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弱さと共に|齊藤泰治

Profile
#7 MF 齊藤泰治
出身高校:桐朋高校

高いプレス理解度と走力でサイドを制圧するWB。練習に向かう準備、姿勢は部員の手本となり、厳しく接しつつも奥に見える優しさで、多くの後輩から慕われた。

こんにちは。齊藤泰治です。
久しぶりに会った友人に「太った?」と言われた。人生で初めていわれた言葉にショックを受けた。それでも、運動しなくなって筋肉が落ち、脂肪が増えていることを自覚しながらも重い腰がなかなか上がらない。いい加減にランニングでもしようかと思っています。

さて、毎年楽しみにしていた引退ブログ。ついに自分が執筆する番になってしまった。文才がない以上、先輩方や他のシ式のような傑作ブログをかける自信がないし、特に書きたいこともない。そのため、ア式での4年間を当時の心境と共に綴っていこうと思う。

拙い文章ですが、最後まで読んでいっていただけると幸いです。

1年目
戸田さんと新設された人工芝グラウンドという環境に魅了されて、入部を決意した。今思えばこの1年が最も長く濃密な1年だったと感じる。

久しぶりのサッカーだったからか、入部当初は本当に楽しかった。早く試合に出て、Aチームに上がって戸田さんの指導を受けたかった。もちろん思い描いたようにはいかず、Bチームにいる期間が長く続いた。(Cチームの期間もあった気もするが…)この時期にプレスについて叩き込まれたことが自分の大学サッカーに大きな影響を及ぼしたことは言うまでもない。

夏頃からサタデーに出始めて、夏オフ明けからはBでスタメンで試合に出られるようになってきた。同時期にはすでに多くの同期がAに呼ばれていて、焦りと共に湧き出てきた反骨心がより一層サッカーにコミットさせた。

そんな中、9月末にようやくAに呼ばれた。初めてAの練習に参加したとき、強度や集中力・緊張感に圧倒された。さらに、戸田さんから直接指導を受けられるというこれ以上ない環境に高揚した。当時は毎試合のようにリーグ戦のスタメンが入れ替わり、誰にでも出場するチャンスがあった。時にはリーグ戦でスタメンで出ていた選手が次の週にはBの練習に参加していたこともあった。
チーム内での競争が激しいがゆえに、自然と練習に熱が入り、自分自身の成長を実感できた。

何より、サッカーが上手くなっていく感覚が楽しくてたまらなかった。

それくらい入れ替わりが激しいなら、1年の自分にもチャンスがあるのではと淡い期待を抱いて練習に臨んだ。

その期待はすぐに現実へと変わった。

リーグで圧倒的な強さを誇っていた上智との試合の前日練習で事件(?)は起こった。平日の練習ではスタメン組に入っておらず、「今週はベンチに入れたら」なんて思いながら前日練習に臨んでいた。すると最後のセットプレーの確認の前に、選手数人のマグネットがあるべき場所から消えていた。そして、ボード上には新たに自分のマグネットがスタメン組として置いてあった。訳も分からぬまま前日練習が終わり、試合を迎えた。緊張のあまり試合内容はあまり覚えていない。

次の創価戦も途中から出場した。チームを背負って戦うことの重圧に押しつぶされそうな2試合だった。

それでも、リーグ戦独特の高揚感をもう一度味わいたいという思いがそれからの原動力となった。

しかしそれ以降はベンチ入りすることもなく、11月の桐蔭横浜との練習試合を最後にBに落とされてしまった。試合後に戸田さんからサッカーへの取り組み方について強く指導をいただいた。これが最後のメッセージとなった。

1つの目標を達成したことで気が緩んでしまった自分が情けなかった。もう1度リーグ戦の舞台に立ってやると強く決意して2年目に入った。

2年目
冬オフ明けの練習から相当気合が入っていた。
「Aチームに入りたい」 
「リーグに出たい」
そんな気持ちが空回りしたのか、2月頭に大怪我を負ってしまった。自力で立てないほどの怪我で、数ヵ月の離脱を余儀なくされた。

ショックを受けるよりも早く復帰したいという気持ちが強く、むしろモチベーションが上がったことはいまだになぜなのかよくわからない。

復帰後は思ったように体が動かず、全然コンディションが戻らなかった。さらに、真面目に練習に取り組まない新入生の存在も相まって、相当気が立っていたし、そんな状況がもどかしかった。

結局、怪我前のパフォーマンスが戻り、Aに呼ばれたのは駒沢での商東戦の週だった。またあの高いレベルでの練習に参加できることがうれしかった。

しかし、久々のAの練習で感じたことは全く逆の感情であった。1年の頃に経験した基準にはほど遠く、練習がぬるいと感じた。正直なことを言うと、本当にがっかりした。やっとの思いでAに戻ってきたのに。

結局、この感覚は残りの3年間ずっと消えることはなかった。

そんなこともあって、サッカーへのモチベーションが下がってしまった。

それ以降のことはAサブでカメレオンプレスをしていた記憶しかないくらい、リーグ戦のことは覚えていない。

気づいたらア式での2年目が終わっていた。

3年目
チームは2部リーグ優勝を果たし、1部リーグへの昇格を決めた。

そんな輝かしいチーム成績とは対照的に、自分はリーグに絡むことはなかった。1試合だけ出場したが、大差で勝っている試合の後半ラスト5分とか。

最終節後に仲間が優勝を祝い合っているのを応援席から眺めているだけだった。全くもって喜べなかった。

その思いは最後だけではなく、シーズン中ずっとそうだった。毎週のように勝ち続けていくチームを見ても何も感じない。自分が出ていない試合でチームが勝つことが面白くなかった。負けて欲しいとまで思っていた。

それでも、試合に出られない期間が続く中で大きな変化が起こった。

サッカーが下手だと自覚するようになった。

それまでも薄々は気づいていたが目を背けていたことだった。試合に出られないという現実が無理やり自覚させてくれたのかもしれない。ともあれ、現状を変えるために何かをしなければいけないと危機感を覚えた。

新しい何かを始めることが出来ない口なので、部活動での基本的な部分を徹底することにした。
練習中に声を切らさない。手を抜かずにプレーする。朝早く来て準備する。

誰でもできることだったが、それができている人は少なかった。そうした小さな積み重ねが結果につながると信じ込んだ。

成果を実感できたのは次の年だった。

4年目
開幕スタメンを任された。

これまでの積み重ねがあったからか、不思議と緊張しなかった。第3節の玉川戦ではリーグ戦初ゴールを決めることが出来た。1年間の辛抱がようやく実を結んだと思った。

しかし、自分の活躍とは対照的にチームは初めて臨む1部の舞台で連敗が続いた。

帝京戦でメンバーから外れた時、後輩たちの姿に心を打たれた。チームが大敗していてもなお、大きな声で応援し続けていた。自分のことで手一杯になっていたため周りが見えていなかったが、試合に出場できていることに満足している自分に気づかされた。

1年の時から弱く甘いままで何も変わっていなかった。

こんなにも熱い応援を受けてチームの代表として戦っている以上、結果で恩返ししなければならない。

次の日文戦以降はしばらくベンチからのスタートだったが、勝利のために尽力しようと心掛けた。自分が出場してもしなくても。

2ヵ月後の学芸戦でスタメンのチャンスが巡ってきた。この試合がサッカー人生最高のパフォーマンスだったかもしれない。その試合で開幕からの連敗を止めて、初めて勝ち点を獲得した。試合内容からすると勝ち切らなければいけなかったが、応援してくれた部員に少しだけ恩返しができた気がした。

成蹊戦で勝利した際には昨年までとは異なり、本当にうれしかった。自分は出場しなかったのに、心の底から喜べた。

そこから先はあっという間だった。

もう一度みんなで勝利の味を噛みしめたい。その一心で取り組んでいた。

結局、シーズンで2回しか勝利を掴むことが出来なかった。だからこそリーグで勝つことの難しさと喜びを痛いほど噛みしめることが出来た。チーム全員で勝利をつかむことの喜びは何にも代えがたいものだと最後の最後に実感した。

もう少し早くこの経験ができていたらな。


最後に

引退して2ヵ月が経とうとしている12月中旬。もうこんな寒い中サッカーをすることもないのかとか考えながら部屋の天井を眺めるだけの日々が過ぎていく。

運動不足にならないように引退直後から始めた5kmのランニングは2日目で終わってしまった。卒論にもこのブログにすら、なかなか手を付けられない。

部活という縛りがなくなった途端に何も行動することのできない自分が情けない。

結局、こんな弱い自分を変えることが出来ないまま引退してしまった。練習の雰囲気を変えることもできなかったし、満足したところで気を緩めてしまったことが何度もあった。

それでも次のステージはやってくるわけで、後ろを向いてばかりではいられない。4ヵ月もたたないうちに社会人としての新しい門出を迎えることになる。

環境が変わっても、基本的なことを徹底し少しずつ積み上げることで困難や弱い自分に打ち勝っていこう。

自分にはそれしかできないから。

最後にサッカー人生で関わってくださった方々に感謝を伝えて、終わろうと思う。

両親へ
長い長いサッカー人生を一番そばで支えてくれてありがとうございました。

あの時、サッカースクールに連れて行ってくれなかったら、こんなにも楽しい人生を送れていなかったでしょう。大学4年間では試合に出て活躍する姿をあまり見せられずに、すみませんでした。

サッカーで足りなかった分はこれからの人生で少しずつ恩返ししていく予定です。

OB・OG、サポーターの方々へ
いつも温かいご支援、ご声援をいただき、心より感謝申し上げます。皆様のおかげで4年間最高の環境でサッカーに取り組むことが出来ました。

本当にありがとうございました。

後輩へ
プレー面でも精神面でも頼りないシ式を支えてくれて本当にありがとう。

入部当初はかわいい後輩だったのに、気づけばシ式よりも頼もしい存在に成長していてビックリです。

説教臭いことは言いたくないけど、最後に1つだけ言わせてください。

”謙虚”に頑張れ

いつか応援しに行きます。

シ式へ
こんな生意気で我儘なクソガキと仲良くしてくれてありがとう。

みんなと出会えたことだけでア式に入ったことを正当化してくれる。そのくらい大事な仲間と4年間サッカーをできたことが本当に幸せでした。

これからも末永くよろしくお願いいたします。

まだまだ書き足りないことがあるけど、長くなってしまったのでこの辺で締めたいと思う。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

一橋大学ア式蹴球部 
齊藤泰治


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