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連載:お寺の女性の今、そしてこれから [17] 「お寺マダム」運営者の「リンゴ」さん

こんにちは。未来の住職塾の松﨑香織です。

この連載では、お寺で生活する女性のウェルビーイングを大切にするために、さまざまなお立場にある、お寺に暮らす女性のお声をお届けしています。第17回目のゲストは、浄土真宗の坊守(真宗寺院の住職の配偶者)・若坊守の方が集うオンライングループ「お寺マダム」を立ち上げられ、匿名でご活動されている「リンゴ」さんです。

取材・文 ● 松﨑香織 

ゲストプロフィール:
リンゴ(「お寺マダム」運営者)
浄土真宗寺院の若坊守(若嫁)
東海地方在住のアラフォー、3人の子供の母。
在家からお寺に嫁ぎ、「もっと自分のことを赤裸々に話して悩みを共有したい。成長できる場があればいいのに。」との思いから、匿名性のオンライングループを立ち上げる。
著書「浄土真宗のお寺の奥さん50人に聞いた お寺のリアル

日常の悩みや学びを分かち合う、オンライン交流の場づくり

リンゴさん 私は浄土真宗寺院の副住職に嫁ぎ、若坊守となって7年になります。お寺はさまざまな可能性に満ちていてやりがいもある一方で、自坊のやり方はこれで先行き大丈夫なのかな、こんなとき他のお寺はどうしているんだろう……と悩むことの多い日々でした。お寺へ来る前はバリバリ働いていたので、留守番仕事とのギャップに戸惑うこともあったりして。でも、お寺内部の込み入ったことを近所のお寺さんと話すのはなんだか憚られて、誰とも悩みを共有できず孤独に感じていました。

 そんな折、世間ではちょうどオンラインサロンが流行り始めて参加してみたところ、「ネット上でもこんなに有意義な交流ができるんだ!私も、自分と同じような立場でお寺に暮らす全国の方と交流したり学び合ったりできるグループを作ってみたい」と感じるようになりました。それを機に昨年末より構想を練り始めて、今年から「お寺マダム」として活動しています。

――具体的にはどのように交流されているのですか?

リンゴさん 普段はLINEのような専用SNSアプリを使って、20名ほどのメンバーの皆さんとやり取りをしています。ビデオ通話ツールのzoomを使ってオンライン上でおしゃべりすることも。Zoom会は子供の寝かしつけが終わる夜9時以降にスタートすることが多いですね。外部講師の方に入っていただいて、視野を広げられるような学びの機会を持つこともあります。なかなか気軽に外出できない方が多い中で、オンラインツールはお寺向きだなと感じています。参加費は皆さんで必要経費を出し合うような形で780円の月額制にしました。

 お互いの住んでいる地域や名前を知らないからこそ安心して本音で話せることもあると思うので、基本的に皆さん匿名で参加いただいています。私も素性は明かさず「リンゴ」というハンドルネームを使っています。

――メンバーの方々は『お寺マダム』での交流をどのように感じていらっしゃいますか?

リンゴさん
 皆さん、すごく居場所に思ってくださっているようです。初めの自己紹介の時点で既に「そのような境遇で頑張っていらっしゃるんだ〜!」とお互い勇気づけられたりして。「みんな同じなんだな」と心強く思うこともあれば、「そんなやり方もあったんだ!」と新たな気づきもあり、ワクワクします。私からトピックを投げかけて情報やアイディアを交換し合うこともありますし、メンバーから「いついつにこういう企画が開催されるみたいだよ」と耳寄りなお知らせが投稿されることもあります。一人で情報を取りに行っていた頃に比べて毎日がとても充実してきました。

誰にも聞けなかったことを、ザックバランに話し合える

――同じ目的や悩みを持つ仲間ができるのは嬉しいことですね。いつもどんなトピックをやりとりされるのか、興味があります。

リンゴさん
 本当に様々なことを話しています。たとえば、季節の宗派行事ごとに今年の状況はどうだったか情報交換をしたり、「寺報やホームページをどうやって作っていますか。wifi環境どうしていますか」といったことや、「訃報のお電話をお受けした時にどのような言葉をかけていますか」というようなやりとりもあります。つい先日の話題は「信仰と立場のギャップ」でした。公にはなかなか語れませんが大切な話です。総代さんとの関わり方について話した時は、総代会の頻度や内容など、他のお寺がどうされているのか初めて知ることができました。「檀家さんのお宅へ読経に伺う時、どんなカバンで行きますか」なんていうことも聞けたり。

 日常のちょっとしたことなんだけど、でも一人で困っていたようなことを気軽に話してアドバイスをもらえると、日々やっていることに自信を持てるようになるんですよね。

かつて自分が欲しかった情報を、発信してみたい

――そこには日常の支え合いがあるんですね。「お寺マダム」の存在意義が伝わってきました。今後、グループでさらにどんなことをしてみたいですか?

リンゴさん
 在家からお寺へ嫁ぐことが決まった頃、「寺・嫁ぐ」でよくネット検索をしていたのですが(笑)、情報がなさすぎて不安を感じていたので、お寺でのリアルな生活に関する皆さんの話をいつか電子書籍にまとめてみたいなと思っています。

 お寺での働き方の改善も考えたいよね、という話題も出ています。皆さん口を揃えて「次の世代に同じ苦労をさせたくない」とおっしゃっていまして……。家族で運営していると、例えば寺内ミーティングがなくて情報共有がうまくいかない、企業の「社員研修」や「業務の引継ぎ」にあたるものがない、などさまざまな課題を感じます。寺内環境を整えるための良い方法を考えていけたら、という思いを皆さんと共有しています。
 お寺での日常に悩んでいたり、今やっていることについて気軽に相談できて一緒に成長できるような場が欲しい、というような坊守さん、若坊守さんがいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご参加ください。

――お互いへの共感でエンパワーし合いながら、解決策や学びを得られるとても大切な場になっているのですね。素晴らしいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

この連載記事は、大正大学地域構想研究所BSR(Buddhist Social Responsibility)推進センターが毎月発行する『地域寺院65号』に掲載されました。
地域寺院は、これからの地域社会に必要とされる寺院の在り方を探る情報を発信する月刊誌です。
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インタビュアー プロフィール

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松﨑香織:一般社団法人未来の住職塾 理事。米国Fish Family財団 JWLI (Japanese Women’s Leadership Initiative)フェロー。役員秘書として銀行の経営企画に10年間携わったのち、ロンドンの非営利組織にてマーケティングに従事。2014年より未来の住職塾ならびに塾生コミュニティ(現在約650名)の運営に携わる。全日本仏教会広報委員会委員、WFB(世界仏教徒連盟)日本センター運営委員会委員。

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