自分らしさを存分に発揮するために、こつこつと #FC今治でプレーする 馬越晃
FC今治のアカデミーで育ち、クラブ初のトップ昇格を果たした馬越晃選手。自分の特徴である1対1の強さと前への推進力を1日でも早くピッチで示し、チームの勝利に貢献するために、一つずつ積み重ねる日々です。6月28日に右すねの疲労骨折のリリースが出されましたが、けがを乗り越え、たくましさを増しての復帰に期待しましょう。
■ 戦える体を作る
今治市出身の馬越選手は、FC今治の下部組織を経て、クラブで初めてトップ昇格を果たしました。プロとしてのキャリアがスタートして約半年。今、どういうテーマでサッカーに取り組んでいますか?
まずは早く試合のメンバーに入るために、毎日のトレーニングや筋トレをこつこつ積み上げている段階です。それから試合では、今、ボランチで出ている(新井)光くんだったりトーマス(モスキオン)、ミカさん(三門雄大選手)のプレーをしっかり見て、少しでも自分のものにできるようにがんばっています。
学ぶところはたくさんあります。光くんはファーストタッチや展開力、ミカさんは周りを動かしながら、周りとつながりながらプレーするところ、トーマスはボール奪取、回収力がとても勉強になります。
チームにはすばらしいボランチがそろっていて、(楠美)圭史くんは常に声を出して戦い続けているし、(佐藤)璃己くんは配球力が高い。それぞれ吸収したいですね。ボランチ以外のポジションの先輩からも、『もっと、こういうふうにボールを受けてほしい』『この動き出しを見逃さずにパスを出してほしい』といったように、いろいろ言ってもらえることも、自分のプラスになっています。
プロのピッチで求められることの内容、レベルを、どう感じますか?
プレースピードや強度が、ユースから比べてグンと上がっているので、その中で自分の特徴を出していかなければなりません。そのためにも体作りは重要で、意識して筋トレに取り組んでいます。相手に当たり負けしない、戦える体を作らないといけないので。
鍛えているのは、上半身、下半身、全身ですね(笑)。ボールを奪うために体をぶつけて、なおかつ当たり負けしない強さが必要なので。それから体脂肪は変えず、筋肉量を増やしたいので、トレーニングだけではなく、食べる物もより意識するようになりました。
数値的にも、プロになってから少しずつですが、体脂肪を維持しつつ筋肉量が増えています。ユースのころから比べると、体重は4キロくらい増えました。継続してやっていきたいです。
体脂肪を維持しながらなので、その4キロはほぼ筋肉ということですね!
体重が増えたからといって、今のところ動きにくくなったとは感じていません。プロになって、より体系的に筋トレをしている効果だと思います。
ただ、トレーニングで競り負けなくなってきたかといえば、まだまだで、周りのレベルも上がっていますから。もっと積み上げていかなければなりません。
■ チームのために戦うこと
服部年宏監督やコーチ陣からは、トレーニングでどのようなことを求められていますか?
今はボランチだけではなく、サイドハーフ、サイドバックなど、いろいろなポジションでプレーをするので、『どのポジションに入っても、そこで自分の特徴を出せ』ということを言われています。他の選手ではない、“自分だからこそ”というプレーをしないといけないと思います。
ポジションに関わらず出していきたいのは、1対1で戦うところです。そこでは負けたくないですね。そのためにも根気強く、継続して取り組むことを、ハットさんからも言われています。
同じ高卒ルーキーで同期の横山夢樹選手、梅木怜選手が試合に出場していることに、大きな刺激を受けていると思います。
やっぱり悔しい気持ちがあります。でも、自分にできることはトレーニングからしっかり取り組んでいくことです。
夢樹であればドリブル、怜であればスピードと、2人とも、自分の特徴をしっかり試合で出しているのがすごいです。毎日、できることは限られていますが、自分に矢印を向けて取り組んでいきます。
自分の特徴をプレーで示すことは、シュウさん(修行智仁選手)にも言われています。『もっとトレーニングから自分らしさを出して、“他の選手とは違うんだぞ”というところを見せろ』と。少しは焦る気持ちも必要だとは思いますが、一つずつ積み上げながら夢樹や怜に追いつけるようにがんばります
馬越選手がサッカーを始めたきっかけを教えてください。
兄が2人いて、どちらもサッカーをやっていたので、自分も自然とするようになりました。幼稚園の年長のころですね。ボールを蹴るのが楽しくて、その楽しさがあって、今でもプレーを続けていると感じます。
小学校に入って親の仕事の関係で神奈川に引っ越しましたが、そこでもサッカーを続けました。そして愛媛に戻って来て、最初は松山のトレーフルというチームに入ったのですが、4年生のときにFC今治のセレクションを受けることになりました。地元である今治のチームが良かったということと、そのタイミングで岡田さん(岡田武史会長)がクラブに来られたことが、セレクションを受けようと思った理由です。
岡田会長の存在は、やはり大きいものがありましたか?
僕というより父親ですね、岡田さんが今治に来ることになって、興奮していたのは(笑)。それがどれだけすごいことなのか、子どもだったので、僕はまだよく分かっていませんでした。
FC今治はアカデミーでも岡田メソッド、フィロソフィーがあって、ここで自分のサッカーの原点、土台が作り上げられました。自分たちで考えながらサッカーをするところが身に付いたと思います。
フィロソフィーの中でも、特に大事だと感じるのが「OUR TEAM」です。自分たちのチームのためにプレーする。それが、いかに大切なことか。高校3年のとき、FC今治U-18のキャプテンを務めたのですが、やっぱり自分たちのチームだという意識をしっかり持っていないと、強くなれないのだと実感しました。監督やコーチにやらされるのではなく、自分たちから強くなることを求めていく。「OUR TEAM」の大切さは、プロになった今でも感じます。
高校2年のとき、トップチームにコロナの感染者が複数出た鹿児島戦(2022シーズン第22節〇4-3)で試合のメンバーに入ったんです。途中出場もしたのですが、1人1人の責任感がすごくて驚きました。『これが“OUR TEAM”ということなんだ』と、チームのために戦うみんなの背中を見ながら感じました。
■ 地元クラブで憧れのJリーガーに
小学4年生からFC今治のエンブレムを着けてプレーする馬越選手ですが、試合を見る側、応援する側で思い出に残るトップチームの選手はいますか?
子どものころ、桜井海浜ふれあいサッカー場に応援に行った試合は印象深いですね。ピッチがとても近くて、すぐ目の前で選手がプレーしていて。今治という地域が一体になる雰囲気がすごかった。当時、10番を着けてプレーしていた岡本剛史さん(2012-15シーズン、FC今治に在籍)はFWでたくさん点を取っていたので、よく覚えています。
それから、ありがとうサービス.夢スタジアムのこけら落としとなったヴェルスパ大分との試合(2017年9月10日)も印象的でした。サッカー専用のスタジアムが満員になっているのは、桜井とはまたまったく違った雰囲気のすごさがあって。
現在のアシックス里山スタジアムもサッカー専用ですから、一日も早くピッチに立ちたいですね!
スタンドの上から試合を見ても、ピッチの迫力が伝わってきますよ。ファン、サポーターのみなさんもたくさん足を運んでくださるし、早く声援を受けながらプレーしたいです。
FC今治のアカデミーから初めてのトップチーム昇格、しかも地元出身選手ということで、期待の大きさを感じていると思います。
今まで自分に関わってくださったいろいろな指導者のみなさんにアドバイスをいただいたり、去年の夏、昇格を決めるときには相談にも乗っていただきました。自分の中では大学に進学してサッカーを続ける選択肢もあったので。
最終的には、後悔したくない思いから、(昇格を)決断しました。後悔したくないというのは、ずっとプロに憧れがあったからです。小学生のころから、ずっとサッカーを教えてもらっていた渡辺憲司コーチの、『人生は次に何が起こるか分からない。明日のチャンスはないかもしれない』という話にも、心を動かされました。憧れだったプロに挑戦してみたいという気持ちになりましたね。
アカデミーから初のトップ昇格というプレッシャーもあります。ですが、いい意味で気にしすぎず、エネルギーに変えていきたいです。
憧れだったJリーガーとなり、FC今治でどのような夢を実現させたいですか?
まずはJ2に昇格するということです。チームの目標でもありますが、僕自身、子どものころからずっとFC今治と関わってきた中で、昇格の力になりたいと心から思います。
今年は絶対に勝負の年になります。去年はニンジニアスタジアムの伊予決戦で愛媛FCにJ3優勝とJ2昇格を決められて、本当に悔しい思いをしました。僕自身がプロになる前ではありますが、あのときの気持ちを忘れずに、日々、取り組んでいきたい。そしてチャンスをつかんで試合に出て、チームの勝利に貢献したいです。
今シーズン、チームは開幕から4連勝して良いスタートを切りましたが、その後、勝てない苦しい時期も経験しています。それでも開幕前のチームビルディングであった、『長いシーズンは良いときも悪いときもある。悪いときこそ、はい上がるための大切な時間になる』という話の通りだと思います。
これからFC今治サポーターのみなさんに、どういうプレーを見せていきたいですか?
相手からボールを奪うプレー、奪ったボールを前進させるプレーです。そこが自分の特徴なので、ぜひ注目してください。そのためにも、少しでも早くピッチに立てるように、いっそう努力していきます
取材・構成/大中祐二