3-2-2-3システムのビルドアップを実践【サッカー現場の話】
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今まで長く慣れ親しんだチームメイトや、一緒に多くの時間を過ごしてきたコンビが変わり、新しいチームとして歩み始めた時、チーム力が一時的に下がることは、サッカーの世界ではよくある話です。
そんな時期が今年も訪れました。
しかし、まさにそんな時期だからこそ、新しいチャレンジに取り組んでみる価値があると思いました。
その一環として、3-2-2-3システムのビルドアップに挑戦しました。
私がやりたいからやる訳ではなく、選手のキャラクターや能力を考えたときにこの戦術が機能しそうだなと思ったのが大きな理由です。
選手各々の特性に合わせて形を変えつつ、少しずつ練度を高めてきました。そして、相手の動きに合わせて細かい調整を加えられるようになってきたのです。
この3-2-2-3のビルドアップがうまくいった時の話、そうでなかった時の話を共有しようと思います。これも自分自身へのフィードバックの一環として、皆さんにも参考にしていただければ幸いです。そんなわけで、これらの経験をnoteに記しておきたいと思います。
▪️システムの話の前に
よし!早速4-3-3から3-2-2-3へ可変してこうやって前進して行くぞ!と言う話を初めから選手にはしませんでした!
システムの話をする前に促したことがいくつかあります。
まずはビルドアップで見えた課題としては、悪い意味で縦に速かったことです。
こんな光景が何度も見られ、ボールを前進させて相手陣内で押し込んでプレーすることもままならない状況でした。
そして忘れてはいけないのは、相手陣内へ前進するプレーのやり方はわざわざ後方でボールを繋いで前進するやり方だけではありませんね。相手の背後に長いボールを蹴り込んで抜け出す。セカンドボールを回収して前進する方法も当然あります。
そこもしっかり頭の中には持ちながらも、チームが目指すコンセプトや、シーズンの時期を踏まえて、しっかり後方からショートパスやドリブルを織り交ぜて前進するやり方を採用しました!
話を戻します。
まずは何を選手たちに促したのか?
それは
こんなことをハーフタイムに促して後半へ送り出しました!急に試合の話?あ!すいません!ある試合のハーフタイムからこんな話をして後半選手をピッチに送り出しました。
そして後半。自陣からしっかりショートパスを織り交ぜて、相手の前からのプレッシングをしっかり受け止めて、頂点の選手の縦パスを起点にレイオフで中盤で前向きを作り出すことに成功。そしてそこから一気に相手の背後をついて、最後は左サイドをドリブルでぶち抜いてシュート。そのこぼれ球を右サイドの選手がしっかり詰めて1点を返すことができました!
残念ながら後半はこの1点しか奪えずに、前半負った2点のビハインドに追いつくことはできずに1-2とゲームは敗戦してしまいました。
しかしDFラインで横パスを増やし、横へ横へ動かす意識を促しだけで、前半よりも無理に縦パスを差し込んでボールロスト!そしてショートカウンターを受ける!というシーンは激減することができました。
選手たちも少しの手応えを掴んでくれた感じで嬉しかったですね。そして次の試合ではもう少し戦術的な話を加えて、よりビルドアップを改善することができました!
▪️『SBの立ち位置を調整』
次の試合からボールを持った際のDFラインの立ち位置を調整しました。
ボールを保持した際に、一方のSBはDFラインの内側に絞らせて後方を3バックに。そしてもう一方のSBはその選手のキャラクターや相手のプレスの出方に合わせて、高い位置をとってWGになるのか、偽SBとなり中盤でプレーするのか、ある程度自由度を持ってプレーさせました。
SBがこのポジションを取れると一気にビルドアップの幅が広がるし、個人のプレー選択の幅が広がるんですよね。ぜひSBの皆さんはこのポジションをとってみてほしいです!
より詳しいSBの立ち位置の話はこちらで!
そしてこのミーティングをした後、選手たちはピッチ上で少しの迷いもありながらも、この後方の立ち位置を実践してくれました。
すると1試合目とは見違えるほどのボール保持率。そして相手の出方をしっかり把握した後方のボールの動かし方が出来る様になりました。
だいぶゆったりボールが動くように!
相手のプレッシングが[4-4-2]だったということもあり、SBが内側に絞った3バックになったことで、構造的に相手のファーストプレスの2トップにプレスが噛み合わずに時間とスペースにゆとりが出来ました。それも自分達がゆったりとボールを持てた要因となったはずです。
しかしゲームの結果はスコアレスドローに終わりました!ボールを保持する時間は確かに倍増しましたが、ゴールを奪うことはできませんでした。ボールを保持する時間が増えたことで相手の攻撃機会を割くことにも繋がり失点をしなかったことは収穫でした。
しかし最終ラインでボールを持っていることが多く、相手のブロックを掻い潜りファイナルサードへボールを運ぶ機会は少なかった!そんな内容となりました。
次の試合ではこの試合で見えた課題を改善すべく、次のテコ入れをしてみました!
▪️大外からのチェンネル侵入!
3試合目。
2試合目同様にボールを保持した際の最終ラインの立ち位置は継続。次に実践してもらった戦術が大外からのチェンネル侵入です。
幅をとるWGがボールを持ったら、IHもしくはトップの選手は相手のSBの背後であり、CBとSBの間のスペース(チャンネル)へ走り込んで相手の背後をとり前進する戦術を実践してみよう!と話をしました。
この時期チームとしてペナルティエリアの外。サイド深いエリアをとってからゴールへ迫る!というコンセプトを持っていました。
そのエリアから攻撃を実行すればカウンターを受けにくい!またはゴール前の力やドリブル力を養う上でもそのエリアを取ろう!という狙いがありました。
また相手が4-4-2ブロックだったこともあり、このチャンネル侵入が見事にハマり、前の試合よりもボール保持率も高めながらゴール前へ侵入する回数も増すことができました。
前半2点、後半2点とり見事4点奪い勝利!ボールを支配しながら自分達の思い通りにゲームを進められると楽しいし、選手たちの自信に繋がりますね。
サイドを深く抉ったことで、ボールロストした際のトランジションでのボール回収率も上がり、より攻撃が分厚く。二次攻撃、三次攻撃も見られるようになったのも収穫でした。
続けて4試合目も同じような展開で、5-0と大量得点.無失点で勝利を収めることができました!
▪️より奥も意識したビルドアップ
さぁこのいい流れのまま5試合目!と行きたいところでしたが、また課題が!この試合対戦した相手の守備ブロックは[4-2-3-1]、[4-2-1-3]という陣形でした。
そうなると後方を3バックにした我々の最終ラインにプレスが噛み合い易い構造となり、ビルドアップの基盤となる最終ラインが今まで以上にプレスを受けることとなりました。
それが結果としてショートカウンターを受ける要因に。ボールを保持した際にCBが最終ラインで見事にプレスを喰らい、アシスト0でGKと1vs1を作られ失点してしまいました!
しかしその後前半のうちに選手たちは焦ることなく相手の出方をしっかり把握。前から出る相手の背後をいつも以上に狙いながら、サイドを深くとって同点ゴールを奪ってハーフタイムを迎えることが出来ました。
【ハーフタイム】
選手たちに相手のプレスはどういう構造?
と質問したところここ数試合と相手のプレスが何だか違う。ここ数試合に比べ最終ラインにプレスがかかりやすい!そんな答えが返ってきました。
そこでまずは相手が前からプレスに出るんだったらどこかが開くよね?最終ラインが窮屈だったら反対にどこかのエリアが開くよね?そんな話を促してみました。
どこのスペースが開くと思う?
中盤と背後が開くかな?中盤を使った前進をしたいのならば、2CH(アンカーと偽SB)に縦パス→横パスもしくはリターンで前向きを作る方法。
またはその奥も。最終ラインの背後も開くかな?
IHの選手をより高い位置に上げてセカンドボールを拾っての前進。または相手SBが下がるWGに食い付いたら、そのSBの背後を狙った前進も狙ってみよう!相手が4バックなのでサイドチェンジも効果的かもね!と話を締めくくりました。
ここ数試合に比べて、相手の出方も踏まえてより奥を意識したビルドアップはどうかな?という話もハーフタイムにしました。
後半に入ると相手は前半同様に前がかりにプレスをかけてきました。それを逆手により狙いを持って奥を意識したビルドアップを選手たちは実行。すると狙い通り自陣でボールを引っ掛ける回数が減り、相手のプレスをひっくり返しよりゴールへ迫る回数を増やすことに成功しました。
後半2点を加えて見事逆転勝利を収めることが出来ました!
▪️ボールの離すタイミング。どこでプレススイッチが入るのか?把握できていたか?
後方そしてより奥も意識したビルドアップも披露することができ、より自信を深めて迎えた6試合目。
挑む相手は超強豪チーム。サッカーファンなら誰もが知っているチーム。個の力は圧倒的に不利!果たしてどんな内容、結果になったのでしょうか?
この試合も後方はSBをやや内側に入れた3バック。アンカー脇に偽SBを採用した[3-2-2-3]の配置で挑みました。相手のボール非保持の配置は[4-4-2]。ラインはハイラインで前からアグレッシブにプレッシングをかけてきました。
相手が[4-4-2]ということで、3バックになったことで後方は噛み合わない構造に。
しかし相手は数的優位を運動量とスピードでカバー。構造上は不利でも個人の質でカバーしたり、上回ったりするのもサッカーの面白いところであり、難しい要素。
相手の圧力に圧倒され終始自陣でボールを引っ掛け、なかなか前進することが出来ない状態に。
そしてこの試合で新たな課題が浮き彫りになりました。それはボールを離すタイミングです。相手のプレスに圧倒され、ボールを取られたくない意識が強すぎたのか、ボール保持者が悪い意味ですぐにボールを離してしまったことです。
相手がプレスに来てないのにパスを味方に。そしてパスを受けた味方がプレスを喰らう!そんなシーンが目立ちました。
確かにボールをパスした選手はボールをロストしていないですが、「ボールを渡した次の選手がプレスを受けてしまえば、それは良いボールの離し方ではないよ!」と選手たちにはつくづく話していることです。
また簡単にサイドへボールを散らすのも良くなかったのは反省!相手のプレスのかけるエリアはサイドにボールが入ったところでした。3バックの中央の選手や、GKがボールを持ったときはややプレスが緩む。
中央の選手からサイドにボールが入ったときにプレスのスイッチが入ることを選手たちは多分感じてなかったと思います。襲いかかるプレッシングに逃れることに頭がいっぱいになってしまったのでしょう。
こんな感じで終始相手のプレッシングを食い続けて、結果0-3で敗戦してしまいました…
▪️おわり
チームの潮目ということもあり、新たなチャレンジを選手たちに実践してもらいました!収穫と課題が毎試合ありとても実りあるチャレンジになったと思います。
実践してより相手を伺いながら。自分達の立ち位置を意識するように。そしてやっぱり個人で打開したり、プレッシングの際には個人が無理できると相手は脅威になるよね!と選手たちは個人の力の大切さも肌で感じてくれたと思います。
そして特にSBの選手がグンと伸びましたね。やや内側に立てるようになり。その立ち位置を知ったことでグンと伸びた選手が出てきました。
スキルが上がったというよりも、技術の使い方を変えたと言いますが、技術や判断、認知などが整理されて持っているスキルをより発揮できるようになった感じだと思います。
前よりもミスも減りましたし、より自信を持ってプレーするようになり、チームとしても重要な役割を担うまでに一気に成長してくれました!
またカウンターを喰らう機会も減っていきました。SBをやや内側に絞った可変3バックでビルドアップが安定しただけでなく、カウンター時に後方に3人のDFが待ってくれていることでカウンターの耐性もアップしました!
最後に。ある程度ゴール前に前進するまでの流れをこちらで決めさせてもらったこの期間(ゴール前、サイド深くまでボールを運んだらある程度自由度は渡しながら)。
やっぱり自分の役割が明確になると判断も早くなり、ミスも減っていきました。
最後は相手の出方に合わせて、状況に合わせてピッチ上で選手たちが柔軟にプレーしてもらえることが理想です。
しかしそうなてもらう段階として、チームとしてのコンセプトや制限を加えて試合をしてあげる重要性を今一度感じる期間にもなりました。
はい!自由にプレーしていいよ!ということはあまりしないので(カテゴリーやレベルに応じて必要な時もありますよね)。いつも大枠は渡して選手たちにはプレーしてもらってます。その枠の広さを今まで以上に狭くし、段々とその枠を広げていくのもいいなと体験することが出来ました。
▪️この戦術を1年間ブラッシュアップ!
それではこの次はこの[3-2-2-3]陣形のビルドアップを1年間続けてどうブラッシュアップしていったのかお話していきたいと思います!
より深い話を書いておりますので参考になると思います!
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