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僕たちが戦う集団になるために #FC今治でプレーする 福森直也

これまでのキャリアの内には、良いときばかりではなく、難しいときもあった――。その経験を、チームのJ3優勝、J2昇格という目標を達成するために還元するつもりです。センターバックとして、副キャプテンとして、存在感は抜群。頼もしいベテランが、今治の新たな力として加わりました。新加入選手のインタビュー・シリーズ、#FC今治でプレーする。今シーズン、最初に登場するのは福森直也選手です。


▼プロフィール
ふくもり・なおや
1992年8月29日生まれ、大阪府出身。182㎝、77㎏。利き足は左。DF。背番号3。
吹田千里FC→セレッソ大阪U-15→金光大阪高→関西学院大→大分トリニータ→清水エスパルス→ベガルタ仙台→FC今治

◾今治は全員が球際で戦える

いよいよFC今治で戦うシーズンがスタートしました。開幕から4連勝した後、2連敗。このスタートをどのように受け止めていますか?

プレシーズンからトレーニングしてきたことを出しつつ、ある程度の結果を出せたのはいいことです。ですが、その後に連敗してしまったり、自分たちのサッカーがどれだけできているかというと、まだまだな部分が多いですね。結果を出しつつ、もっともっと内容を向上させていかなければならない。それは、みんなが感じていることだとも思います。

今治は、全員の守備意識が高いチームです。特にハットさん(服部年宏監督)から「守備からしっかり入ろう」という声掛けがあるわけではないですが、選手1人1人が失点しないように体を張れていることが大きいですね。

ただ連敗中は、どこか緩んだところがあった。シーズン38試合、ルヴァンカップ、天皇杯と、すべてで続けていかなければならないです。1対1で戦う部分は、毎試合ハットさんから求められているベースの部分でもあります。しっかり積み上げていきたいですね。

開幕から一定の手応えを得ながら、試合を戦えているわけですね?

相手があることなので、試合によっては圧倒されてしまうことも出てくるでしょう。それでも自分たちがやりたいのは、やっぱりボールを保持して、攻撃の時間を長くして勝利すること。そのためにも、どうやって相手にプレッシャーを掛けていくのか、自分たちのボールをどうつないでいくのか、さらに突き詰めていきます。

シーズンが始まって、いろいろ見えてきた課題があると思います。福森選手は、チームの戦いをどのように向上させていきたいですか?

それを言ったら、すべてを向上させなければなりませんよ(笑)。真面目な話、今は全員が球際で戦って、切り替えを早くやれていますが、だんだん暑くなって夏の戦いになると、どうしてもしんどくなってくる。今のパワーを維持することで満足せず、上回っていくことが必要だと思います。

ここまでは福森選手はセンターバックの左、左サイドバックには奈良FCから加入した加藤徹也選手、左サイドハーフには近藤高虎選手が入る組み合わせが多いです。それぞれ特徴を発揮しながら、左サイドで面白い化学変化が起こりつつあるのでは?

テツ(加藤選手)は攻撃がすごく好きな選手で、コンビネーションも試合を重ねるごとに良くなってきています。彼の、後ろから出ていく迫力ある攻撃参加を生かすためにも、僕は後ろでしっかりカバーすることを心掛けています。テツが守備を気にせず攻撃できるくらいの信頼関係をつくっていきたいですね。

加藤選手は、中盤の中の方にもどんどんポジションを取って、とても積極的です。

もちろん状況にもよりますが、「もっとアグレッシブに行っていいよ」とテツには言っています。4-4-2のフォーメーションで戦うとき、サイドバックが攻撃に関わることは、とても大事ですから。彼は上下動する体力もあるし、思い切ってプレーしてほしいです。

高虎選手の攻守の頑張りも大きいですね。

左サイドの守備は、トラ(近藤選手)の運動量に本当に助けられていますよ。本来なら僕たちディフェンス陣がスライドして埋めないといけない場面でも、トラに甘えていることが今はある。ですが、彼は攻撃の選手ですからね。やっぱりそのパワーを攻めるときに使ってほしい。後ろの僕たちが守備でうまくカバーしていかなければなりません。

◾自分に求められる役割

福森選手は今シーズン、J2のベガルタ仙台から完全移籍でFC今治に加入しました。

仙台の契約が満了になって、プレーするチームがない状況でFC今治が手を上げてくれました。サッカーができる場を与えていただいたことに、感謝しかないです。僕は今年32歳になり、ベテランと呼ばれる域に差し掛かっています。そんな僕の経験を今治に還元してほしいと評価していただいたことも、本当にうれしかった。チームの目標であるJ3優勝、J2昇格に少しでも貢献して、今治に恩返しがしたいです。

僕自身は、そんなに大した経験をしてきたとは思っていないんですよ。ただこれまで、本当にいろいろなシチュエーションでやってきました。シーズンを通して出続けたこともあれば、試合に出られない時期もありました。

いろいろな角度からチームを見てきたので、試合に出続けている選手の感情、出られない選手の感情、どちらも分かる。チームは一つの方を向いていかなければならないので、自分の中にある『試合に出ていないときにどんな声を掛けられたらうれしいか』『どう見られたらうれしいか』という部分を生かしつつ、チーム全体を見ていけたらいいかな、と思っています。

それから試合の中でも、リードしているとき、リードされているとき、同点のときとさまざまです。自分たちがやりたいことをうまくやれている時間もあれば、その逆もある。だからこそ、『今、何をすべきか』ということはしっかり提示していきたいです。もしかすると、必ずしも正解ではないかもしれませんが、あいまいにプレーすることが一番、よくないですからね。そこは一つの役割として、求められていると感じます。

そういう意味でも、加入してすぐに副キャプテンを任されたことで、より発信したり行動を起こしやすくなりますね。

そこは、あまり意識していないです。子どもや学生なら、キャプテンや副キャプテンがみんなの先に立ってやることも大事でしょうが、みんなプロの選手ですから。副キャプテンという立場でも、おそらくやることは変わらないと思います。

ただ、キャプテンであるミカさん(三門雄大選手)と話したのは、たとえばいつの間にかロッカーが汚くなることってあるんですよ。トレーニングのあと、みんなのスパイクに付いていた芝が床に落ちたりして。そういうときにキャプテン、副キャプテンが率先してきれいにする姿を見せる方がいいのか、それともみんなに言って、みんなできれいにするのか。いずれにしても気づいたら、何らかのアクションを起こしていきます。

◾チームとして、人として成長するために

サッカーをプレーする環境として、FC今治はどうですか?

めちゃめちゃいいと思います。僕にとって今治はプロ4チーム目ですが、しっかりしたクラブハウスがあって、専用の練習場もスタジアムもある。本当にすばらしいです。

J3というリーグにも、やりがいを感じます。レベルも高いですよ。実際、J3からJ2、あるいはJ1のチームに移籍して活躍している選手もいますよね。J2の上位とは少し差があるかもしれませんが、J2の下位チームとJ3のチームには、ほとんど差はないと思います。

シーズンが開幕して、試合を戦って感じるのは、やっぱりずば抜けたチームのない、本当に難しいリーグだということです。どのチームも自分たちのスタイルを貫いている。J2だと降格がよぎって、スタイルを捨ててなりふり構わず勝点を取りに来るサッカーになることもあります。ですが、J3は少し違いますね。

もちろんJ3も降格する可能性はありますが、JFLとの兼ね合いがあるし、今はシーズン序盤ということもあって、どのチームもそれぞれのスタイルを思い切りぶつけてくる印象です。ディフェンダーとして、センターバックとして、止めがいがあります。

いよいよ始まったFC今治でのチャレンジ。この地で実現させたい夢を教えてください。

もしかすると、僕の現役の範囲を越える夢になるのかもしれませんが、FC今治がJ2、そしてJ1に昇格して、J1に定着して戦うチームになることです。少なくとも自分が関わりながら、FC今治をJ2で戦える集団にできたらいいですね。

目標に向かってシーズンは始まったばかりですが、試合を重ねていくうちに、絶対にいろいろな葛藤が選手それぞれに生まれてくるんですよ。それこそ自分も、試合に絡めないときはネガティブな見方しかできないときもありました。チームが負けたり、誰かがミスすれば、自分にチャンスが回ってくるだろう、と思って。

だけど長くサッカーをやってきて分かったのは、それを待っていても仕方がないということなんです。結局は、自分の感情をどこに持っていくのかが重要で。

ただ文句ばかり言っているだけなのか、いつか分からないけれど、出番が来たときのために準備をするのか。プロサッカーの世界って、いつ何がどうなるか、本当に分からないんです。シーズン中、それまで絡めていなかったのが、いきなり試合で使われるチャンスが来るかもしれないし。

だけど、そのとき準備ができていなければ、それすら逃してしまいかねないわけです。そこはチームとしても、人間としても、成長できるかどうかの大きな違いがあると思います。若いころは、なかなかそんなふうに考えるのは難しかったんですけど。もしかすると僕から声を掛ける場面が、今シーズンのどこかで出てくるかもしれませんね。今治がJ2に昇格して、そこで戦える集団になるために、僕の経験を活かすことができればいいなと思います。

取材・構成/大中祐二