人生一度きりしかないんですよ。知ってましたか?
「人生一度きりしかないんですよ。知ってましたか?」
職場で最も信頼しており、これまでの人生史上最も魅力的であり、片想いしている自分の気持ちなんてなんのその、満面の笑みで朝9時に市役所に婚姻届を出したことを伝えてきた同僚に、最近言われた言葉だ。
なんでこんなことを言われたのかというと、簡単にいうと僕が退職を考えていた(同僚は退職が決定している)からだ。
僕は、腰が重い。
重すぎて同僚からはチクチク嫌みを言われることもあった。
かの有名な、【チーズはどこへ消えた?】を読んだことがあるか聞かれ、現状はあの本のある登場人物と似ているとご指導を受けたことがあるくらい、「さっさと行動しなさい!」のメッセージが送られ続けてきた。
そして、腰の重い僕を動かすために最後に言われた言葉が
「人生一度きりしかないんですよ。知ってましたか?」だった。
正直、この言葉を言われた時ちょっと考えさせられた。
考えさせられたことがバレたくなかったため、「知らなかった^^」と冗談で返した。
人生一度きりしかないと頭でわかっていても、自身の思いを貫きとおせる人は極一部だと思う。
僕は思いを諦めたどころか、それ以前の人間で、何がしたいのかが具体化できていないから、いつもぼんやりと人生を生きている気がする。
仕事で一流になろうとは思うもの、どう一流になるかは具体的にイメージできていないし、そもそも「なんで自分だけこんなに働いてるんだよ・・・」とか、「仕事つまんないな」とか思うこともあったりで、仕事で一流になることが本当に自分の願いなのか?とか思う時もある。
「億万長者になったら何がしたいか?」
と聞かれたら、「好きなバンドのライブに世界中を旅しながら行き続けること」だが、そのためにお金を稼ごうとも思わない。
あくまで、お金があったらという話だ。
その上、なんでも楽しいんじゃないの人生って?とか思っちゃうところもあるから、さらにたちが悪い。
かと言って、向上心が0でもなく、自分がこれだと思う分野は思いっきり掘り下げたいというタイプだ。
つまり、自分のことが30も半ばを過ぎたにもかかわらずよく分かっていないのだろう。
ただ部下に、同僚が「人生一度きりしかないんですよ。知ってましたか?」と言っていたことを伝えた時の彼のコメントには思うことがあった。
彼のコメントはこうだ
「人生一度きりとか・・・、若いな。子供や家族がいたらそんなことは言えなくなりますよ。」
ちなみに、部下と同僚は4歳ほど部下が年上だ。
若いというのは、精神的未熟さのことを言いたかったのだろうか。
部下のコメントに対して、僕はこう思った。
「人生一度きりだからこそ、自分も家族も幸せでいられる道を全力で探すべきなのではないだろうか?」と。
別に、人生一度きりだから自分の好きなように生きればいいと同僚は言いたかったわけではないと思う。
一度きりだからこそ、自分の幸せについて本気で考え、それを実現しようとする覚悟を持つべきだと言いたかったのでないだろうかと思う。
その観点から言うと、僕は部下の方が精神的に未熟だと思った。
「理想論だけじゃご飯は食べられないんですよ!」と彼の怒りの言葉が聞こえてきそうだが、そう言われたら言われたで「じゃあ、現実に文句は言えないね」なんてことを思ってしまうので、また怒られそうだ。
部下の子供は3歳になったばかりで、ちょっとした英会話を習わせているらしい。
僕は、これも一種の理想の押しつけだと思う。
子供に英会話を習わせることが義務であり、何かを我慢して子供に英会話を習わせているわけではなくて、自分の理想の子供像を追い求めて、結果英会話を習わせているのだから。
どこかで何かを諦めつつも、完全に全てを諦めた人はそういなくて(全くいないわけではないけれど)諦めたことを語る時に、現実を理由にするのは常套手段だ。
部下のコメントを聞いて、めちゃくちゃ失礼なことは承知だが、彼の家族はかわいそうだと思ってしまった。
だって、彼の言い訳に使われているんだもの。
家族のために何かを我慢しているとしても、その道を選んだのは自分なのに、まるで誰かに強制されたかのような物言いをしてしまっている。
確かに現実があまりに厳しすぎて、何かのせいにしたくなる時はあるだろう。
それでも、可能な限り他責にしないことが人生を幸せに生きる上で大切なんじゃないかと思う。
かと言って自分を責めなさいと言っているわけではなくて、なんだろう、今の自分の状況が嫌なら何か行動を起こしてみたらいいんじゃないかな?と思う。
何かのせいにして我慢したり、自分を責めたりするよりは、自分のこと好きになれると思う。
今回、退職の意向を社長に伝えた際、多くの人に引き留められてびっくりした。
個人的には、「あ〜ハイハイ。お疲れ。代わりの人間に引き継ぎよろしく〜^^」という対応を受けると思っていたので、焦って転職活動をやっていた。
誤解して欲しくないのが、僕が有能だと言いたいわけではない。
ただ、この瞬間会社が辞められるとまずいだけで、時期がずれていれば、あっさりさよならなんてこともあるし、僕個人のことなんか知ったことかで、会社都合で引き留めているということもわかっている。
ここで言いたいことは、何か思うことがあるならば、結果に対する先入観は捨てて、勇気を出して行動を起こしてみることが大事なのではないかということ。少なくとも個人的に退職の意向は伝えて正解だったと感じた。
なぜならば、自分が思っていたより会社が腐ってはいなかったと感じることができたからだ。もちろん、それでも信用しきれない部分は多々あるが、真面目に誠実に仕事をしている人間が中枢にいることが確認できただけでも、行動を起こした価値はあったと思う。
ただ、もちろん行動した結果残酷な目にあう時もある。
例えば、僕の部下も退職するのだが(どんな会社やねん・・・というのは置いといて笑)彼は誰からも引き留められなかったし、むしろ退職してくれた方がありがたいという空気もあった。
彼がそうなってしまった理由は、彼だけのせいではないと思うし、ただ彼の行動がそうしたのも事実だと思う。なんせ、転職先が決まった彼の今1番の関心毎は定期代をどうやってちょろまかすかということなのだから。後は、どうにかボーナスをもらえないか業務時間中にネットサーフィンして情報を集めたりだとか。
色んな意味で残念だが、それを責めても何らいいことがないので、好きにさせている。
退職するかどうかを社長に報告するまで一週間の猶予をもらった。
なんだかんだ退職しないのか、コロナで業界がダメージを受けている中なんとかして自分の新しい居場所を見つけるのか、それはわからないけれど、
「人生一度きりしかないんですよ。知ってましたか?」
の言葉を胸に刻み、できるだけ後悔のない選択をしたいと思う。