マツクランジャタイ~あぁ再演だぞう~の話。(全体の感想編)
驚きと興奮の一夜はあっという間に明けて、いつも通りの現実の中にいる。
それでも、私の頭の中はアカネの金髪と赤いドレスとハイヒール。
伏し目がちでありつつ、芯の強さを感じる目元。
そして、全く知らないはずのタバコと大人の女性を感じる香水が入り交じった、彼女による彼女だけの魅惑の香りがやけに鮮明に焼き付いている。
このままアカネさんの話をしようと思えばできるけど、今回は前回に引き続き『マツクランジャタイ~あぁ再演だぞう~』の全体を通した感想編。
思い出しながらダラダラ書いていきたい。
オープニング
マツモトクラブさん(以下、マツモトさん)がカメラを回しながらランジャタイの2人と話すところの映像からスタート。
中心は『マツクランジャタイで何をやるのか』という話題。
撮影されたのはR-1の芸歴制限撤廃が決まった年のようだ。
しかし、ランジャタイから「R-1を棒に振って臨め」と言う旨のことを言われていて笑った。
撮影日が変わり、確か比較的直近の日付だった気がする。
結果、マツモトさんは準決勝で敗退してしまったらしい。予言だったのか?笑
途中、伊藤ちゃんの字幕が元を意識しすぎていたり。
満身創痍のマツモトさんの真っ白なコルセットが面白くて、国ちゃんが撮影したりと色々あって本編へ。
第一部 アナザーストーリー
第一部では、先の記事にも書いた通りランジャタイ2人のエッセイからよりすぐりのエピソードを原作にしたコントが続いた。
伊藤幸司著『激ヤバ』より3作品、国崎☆和也著『へんなの』より2作品…だったと記憶しているが間違っていたらすぐ教えてください!
タイトルに付く()はその原作の著者です。
「バレンタインデー」 (伊)
私が国ちゃんの演技力に衝撃を受けたと同時に、ついに3人に生での対面を叶えた最初のコント。
伊藤ちゃんの小学生時代の思い出である。
マツモトさん演じる先生からチョコを受け取る練習をするところが面白かった。
女子生徒役で出てきた伊藤ちゃんを見て、「この人あの本を書いたんだ」と思ったと同時に「テレビで見るよりガタイがいいな」と余計なことまで思った。
ナレーションの伊藤ちゃんの声と読み上げられる文章がマッチしていた。
伊藤ちゃんのお母様の優しさを感じられた。
「セーラームーンが街に来る」(国)
国ちゃんの少年時代を書いたエッセイの中でも特に私が好きな話である。
りえちゃんという友達を伊藤ちゃんが、少年の国ちゃんをマツモトさんがそれぞれ演じた。
これはほぼ原作のままだったのだが、国ちゃんが演じるケツアゴのチープすぎるタキシード仮面の暴走にこの公演中1番笑った。
セーラームーンの列に並ぶ架空の子供を連れてきてサインを渡したり。
ケツアゴで歩いたり回転したり。
色紙をブーメランにしてケツアゴとおしりでキャッチしたり。
ここは私が知っている国ちゃんだと思って謎に安心してしまった。
最後にめちゃくちゃに書かれた色紙にまた笑った。
「まことちゃん」(国)
まことちゃんとは、国ちゃんの子供の頃からの友人である。
原作はベース程度に使われ、内容は国ちゃんがサラリーマンの設定で作られたコント。
国ちゃんの一人芝居が光りすぎていた。
井上陽水の『少年時代』があまりにもコントを彩りすぎていて、笑うのも忘れてしまった。
電車を降りたまことちゃんに周りの乗客を気にすることなく、スーツ姿で吹っ切れたようにまるで子供の頃のまま全力で飛び跳ねて手を振る国ちゃんの演技の振れ幅に感心のため息が漏れた。
正直これも良い舞台でしたと言いたい。
恐るべき国ちゃん。
「19回目の夏の君へ」(伊)
伊藤ちゃんの一大決心を書いた話で、恐らくランジャタイのファンなら皆が「あの話ね笑」ってなるやつ。
やっぱり、国ちゃんが演じる伊藤ちゃんは似ている。
ほぼ真逆の人格を演じていると言っても過言では無いのに、なぜそんなに上手いんだ。
オリジナルで足されていた、お医者さんのマツモトさんと看護師の伊藤ちゃんのイチャイチャが面白かった。
やっぱり、女子の役は伊藤ちゃんしかいない。
女性役が上手すぎる。
余談だが、伊藤ちゃんを見ていると何となく垢抜け前の中学生の女子の姿が私は思い浮かぶ。
贅沢なジブリ音楽の使い方に笑った。
「アナザーストーリー」(伊)
2021年のM-1決勝進出が決まってからのランジャタイの話である。
『激ヤバ』の中でも屈指の名作だと思っていて、この舞台化はかなり貴重だと思う。
伊藤ちゃん役を国ちゃん。
国ちゃん役をマツモトさん。
タクシー運転手役を伊藤ちゃん。
という配役だった。
コントの中で伊藤ちゃんが言ったことを運転手が同じように言う場面があるのだが、声が似すぎていて笑ってしまった。
国ちゃんと伊藤ちゃんがそれぞれ寄せているのだと思うけど、本当に似すぎ。
もうどっちが喋っているのか分からなくなった。伊藤ちゃんのトーンの再現力が高すぎる。
隙あらばボケようとする2人にマツモトさん、素で笑っちゃってた。
毎年国ちゃんは好きな芸人さんである深見千三郎さんのお墓の前で、その年1番良い出来のネタを披露し続けていた。
それにこの年、伊藤ちゃんも誘われたのである。
このコントで最も思い出に残ったのは、M-1決勝の再現である。
当時の放送では、センターマイクに向かう前に一瞬国ちゃんが伊藤ちゃんの背中に触れるという場面が映った。
そのほんの少しの所作をやった。
国ちゃん(マツモトさん)が伊藤ちゃん(国ちゃん)の背中に触れたのを見た時、「おぉ!」と興奮した。
漫才の入りの国ちゃんはマツモトさんが演じていることを忘れた。
一瞬、私もあの時のM-1の会場にいた気がした。
その当時のファンからしたら涙なしで見られなかったのではないだろうか。
第二部 木綿のハンカチーフ
太田裕美さんの名曲『木綿のハンカチーフ』を元に作られたコント。
いや、でもやっぱり私はこれに限っては
「すごく良い舞台だった!!」
…と言いたい。
そのレベルのクオリティだったのである。
笑いどころはチラホラあるのだが、全体的な時間としては作品を見入ってしまう割合の方が多かったと思う。
以下、配役。(敬称略)
ヨウヘイ・・・マツモトクラブ
主人公。
就職のために田舎から都会へ出てきた男性。
田舎へ残してきたさちこと交際している。
さちこ・・・ランジャタイ伊藤
ヨウヘイの彼女。
田舎に残りヨウヘイのことを待つ女性。
アカネ・・・ランジャタイ国崎
ヨウヘイが訪れた大人のお店で歌う妖艶な女性。
ヨウヘイのことを「マツモト」と呼ぶ。
しゃばぞう・・・しゃばぞう
ヨウヘイとさちこの幼なじみ。
ヨウヘイからの手紙をさちこに渡しに来ている。
最初はヨウヘイが都会にいる間、さちこを守ると意気込むが…
あぁ~しらき・・・あぁ〜しらき
アカネの行きつけのお店のママである…たぶん。
内容は「木綿のハンカチーフの歌詞から膨らませた物語」なのだが、出てくるキャラクターの個性がそれぞれちゃんとあったのが本当に素晴らしかった。
さらに物語にちゃんとメッセージが込められているのも感動した。
最後にあぁ〜しらきさんが出てこなかったら、私はお笑い芸人を見に行ったとはもう思えなかったかもしれない。
私は木綿のハンカチーフを初めて最後まで聞いた時、なんて酷い男なんだと心から都会に染まった男を軽蔑した。
勝手に遊び人だと認定までした。
しかし曲の聞き手にはたったの約4分間だが、曲の中では季節がどんどん変わっている。
実際は時が経てば環境も考え方も関係性も変わるという事は、誰しも少なからず経験することだろう。
待っている女性だって、木綿のハンカチーフを最後にねだるが実は他に良い人が既に居たかもしれない。
それを考えた上で、アカネさんのウィスパーでハスキーで優しさを含んだ「居場所が見つかるといいね」というセリフは沁みた。
あのオチから、国崎和也脚本だろうなと思ったがそこに持っていくまでの話を書けるというところにまた国ちゃんの凄さを感じる。
(共同で練った部分もあるのかな?)
待つ側の女性の解釈は私には思いつかなかったところだ。
そして、「マツモト(マツクラ?)さんにしか演じられない」という言葉通り、マツモトクラブさんの演技は見応えがあった。
もう俳優さんだよ、マツモトさん。
バイプレイヤーの道もどうですか?
味のある役大体できそう、犯人とかも行けそうだよ。相棒とか出てそうだよ。
最後に出演者が全員出てきて写真を撮らせて貰えて嬉しかった。
あぁ~しらきさんも初対面だったのだが、本当にあの格好で嬉しかったし面白かった。
伊藤ちゃんは三つ編みをぶんまわし続けていたので、ほとんどブレた。
国ちゃんは最後まで「アカネさん」だった、プロだと思ったし彼の美学を感じた。
マツモトさんはニコニコしていて、楽しい時間になったのだろうなとこちらも微笑ましかった。
客席中がスマホを構えている最中、しゃばぞうさんが「喋ることがない」と笑っていたのが印象的だった。
終演後の話
私がこれまで見てきたランジャタイとは全く違う人を見たのではないかと、帰り道は信じられなかった。
しかし、TPさんのXの写真を見たらやっぱり知っているランジャタイだった。
幕間の映像について3つ思ったことがある。
マツモトさんが、R-1の舞台に立ってもランジャタイにお金を借りていることを知って正直驚いた。
マツモトさんでそれなら、私が今年の3月に見に行った地下芸人さん達は一体どうやって生活をしているのだろうか。
頭の片隅で密かに気になった。
マツモトさんのネタ、もっと見たいしR-1もいつか優勝して欲しい。
サブリミナルのように挟まれていた名古屋の手相のおじさんには何を言われていたんだろう。
特に伊藤ちゃんは何を真面目に聞いていたのか本当に気になっている。
マツモトさん行きつけのお店で『田園』を歌う国ちゃんと『悲しみの果て』を歌う伊藤ちゃんが流れた。
2人とも歌上手いのね。
普通にもっと聞きたいと思った。
これが私とランジャタイとマツモトクラブさんとの初対面の思い出。
最初に生で見た彼らの姿である。
とんでもない才能に触れて、印象がまたガラッと変わってしまった。
私はまた振り落とされてしまいそうだと思ったが、最後の回で続編があるような情報があったので出来ればその時までしっかり掴まっていたいと思う。(了)