一級建築士製図試験に合格するための「5つの力」とは
はじめに
fcamです。
この記事を読んでくださり、ありがとうございます。
一級建築士試験に対する熱が入りすぎて前置きがかなり長くなってしまいました。
要点のみ手っ取り早く知りたい方は「初めに」「製図試験の勉強は、5つの力を伸ばすためのもの」を飛ばして読んでいただいて構いません。
・時間に余裕がある。
・勉強の隙間時間に読んでいる。
・一級建築士を受ける準備をしている。
このような方はぜひ冒頭から読んでいただけると幸いです。
製図試験に向けて勉強している方々、勉強と仕事の両立に苦悩していることかと思います。
いつもご苦労様です。
実力が伸びている実感が湧きにくい試験特性であり、僕も対策期間中は心がへし折られそうになったことが幾度もありました。
課題発表から約2.5ヶ月という一見あっという間に感じる試験対策期間ですが、体感4〜5ヶ月に感じる地獄の時間になることでしょう。
これから勉強を始める方や、時期によっては学科試験勉強中の読者もいるかもしれません。
そんな方々には少し先の話になりますが、少し先の自分を想像しながらこの記事を読んでいただけると幸いです。
さて、これから製図試験を控える読者の方々は共通して「何としても一級建築士になりたい」と思われていることでしょう。
・地位や名誉の獲得。
・給料アップ、好条件の会社に転職。
・人間関係、職場での扱われ方
何より建築業界で働く一人の建築家として自信がつくなど驚くほど生活が好転します。
仕事をしながら「でも自分有資格者ではないからな・・・」なんて苦い思いをすることもなくなります。
製図試験の勉強は、学科試験と異なり「これすらやっておけば確実に成績が伸びる」というものではありません。
先の見えないトンネルの中でもがく様な得体の知れないストレスに日々頭を抱える読者もいることでしょう。
また高い受講料を支払って授業を受けているのに、実力が伸びる実感が全くないという受講生もいるのではないでしょうか。
各予備校では、現役の一流建築士講師が熟考して受験生を合格させるための工夫・努力を惜しまず全力で指導してくれます。
しかし、ただ予備校から支払われる講義料を目当ての、カリキュラム通り淡々とベルトコンベアのように講義を熟すだけの講師が存在することも確かです。
各週行われる講義を受けても実力が伸びる実感がない事が続く場合は危険信号のサインと受け取るべきでしょう。
約2.5ヶ月で完璧な完成度にするために、どのような対策が必要なのかの指標がどうしても必要となります。
そこで今回は、一級建築士製図試験に必要となる「5つの力」について紹介します。
・これから製図試験対策をする方は、勉強の全体像把握用として。
・現在製図勉強中の方は、勉強内容の確認用と軌道修正用として。
・学科勉強中、これから一級建築士試験を受験する予定の方は先のイメージ作りとして。
このような用途でぜひこの記事を活用してほしいです。
また、製図試験対策中の方の
・勉強が全然安定しない。
・実際に実力が上がっている感覚がない。
・今の対策、勉強法で正しいのか不安で仕方ない。
主にこんな悩みを抱える読者のために、実際に必要となる5つのスキルを確認し、読者自信で自分の勉強の軌道修正ができるようまとめました。
製図試験対策は期間中の1分1秒が貴重になります。
熟読しすぎず軽い確認程度のストレス感で読み進め、この記事を有効に活用し、一級建築士になる準備を整えて下さい。
※この記事は「一級建築士製図試験受験生」向けの記事です。
※8分程度を目安に時間を頂戴します。
製図試験の勉強は、5つの力を伸ばすためのもの
結論から述べてしまいます。
5つの力とは
1.製図を早く、正確に書くための作図力
2.プランニングに必要な建築知識の理解力
3.課題文を読み落としなく正確に読み取る読解力
4.緊張で左右されないエスキス力
5.採点者に伝わりやすい記述を書くための表現力
前提として、製図試験は一級建築士になるための通過儀礼であり、建築知識をただ覚えればいい試験ではありません。
建築知識の確認はすでに学科試験で済ませています。
では、製図試験では何を確認する試験なのでしょうか。
持論になりますが、それは「建築士に必要な総合力、知性、仕事の迅速さ」です。
よく誤解されるのですが、設計のセンスを確かめるものではありません。
与えられた設計条件の中で、より合理的な仕事ができる人に資格を与える試験と言っても過言ではないのです。
僕の経験上、不合格者となりうる要因は次の3つだと考えています。
・特定の勉強にのみ注力し、総合力が欠けた人。
・課題文や法令より、自分のこだわりを貫いてしまう建築知識不足の人。
・必要な手順の習得不足で、時間内に仕事が終わらない人。(ここでいう時間内とは試験時間のこと)
逆を返せば、必要な知識・技術を約2.5ヶ月の間に習得してしまえば容易に合格できてしまう試験です。
そんなことが本当にできるのだろうか?と疑問に思う受験生も多いです。
特に初受験者の方はそう感じてしまうかも知れません。
しかし安心して下さい。
学科試験を通過した者は全員、製図試験を合格できる可能性を持っています。
過去の合格者のデータを「公益財団法人 建築技術教育普及センター」で確認して下さい。
年によって多少のばらつきはありますが
・初受験者合格率は通年約35%〜40%
・既受験者合格率は通年約40%〜45%
結構合格してますよね?
初受験者でも十分合格できる試験であることは、過去の実績で証明されています。
これから紹介する5つの力についてよく理解し、不合格者共通要因を回避することで合格する可能性をグンと引き上げることができるでしょう。
前置きが長くなりました。
それでは、本題に入ります。
1.製図を早く、正確に書くための作図力
合格するためには、絶対にこれが欠かせません。
要求図面にもよりますが、作図は約2.5時間で完成させられるように訓練する必要があります。
少し酷な表現をしますが、練習の段階で作図に3時間かかる人の大半は不合格です。
なぜ2.5時間で描き終える必要があるのか。
理由は2つあります。
1つ目は、試験本番の余計な緊張により手元が狂う可能性があり、多少のタイムロスが発生することを見込む必要があるから。
2つ目は、課題条件によって書く内容が異なり、書き漏れがないかの見直しに30分は使いたいからです。
予備校によっては3時間で指導される場合もありますが、ここ数年の課題は難易度が高く、エスキスや要点記述に時間を取られることが多いです。
前述していますが、試験当日は本来出せる100%の実力を発揮すること自体難しいです。
せめて本試験以外の練習の場では、理想2時間、最低でも2.5時間で作図を完成させられるスキルを身につけて下さい。
2.プランニングに必要な建築知識の理解力
学科試験ほど広域ではないですが、建築知識の学習も重要です。
どれだけ良いプランニングができても、建築知識不足と判断される項目が一つでもあると大幅な減点となります。
最悪、即ランクⅣ判定です。
具体的な知識の補填は各予備校で配布される参考書を元に学習を進めて欲しいですが、特に法規については重点的に理解を深めて下さい。
重要となる項目を複数紹介します。
法規の集団規定
・用途地域(高さ制限、採光の際に注意する程度)
・容積率と床面積
・建蔽率と建築面積
・高さ制限
防火設備関係
・面積区画、竪穴区画、異種用途区画
・延焼ライン
・スパンドレル
避難計画
・二方向避難
・重複距離、歩行距離
構造計画
・断面寸法
・柱、梁の適切な計画
・耐震、地盤計画
機械設備
・空調設備
・電気設備
・給排水設備
学科試験で苦手分野、理解が乏しい部分については予備校講師に質問するなどして早期に潰しておく必要があります。
何を問われてもすんなりと自然に筆が動き、整理できる状態を目指して下さい。
3.課題文を読み落としなく正確に読み取る読解力
僕ら建築業界の人間は、前提として理系です。
文章を読み、理解し、内容を整理する作業を苦手とする人もそう少なくはないはずです。
そこで重要となってくる作業は「マーカーによるライン引き」の作業です。
予備校の指導方法はそれぞれ異なりますが、正直自分が一番理解できる型であればどんな引き方でもいいです。
予備校の指導どおりの型に従い違和感を覚えながら進めると、読み抜かし等の逆効果になる可能性もあります。
僕も予備校で指導された方法とは全く異なる線の引き方で試験当日を迎え、無事合格しました。
大切なことは、読み落としの無いようにどれだけ迅速かつ効率的に引けるかに限ります。
予備校から出される課題を解く上で、もっとこうすればよりわかりやすかったと見直しを繰り返し、自分の型を作り上げて下さい。
4.緊張で左右されないエスキス力
製図試験のエスキスは
・頭を使わないルーティーン化できる部分
・じっくり考える部分
この二つが明確に別れています。
これを理解できていない人=エスキスに苦手意識がある人です。
自分のエスキスにかける時間・労力が大きすぎると感じたことはないでしょうか。
エスキスの時間短縮と出来ばえによって要点記述・作図に大きく影響します。
エスキス力が乏しく、不恰好なプランニングをしてしまった場合
・要点記述で整合性が取れず、辻褄の合う文章が書けない。
・壁量が多くなり、製図にかける時間を悪戯に長くしてしまう。
最低一週間に二問は解き、自分のエスキスをチューニングしていく作業を習慣づけて下さい。
5.採点者に伝わりやすい記述を書くための表現力
読解力でも説明した通り、我々は前提として理系です。
僕が受け持ってきた受講生を見ても、文章を読む作業と同様書く作業を苦手とする受験生も多いです。
そこで重要となるのは、文章構成をテンプレート化し、何を問われてもその型で回答する癖をつけることです。
僕の現役時代にも実際に使用していた型ですが、その型とは「主語→目的→工夫」の順で記述することです。
例えば、アプローチについての記述要求があった場合
・主語:メインアプローチと管理アプローチの配置については
・目的:利用者導線と管理導線を明確に分離させるために
・工夫:メインアプローチを東側に、管理アプローチを西側に配置した。
たったこれだけで良いです。
記述は長く書きすぎると、出題者が求めている回答から遠ざかり、書きながら自分が何について書いているかがわからなくなってきます。
もしそれが短すぎる文になる場合でも、まずはその型通りに書いて下さい。
余白が半分以上になってしまっても、全く心配する必要はありません。
同程度の文章をもう一つ考案し、「また、」で繋げてしまえば対策できます。
要点記述に関しては、どれだけ言葉の引き出しを持っているかが鍵になります。
ぜひ通勤時間等の隙間時間を活用し、知識量をどんどん増やして下さい。
おわりに
いかがでしたか。
今回は、一級建築士製図試験の合格に必要な5つの力について紹介しました。
1.図面を正確に2.5時間で仕上げる作図力
2.法規を中心とした建築知識の理解力
3.自分なりの「マーカーによるライン引き」を完成させ、課題文を読み落としなく正確に読み取る読解力
4.頭を使わないルーティーン化できる部分、じっくり考える部分を明確に区分するブレないエスキス力
5.文章構成をテンプレート化し、辻褄の合う記述が書ける表現力
この5つの力を身に付けることが出来れば、どんな課題が出題されても対応できる受験生になれます。
定期的にこの記事を読み返し、対策しきれていない自分の弱点を見つけてそれを補うように勉強していただきたいです。
特に初受験の方は、何をどのように対策していいか、何が自分の苦手な分野なのか理解することすら難しいでしょう。
この記事を読んだ読者全員が一級建築士になれるよう祈っています。