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【コラム】マックス・エバールの試練:バイエルンで高まる重圧
マックス・エバールはFCバイエルンで極度のプレッシャーにさらされている。特に資金面では、クラブ首脳陣が明確な成果を求めており、その中でも特に厳しい視線を向ける人物が存在する。
エバールは約1年前にバイエルンのスポーツ取締役に就任した際、すでに多くの課題を抱えていた。当時、トーマス・トゥヘルの解任が決定しており、新監督も決まっていなかったうえ、チームのパフォーマンスも低迷していた。さらに、契約満了が迫る選手も多く、就任当初から大きな重圧がのしかかっていた。そして、そのプレッシャーは今も軽減されるどころか、むしろ増しているようだ。
世間的にはジャマル・ムシアラやジョシュア・キミッヒといった選手の契約延長が注目されているが、クラブ内部では何よりも資金確保が最優先課題となっている。エバールは、選手たちを引き留めるために収益を生み出さなければならない。
ウリ・ヘーネス、ルンメニゲの圧力
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オリバー・カーンとハサン・サリハミジッチの解任以降、表舞台に戻ってきたウリ・ヘーネスは、「FCバイエルンには金のなる木などない」と明言している。そして、エバールおよびスポーツディレクター(SD)のクリストフ・フロイントに対し、徹底的なコスト削減を指示しているようだ。
ヘーネスはエバールとフロイントの2人を厳しく監視しており、メディアの報道によれば、エバールの仕事に完全に満足しているわけではないとも言われている。
また、ムシアラやキミッヒといった主力選手との契約交渉においても、クラブはすべての要求を無条件に受け入れることを許していない。場合によっては、ヘーネスや監査役会がエバールの進める契約交渉を途中で打ち切る可能性もあるという。実際、2024年夏にはエバールが進めていたアルフォンソ・デイヴィスの契約延長が、「コストがかかりすぎる」という理由で却下されている。(今月デイヴィスとの契約延長が発表されたが、当時却下された条件よりも高額になっている。)
さらに、冬の移籍市場の期限日にはヘーネスだけでなく、元CEOのカール=ハインツ・ルンメニゲもクラブのオフィスに姿を見せていたようだ。
エバールは長年にわたりヘーネスの「お気に入り」と見なされており、過去に何度も招聘が試みられてきた。しかし、両者の関係においても、スポーツ面と財政面の両方で成功が求められているようだ。
バイエルンの監査役会
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エバールの仕事をさらに複雑にしている要因の一つが、監査役会の存在である。監査役会会長のヘルベルト・ハイナーは、2023年12月に「バイエルンにとってお金は決して問題ではない」と発言し、このコメントが選手代理人たちの間で話題となったという。
バイエルンは2024年にクラブ史上初の年間売上10億ユーロを達成したこともあり、代理人の間では「バイエルンは本当に節約しなければならないのか? 単に節約したいだけではないのか?」という疑問の声が上がっているようだ。
これに対し、エバールは記者会見で「過去の給与コストの問題が、まるで私の首を絞めるような状況になっている」とコメントし、高額な人件費に関する批判が自身に向けられることを拒否した。
実際、バイエルンの給与体系を拡大し続けたのはエバールではない。それは彼の前任者であるハサン・サリハミジッチと当時のCEOオリバー・カーンの決定によるものであり、特に2020年のトレブル達成後、クラブに財政的な余裕があったことも背景にある。そして当時、監査役会もすべての決定に同意していた。
つまり、エバールは今、過去の経営方針の影響を受けつつ、財政的な引き締めを求められるという難しい立場にあり、ファン、メディア、そしてクラブ上層部の厳しい視線を浴びている。
すでにエバールとフロイントによる節約策は始まっており、バイエルンはフリーで獲得が発表されているホッフェンハイムのトム・ビショフを、高年俸のレオン・ゴレツカと入れ替えようとしている。ビショフの年俸は€5m以下とされており、ゴレツカがバイエルンで得ている€17mの年俸を考慮すると、これは大幅なコストカットとなる。
エバールの成功例
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一方で、エバールには一つの成功例がある。それは彼がFCバイエルンに招聘したヴィンセント・コンパニ監督だ。ヘーネスはこれまで公の場でコンパニについて一貫してポジティブなコメントをしており、カール=ハインツ・ルンメニゲもベルギー人監督の支持者とされている。
つまり、エバールにとって少なくともコンパニの起用に関しては弁明の必要はなく、その点におけるプレッシャーは軽減されている。
そして、チャンピオンズリーグのノックアウトステージが始まるこれからが今シーズンで最も重要な時期となる。