金爆ギャでいたい話。
2024年7月21日 日曜日。
今日、私は有明にある東京ガーデンシアターでゴールデンボンバーのツアーファイナルに参戦した。
タイトルは『金爆はどう生きるか~意外ともう結成20周年ツアー~』。
誰でも盛り上がれて真似出来るダンス『女々しくて』で瞬く間に人気者の仲間入りを果たした、エアーバンドのゴールデンボンバーは今年ついに結成から20周年を迎える。
ファンクラブ加入をファン人生スタートと考えるのなら、私は2012年からのファンなので12年間彼らを追ってきた。
一応、金爆のギリギリ半分以上を知っていることにはなる。
それでもテレビに「おもしれーヤツらがいるぞ!」とその存在が見つかり始めていたと記憶しているので、女々しくての大ブレイクの予感がしていた頃にファンになったという方が私としては良いような気がする。
とはいえ、12年間毎日強火の愛を燃やしていたわけでは無い。
彼らにいわゆるガチ恋をしていたのは、5年ほどだったと思う。
ステージ上から見えもしないのにきちんと化粧をして。
ダイエットにも手を出そうと、とっくに旬を過ぎたビリーズブートキャンプを買ってみたりした。
昔は私もちゃんと女の子だった、なんだか気恥ずかしい。
そして、SNSで友人を作ろうと躍起になった。
当時はTwitterがそこまで一般的ではなく、メンバーが更新していたアメーバブログ(アメブロ)に登録して駄文を書き散らしては、共感してくれる心優しいファンの人達と交流していた。
そういえば今も文化として残っているのか分からないが、アメブロには『ペタ』というブログの訪問を投稿者に知らせる機能があり。
特にメンバーの誕生日には、日付が変わった瞬間の0:00にペタを残すという静かで熾烈な争いがあった。
普段から人とのコミュニケーションに苦労しているのに、必死にライブ会場で普段会うことの無い同士に溶け込もうと会話をしてみたこともあった。
ノリだけで全く知らない人の集合写真にも入った。
たった1人、SNSでものすごく仲良くしていた遠方に住んでいる方と仲良くなり。
その方と実際に会場で会った時は、思わずハグを交わしたことは今も鮮明に覚えている。
今考えればファンらしいファンでいようと必死になっていたな…と思う。
時は流れて、12年後の私。
逆に潔いノーメイク、ファン用のSNSもやっていないのでもちろん友達もいない。
完全に1人参戦。
昔みたいにダイエットもしていない、極めて普通の中肉中背20代終わりかけの一般女性である。
今回は現地で買ったタオルを使うつもりで来たのだが、想像以上の長蛇の列に命の危険を感じて物販を諦めた。
代わりに会場の近くにあった無印良品で適当なフェイスタオルを購入した。
最悪、回す曲をやった時に使えればなんでもいいと思った。
なんだったら、V系バンドのライブに無印良品のタオルで参加するやつの方がロックな気もした。
そんなことも考えたが開場を待つ間、たくさんの金爆のファンとすれ違った私は自分が中途半端だと打ちのめされていた。
程度の差こそあるが、皆それぞれのメンバーカラーを身にまとっている。
きちんとメイクもしている。
対して私は、ギターの喜矢武豊さんが好きだと言うのにメンバーカラーである緑は何一つ身につけていない。
服だけは『金爆一家』という過去の深夜番組に合わせて発売された、公式ではあるもののまともな大人なら来て歩くのにまぁまぁ勇気がいるガチ⚫︎ピンTシャツを着ていたけれど。
周りの人達の情熱に触れた私は、チグハグな自分が浮いているような気がして少し嫌になった。
そんな気持ちになったせいで、思い出す。
私はこのライブで上がろうとしていた事。
20周年を見届けて、初めてのツアーファイナルも見届ける。
これ以上ないタイミングだし、やっぱり今日が金爆との最後の日になるかもなと思いながら席に着いた。
ライブが始まる。
張られた幕の裏にメンバーのシルエットが映るとそれだけで反射的に泣きそうになった。
今日は前から10列目以内と近く、しかも1番好きな喜矢武さんのいる上手側だった。
久々に肉眼で顔が分かる距離で本当に嬉しかった。
ライブを見ていて「あぁ…やっぱりどうしても辞められないな」と思った。
金爆のライブは、本当に楽しい。
普段、聞き返されやすい私でも信じられないような大きな声でメンバーの名前を呼べる。
コール・アンド・レスポンスが出来る。
普段どん臭い私でも、曲が流れれば体が全て覚えていて滑らかに動き出す。
昨日今日放送されているような27時間テレビのキラキラ輝く高校生達とは真逆で、私の学生時代はじめじめしていて仄暗かった。
でも、それをゴールデンボンバーに照らしてもらって共に乗り越えてきたのだ。
ゴールデンボンバーだけが、私がちゃんと息をしている生き物だと分からせてくれた。
私の少ない陽の部分を引っ張り出してくれた。
簡単に手放せる相手では無い。
『女々しくて』の終わり。
4人がステージの真ん中でポーズを決めると、金テープが勢いよく発射され宙を舞ってだんだん落ちてくる。
見上げてゆっくり高度が下がってくるそれに手を伸ばして掴もうとする間、いつもその時だけはまるでスローモーションのように見える。
前方の席の時にだけ感じられる贅沢で不思議な瞬間だ。
掴んだテープにはいつもメッセージが書いてある。
『生きていてさえくれれば、細かいことはどうでもいいよ。』
見慣れた鬼龍院翔さんの文字が目に入る。
この人はいつもそうだ。
また会える時まで生きていろとか、体も心も健康にとか。
そうやって、越えてはいけない生と死のラインを絶対に越えさせまいと言葉や音楽で私を引き止めてきた。
私は、見た目も心構えも愛し方も何もかもが多分誰よりもずっと中途半端だ。
それでも、この先も彼らのライブに行って、彼らと共に息をして歩んでいきたい。
全てが完璧な素晴らしいファンでは無いかもしれないけれど、これからも私は金爆ギャとして生きていきたい。(了)
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