どんなときも、どんな状況でも、やるべきことをプレーで体現する#FC今治でプレーする 白井達也
開幕戦でセンターバックとして先発を果たし、ボールを奪ってしっかり前につなぐ持ち味を発揮した白井達也選手。シーズンが進み、思うように試合に絡めない難しい時期がありながら、少しもブレることがないのは、プロであることが問われるタフな経験があったからです。
今シーズンからプレーするFC今治との縁は、どのように生まれたのですか?
話をいただいた瞬間に、心は決まりました。その時点で、理己さん(髙木理己前監督、現長野パルセイロ監督)が今治の監督になることが決まっていて。
理己さんは、高校(市立船橋高等学校)の先輩というつながりが、まずあります。それから僕がSC相模原でプロ1年目のとき、理己さんが監督だったガイナーレ鳥取と試合をやって勝利して、そこから5連勝と一気に波に乗って昇格することができたんです。以来、理己さんは僕のプレーを気にかけてくれていたと聞いています。
しかも昇格を決めたのが、ありがとうサービス.夢スタジアム®での今治戦で。今回、今治からオファーをいただいたとき、不思議なつながりを感じました。
今治で求められている白井選手のプレーは?
インターセプトでボールを奪い、しっかりつなぐところや、ディフェンスラインの統率、守備のバランスを整えるところです。そこは、自分の特徴であり、強みでもあります。
まさにそうした自分の強みを、シーズン開幕の福島ユナイテッド戦からしっかり見せてくれましたね。
とにかく自分の特徴を出して、チームの勝利に貢献することだけを意識してプレーしました。
開幕からセンターバックとしてフル出場を果たし、新天地で非常に良い状態でスタートを切れました。しかし、第8節・Y.S.C.C横浜戦まで5試合に先発したところから、しばらく試合に絡めない時期に突入します。
僕自身もチームも、プレシーズンから開幕して数試合は勢いを持ってやれていました。ですが、その勢いが徐々に失われてしまったと思います。
個人的には、そのタイミングで出場機会を減らしてしまったことが、とても悔しいです。求められること、チームとしてやろうとすることを体現できなかったわけですから。思うように今治らしさを出せなくなっているからこそ、工夫して自分の特徴を発揮して、結果につなげていかなければなりませんでした。
白井選手が体現したいと考える“今治らしさ”とは、どういうものですか?
今治の良さは、どんどん前に行くところだと思います。味方同士の距離感がよく、テンポよくボールを動かしながら前進していく。ボールを取られても、全力で走ってボールを奪い返しにいく。そういうところですね。
かわされても二度、三度とプレッシャーに行く。“ボールを失ったらプレスを3回、3人、3メートル”というのは、ずっと言ってきたことです。そういう部分で相手を上回るのが、僕たちの良さです。見方を変えると、今治らしさが思うように出せないということは、そういう部分が薄れているのかもしれません。
白井選手はトライアウトを経て、今治に加入することになりました。選手として自分と向き合う重要な時間を過ごしたと思います。
プロサッカー選手は常に実力を問われ続け、本当に明日、どうなるか分からないような安定しない職業です。トライアウト当日は、『この1日に自分の力を出し切らないと、プロ選手としてのキャリアが終わってしまう』という強い覚悟でした。
そういう経験をしないで済むのであれば、それに越したことはありません。ですが、自分としてはあの場に立ったことが、この先、サッカーを続けていく上で財産になると捉えています。
独特のプレッシャーでしたね。公式戦でプレーするときに感じるものとは、まったく違って。認められなければ、プロとしてサッカーができなくなるかもしれないわけですから。『もう、二度とあの場所には戻りたくないな』という気持ちは、今のモチベーションでもあります。
結果として、今治でサッカーを続けることができました。チームや自分が思うようにいかない、うまくいかないこともあります。それでも、そこで立ち止まってはいけない。そう強く思えるのは、トライアウトの重圧を感じたからこそだと思っています。自分にとって、とても意味のある経験でした。
今治で思うように試合に絡めない状況に立たされたとしても、大きな心の支えになりますね。
トライアウトに出たということは、ゼロからというより、マイナスからの再スタートなんです。だからこそ出てくるパワーがあります。
うまくいかないときこそ、一番、成長できるチャンスだと思うし、乗り越えたらすばらしいものが待っている。自分はトライアウトを越えて、今治で開幕戦のピッチに立つことができました。本当に最高のスタートを切ることができて、言葉に表せないくらいの喜びがあります。これからも自分の頑張り次第で、そういう最高の瞬間が、また訪れるはずです。トライアウトの経験が、そう思わせてくれます。
チームはこの夏、選手の入れ替わりがあり、監督が交代する大きな変化を経験しました。
今、チームには前に出ていくエネルギー、リスクを冒してでもチャレンジする勇気、躍動感が必要だと感じます。その力になれるよう、毎日のトレーニングからしっかり準備しています。
理己さんが退任して、もちろんとてもショックでした。ですが、より覚悟が強まる出来事でもありました。プロの世界ではあり得ることで、自分自身、明日にでもプロとしてサッカーができなくなるかもしれない。だからこそ、どんなときも、どういう状況でも、自分がやるべきプレー、チームから求められることを体現しないといけないです。そこでブレてしまえば、こうしてサッカーを続けられる状況をつくってくださったみなさんに申し訳ないです。
チームは工藤直人監督のもと、目標に向かって勝負の終盤戦に臨みます。その中で、何が求められていると思いますか?
直さんは、前に行く部分を改めて掲げています。ただし、それはむやみに前に急ぐことではなくて。相手をしっかり揺さぶって前に行く。そこを、直さんは大事にしています。しっかりボールを保持して、相手を揺さぶり、生まれた隙を突いていく。
前への意識は理己さんも求めていましたが、やっぱりそれぞれ違うカラーがある。直さんの求めるものを、自分もしっかりプレーで体現できるように取り組んでいきます。
チームの目標は変わりません。自分たちがやるべきことも変わらない。前に行く姿勢、チャレンジする姿勢を貫きます。目標を達成するために、ぜひ一緒に戦ってください。よろしくお願いします。
取材・構成/大中祐二
以下の動画は、白井選手がラジオ番組「FC今治のカナイがイカナイト」に出演した際の放送アーカイブです。ぜひご視聴ください。