった。

こんな気持ちは初めてで、
小学校の頃の死ぬほど走らせてくるコーチに対しての怖い、とかなにか難しいことに挑戦する時の怖気付く感じとはちょっと違う、

頑張りたいのに、頑張れない。
どうすれば良いのかわからない感じ。
(なんとなくわかってくれる人がいたら嬉しい)
そんな情けない自分に憤りを感じた。


それでも、答えはどこか他の場所にある訳でもなく、自分の中にある訳で、

やっぱり私は試合を見てれば胸が高鳴るし、自分がプレーしている姿を想像してしまう。


どんな悩みが出てきても、情熱の源泉を思い出すことができれば大丈夫。
そこにどんな言い訳も必要ないということに気付けたのだ。


また、非常にありがたいことに、そんな時に私のことを支えてくれる人がいて、
家族はもちろん、地元に帰れば友達が、「早く治るといいね」なんて言葉をかけてくれたり、チームメイトのみんなにも助けられた。

中山(3年/中山昂大)なんかは、会う度に
「だいじょぶだよ、いつか治るっしょ。」
なんて軽く声をかけてくれてたけど、たくさんの怪我を乗り越えてるからか、その言葉にはどこか温かさと少しの重みを感じた。支えになりました。ありがとう、笑

ようやく復帰できた時も、
「おかえり」、「おめでとう」なんて言葉をかけてくれる人もいた。
ひろと(3年/前田宙杜)なんて、復帰戦の練習試合で俺がゴールを決めた時に、めっちゃでかい声で「おかえりー!」って叫んでくれたね。

心から、嬉しかった。

それだけじゃない。
友達に普段の会話の中で「がんばってね、期待してる。」なんて言われたり、
去年ブログを書いた時も、「ブログ読んだ、応援してるよ」と報告してくれる人がいたり、
試合で調子が悪かった日でさえも、「お疲れ様、スタメンおめでとう」なんて声をかけてくれた。

そんな言葉に背中押されると共に、感動する。

自分がやりたくてやっているサッカーなのに、こんなにも人からの支えを感じられるのかと。
これほど幸せな事はない。
私が感じるこの繋がりのようなものは、決して当たり前なものじゃないし、これからも大切に感じていたい。


ただ1人、私1人の夢だが、決して孤独な夢ではないと分かった。

そして、どんな夢も孤独ではないと思った。

それを知ったから、もっともっと頑張れる。
どこまでも登って行ける。


でも、私の場合、今の夢に手が届く頃にはまた遠い夢ができてると思うし、そういう意味では私が理想に辿り着くことは永遠にないんじゃないかなって思う。


だから、これからも夢は叶わない。

というか、夢を叶え続ける。

というより、夢を追い続ける。


そうやってこれからも成長を噛み締めながら、夢を追い続けていきたい。


これが私にとってのサッカー。
自分がやりたいからやっていて、そんな想像に毎日少しでも近づきたいと、自分が思うから、走っている。

今日も明日も、上を目指している。



次回のブログは、チームのみんなを暖かく支えてくれるマネージャーの吉澤壮太です!お楽しみに!

東洋大学体育会サッカー部 3年 渡井翔琉

渡井翔琉(わたい・かける)2002年5月1日生まれ
夏見FC→ジェフユナイデット市原・千葉U-15→ジェフユナイデット市原・千葉U-18

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