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信頼されるセンターバックを目指して#FC今治でプレーする 竹内悠力

大卒ルーキーとして開幕戦からベンチ入りを続けると、第9節・テゲバジャーロ宮崎戦でプロデビュー。続くヴァンラーレ八戸戦では初先発で完封勝利に貢献したセンターバックの竹内悠力選手。トレーニングから多くのことを学び、吸収しながらサッカーに打ち込む日々の先には、FC今治のディフェンスを引っ張っていくプレーヤーになるという目標があります。


▼プロフィール
たけうち・ゆうり
2001年9月29日生まれ、兵庫県出身。182㎝、76㎏。利き足は右。DF。背番号24。
日生中央SC(兵庫県)→東谷中(兵庫県)→神戸弘陵学園(兵庫県)→日本文理大学(大分県)

■学べることがたくさんある

開幕戦からベンチ入りを続けて、第9節・テゲバジャーロ宮崎戦の終盤に途中出場してプロデビュー。続く第10節・ヴァンラーレ八戸戦で、初先発を果たしました。センターバックとして、プレシーズンから手応えを感じていましたか?

開幕前、最後の練習試合(対戦相手、結果とも非公表)の直前にけが人が出て、急きょ自分がスタメンで出ることになったんです。そこで自分のパフォーマンスを出せたので、ある程度はやれる感覚を持ってシーズンに入りました。

自分はディフェンスの選手ですから、ベンチに入っても試合中に代わることはあまりないかもしれません。ですが、出場のチャンスが近くにあるのは間違いないし、いつ、出番が来てもいいように、しっかり準備してきたつもりです。

日々の準備で、何を意識していましたか?

毎日のトレーニングで自分の特徴を出し切れているかというと、まだまだな部分もあります。だから、そこをしっかり出して自分がどういうプレーをするのか知ってもらうことと、しっかり声を出すことの二つです。

センターバックは右でも左でも、どちらでも大丈夫です。両足でしっかりボールを蹴れるのは自分の一つの武器だと思うので、その精度をさらに高めていきたいです。

利き足とは逆の、左足がうまくなるきっかけは?

高校のとき、特に深い意味もなく左足で蹴る練習をしていたんですよ。『左足も使えるようになったら、プレーの選択肢も増えるだろう』と全体練習が終わった後、チームメートとひたすら蹴っていたら、いつの間にか蹴れるようになっていました(笑)。

開幕からベンチ入りをする中で、どういう刺激がありましたか?

開幕戦はプロになって初めての公式戦で、自分もベンチ入りしたので、やっぱりインパクトがありましたね。ベンチから試合を見ていて、『練習と試合とで、ここまでプレースピードが変わるんだ』と驚きでした。

公式戦は試合前のロッカールームから、みんなのギアがグッと上がるのを感じます。『この試合に勝たなければならない』という気持ちが本当にすごい。

それこそプレースピード、緊張感が全然、違います。試合に出ているセンターバックがどういうプレーをしているのか、監督やコーチがどういうことを求めているのか。しっかり見るようにしてきました。その中で、『自分も、こうプレーすればいいのかな』と、学ぶこともたくさんあります。

プロデビューの宮崎戦は試合の終盤、4バックから3バックに切り替えて勝ち切るための途中出場、プロ初先発の八戸戦でも球際の強さを発揮して連勝に貢献しました。

宮崎戦は短い時間ではありましたが、しっかり試合に入れたと思います。連戦の八戸戦は初スタメンということもあってか、少し動きが堅かったかもしれません。トラップでうまくボールをコントロールし切れず、『あれ? 俺、緊張しているのかな?』とも思いました。でも、『ビビッてチャレンジしないまま終わりたくない』と気持ちを切り替えた結果、最低限の仕事はできたのかなと思います。

■プロに近づくために

八戸戦では、センターバックでコンビを組んだ市原亮太選手の良いサポートを受けながらのプレーにもなりましたね。

八戸は前線に外国人アタッカーがいて、一発のカウンターを狙っているところもありました。だからチャレンジ&カバーを意識して、亮太くんが後ろにいてくれるので、僕も思い切ってプレーできました。

試合の終盤はセットプレーやクロスから、かなり危ない場面も作られましたが、『ここでやられたら意味がない』と体を張って守りました。最後はフタさん(二見宏志選手)も入ってきて、対人の強さやはじき返す力が増して、守り切る戦い方がはっきりしたと思います。フタさん、頼もしかったですね。

宮崎戦、八戸戦と連勝して、チームは再び勢いに乗るきっかけを得ました。

自分としては、回ってきたチャンスをここでつかみ取れなかったら、監督の信頼を裏切ることになると思って、持っているものすべてを出し切ろうと臨みました。最低限の仕事ができたのは良かったです。

試合に出ることで、いろいろ課題も見えてきます。その一つがビルドアップのときのパスの質、精度ですね。日頃の練習から、もっとこだわる必要があると感じています。

ビルドアップができるのは大前提です。その上で違いを見せていかないといけない。『こいつが試合に出たらボールがスムーズに動くな』『うまく攻撃できるな』と周りから認められるくらいじゃないと、プロでは通用しないと思うので、そういうレベルになれるようにがんばっています。

今シーズン、九州の日本文理大からFC今治に加入し、Jリーガーになる夢を実現させました。プロになるタイミングとしては、高校を出るときもあったと思います。

高校のときは、Jクラブへの練習参加は全くしませんでした。ただ、同級生の田平起也選手(現水戸ホーリーホック)が高校を出てJ1のセレッソ大阪に加入して、それを間近で見たことで、自分の中でプロの世界がより具体的に、明確になったところはあります。

自分も、もっとうまくなってプロになりたい。そのために、最初は関東や関西の大学に進むことを考えていました。ですが、日本文理大の西野晃平監督が神戸弘陵高の試合や練習での僕のプレーを見て、声を掛けてくださったので、高校の谷純一監督と相談して進学することに決めたんです。

関東や関西の強い大学に行けば、それだけうまい選手もたくさん集まっているし、その中で鍛えられるところもたくさんあると思います。でも高校の谷監督に、『いくら実力があっても、試合に出ないと評価してもらえない。だったら九州の大学に行って、できるだけ早くスタメンを勝ち取ればいいじゃないか。そうすれば、プレーを見てもらえるチャンスも増える。試合に出ることが、プロに近づく方法なんじゃないか?』と言われて。それが決め手になり、日本文理大に行くことに決めました。

■毎日の練習からこだわって

実際、そこからFC今治への道が開けたわけですね?

そうです。おととし、大学3年になる春のデンソーカップに九州選抜として出場したときのプレーを強化部の小原(章吾)さんに見ていただいたようで、去年2月のFC今治のキャンプに呼んでもらったんです。ただ、参加2日目に骨折してしまって……。

それは衝撃ですね。

1日目が大分トリニータ、2日目が宮崎との練習試合で、初日が終わって『もっと球際を強く行った方がいいな』という反省があったんです。それで宮崎戦で、普段なら行かないようなところを無理に足を伸ばしてスライディングしたら、倒れた相手に上に乗りかかられる形になってしまって。すねを骨折したんです。

キャンプでアピールできなかったのはもちろん、その後のデンソーカップにも出られませんでした。デンソーカップには、いろいろなJクラブのスカウトが見に来ますが、3カ月はプレーできない状況になってしまって、さすがに『このままでは、どこにも行けないかもしれない』と落ち込みましたね。

でも、骨折して今治のキャンプから帰る際に岡田武史会長にあいさつに行ったとき、「起こったことには、すべて意味があるよ」と言われたんです。その言葉を聞いて、確かにその通りだな、と。落ち込んで下を向いていても、折れた骨がくっつくわけではないし、デンソーカップに出られるわけでもない。だったら、早く治すためにやれることをやって、あとはできる範囲で筋トレをして、少しでもレベルアップしよう。そういう考えに切り替わりました。

それでけがが治って、去年の夏にもFC今治の練習に呼んでいただきました。その場で「ぜひ、今治に来てくれ」とオファーをもらえるくらいのプレーをしないと駄目だ、という思いで練習参加しましたよ。

そしてFC今治でスタートした、プロとしてのキャリア。チームのセンターバックと競争しつつ、たくさんのことを学び、吸収する日々です。

みんな僕より年齢が上だし経験も積んでいるので、いい手本であり、教わることがたくさんあります。もちろん競争はあります。でも、それ以上に『ここは、どうプレーすればいいんだろう?』と疑問に思うことをたずねると、本当にいろいろなアドバイスをもらえるんですよ。

例えば僕は右だけではなく、左のセンターバックに入ることもあるので、左利きの福くん(福森直也選手)にビルドアップのときに見ているところを聞いたり、練習でセンターバックを組むことが多いフタさんにクロス対応を聞いたり。自分はちょっと考えすぎるところがあって、けっこう細かいことまでいろいろ質問するんですが、そのたびに「こうした方がいいんじゃない?」とアドバイスしてもらえます。

練習参加したとき、実はフタさんがちょっと怖かったんですよ。自分はアピールしなきゃいけないと思って、ラインの上げ下げでけっこう声を出していたんです。だけど、一緒にプレーしていたフタさんにボソッと「どこで上げとんねん」と言われて。『え?』となりました(苦笑)。

でも、フタさんに意地悪な気持ちは全然なくて、あとでそのときのことを話したら、本人は覚えていませんでした。今はまったく怖くないし、むしろ優しい先輩です。プレー中に疑問に思ったことを聞けば、すぐにいろいろ意見をくれます。

FC今治で実現させたい夢を聞かせてください。

まずはチームの目標であるJ3優勝とJ2昇格です。個人としては、センターバックとしてスタメンで試合に出て、ディフェンスリーダーを目指したいです。

ディフェンスの選手ですから、信頼がないと使ってもらえないと思うんです。日頃の練習から細かいところにこだわり、自分の特徴を伸ばして、それをプレーでしっかり出す。それが大事だと思います。一つ一つ、信頼を勝ち取っていきたいです。

取材・構成/大中祐二