「絶対恋人にしたくないけど、友人としてめちゃくちゃ仲良くなりたい」と言われた夏の終わり
はい。
タイトルが全てです。
僕の悲しみの叫びを聞いてください。
相変わらずマッチングアプリガチ勢を目指している僕は、19時からお茶をする約束をしていたので、待ち合わせのカフェに向かっていた。
デサントのTシャツとハーフパンツを着て。
どうだろうか?
僕はこのTシャツをめちゃくちゃ気に入っている。吸湿性、着心地ともに素晴らしく夏にピッタリかつ、何よりデザインが可愛い。
だが、大半の人には「良さがよくわかんない」と言われた。
しかも、今回待ち合わせの相手は会社帰りなのでスーツだ。
方やスーツ、方やデサントTシャツ+ハーフパンツ。
周りからすると、「なんだこの2人?」となる可能性が高いにも関わらず僕はデサントTシャツを着て行くことに決めた。
何故そんなリスクを犯すのか。
それは、「自分という人間を簡潔にわかってもらえる」と思ったからだ。
僕はこれまで何度か、いや、まぁまぁの回数見た目と性格のギャップでフラれたことがある。
「もっと大人しいかと思った」
「もっと優しいかと思った」
「もっとまともだと思った」(まともってなんですか・・・?)
今ではもう聞き飽きてしまい落ち込むどころか、今回は「もっと大人しいかと思った」が理由ですか〜。^^
なんて、相手が自分を拒否した理由を冷静にカウントできるレベルになってしまった。
話を戻そう。
そう。ギャップでがっかりさせるよりは、最初から自分はこう言う人間ですということがわかってもらえる方がお互いの為だと判断したから、あえてリスクがある服装で向かった。
「早めに着いたから、先に入っておくね^^」丁寧なメールが待ち合わせ相手から届いた。
まずい・・・。カフェの入り口で待ち合わせだったなら、僕のことがダメな場合、相手は「あっ・・・。(察し)ごめんね〜ちょっとタイプと違ったみたい」とその場で別れを告げ、タイプではない人間と強制的にお茶をするという最悪なイベントを回避できたし、自分も気まずい空気の中義務感でお茶をせずに済んだのだが・・・。
ただ、先に入ってしまったのなら仕方がない。
覚悟を決めて突撃するのみだ。
めちゃくちゃ汗をかいていたので、1番涼しくなれそうな飲み物を頼んだ。
その飲み物の名前は「アイスミントルイボスティー」だ。
もう名前を聞いただけで清涼感が半端ない。
でも、味が想像できなかったので万が一の時を想定してシロップも持っていった。
甘けりゃなんとかなる、というのが雑な味覚を持った僕の持論だ。
店内をうろうろしていると、写メにはなかったメガネをかけていて、写メよりも若く見えるが、きっとそうだろうと思える人物を見つけた。
おずおずと、「お待たせして申し訳ありません」と伝えると。
「いえいえ^^」と紳士的な対応。
良かった。第一審査は突破できたようだ。最悪、相手のタイプじゃなければ「人間違いじゃないですか?」と言われてしまい、「こっちが待ち合わせ相手とわかって言ってるだろ?」と思いながらも「すみません」と謝らざるを得ない強制敗北になることだってある。
しかし・・・、相手の表情が若干引きつっていた。
視線を追いかけてみると・・・、そこにはあった。
デサントの文字が・・・・!
「あ〜!これはまずいパターンに入りましたね〜^^」
脳内実況者がうるさい。
デサントTシャツの存在をかき消すように、笑顔で言った。
「今日も暑かったですね^^」
「そうだね。ところでその飲み物何?」
「アイスミントルイボスティーです^^」
よし、デサントTシャツから意識をそらせた。
と思ったが、表情は相変わらず暗い。
ですよね・・・。
僕も初めて飲みますわ、アイスミントルイボスティー。
いや、でも暑さをどうにかしたいんですって。わかってくださいよ。
気まずい空気をシロップの甘さで緩和したいと思ってアイスミントルイボスティーを飲むと、これが思いの外美味しかった。甘さと爽やかさという一見対立しそうな要素がうまく調和していた。
相手も僕の表情に気づいたのだろう。
「美味しそうだね^^」とさっきまでの空気とは違って柔らかい表情を見せた。
最悪なスタートから、ぽつりぽつりと会話を進めていった。
会話は主に仕事の話で、お互い人間関係に苦労しているという共通の悩みもあった。
話が進むにつれ、お互い音楽が好きという話になった。
これはチャンス!と思って熱く語ってしまったことが運の尽きだった。
「僕、曲を理解しようとする時、時代背景やアーティストの精神状態を調べて、何故この歌詞になったのか?このフレーズで何を表現したかったのか?とか考えるの好きなんですよ。そういう視点で聴くと深く曲を理解できる気がするので。」
僕がまくしたてるように喋った後、一瞬の沈黙が流れた。
そして、奇妙な生物を好奇心に満ち溢れた目で見るように、僕の顔をまじまじと見つめてきた。
「君・・・。ビートルズ好きってアプリの紹介文に書いてたけど。あれ、建前でしょ?もっと色んな音楽好きでしょ?」笑いながら言われた。
ばれた。
自分の好きなアーティストを言っても「知らない」と言われることがほとんどなので、会話を成立させるために「とりあえずビール」と同じ感覚で「とりあえずビートルズ」と言っている。いつか、ロックファンに懺悔しなければならないと思っている。
「そんな風に、曲聴く人あんまりいないよ^^」まるで、クックックとでも笑いそうな表情だ。
「ですかね?」怪訝そうな表情で僕は返したのだが、満面の笑みで返された。
「いないね^^」
「君さ、勢い凄いね。彼氏振り回すタイプでしょ?^^」
否定できないのが、悲しいところだ。
「どちらかと言えば、そうです」最大限ぼかしながら答えた。
「例えば、振り回したエピソードどんなのがあるの?^^」
振り回したエピソード・・・。ぱっと思いつかなかったが、価値観が大きく違うなと感じた話があったので語った。
「僕、誕生日に祝われなくても平気な人間なんですよね。
でも、元彼はめちゃくちゃ誕生日を大事にする人で。
日付変わった瞬間、誕生日おめでとう!ってメールしてくる人間なんです。
でも、おめでとうの意味がよくわかんなくて、僕。
いや、例えば僕がジョン・レノン(ビートルズのメインボーカル)だったらおめでとうですよ。たくさんの素晴らしい曲を作って、多くの人に良い影響を与えて、生まれてきてくれてありがとうなんですよね。
でも、僕はですよ。特に何か素晴らしいことをやってるわけでもないし、まぁただ生きてるだけなんですよね。だから、おめでとうって何がめでたいんかわからんのよねぇ、祝う必要あるんかねぇ?って元彼に言ったんですよね。
じゃあ、無茶苦茶悲しそうな声で「人の心無いの?」って言われたんですよね」
爆笑された。
そして
「いやいやいや、やばいね〜君。絶対付き合いたく無いわ。疲れそうやもん^^」
こちらが何も言っていないのに、強力なATフィールドを展開された。
やっぱつれぇわ・・・。全然タイプじゃない人に言われるのはノーダメージだけど、話が合いそうな人に拒絶されるのは、やっぱつれぇわ・・・。
なぜこんな性格に育ってしまったのか、ロックンロールに出会わなければこんなことにならなかったのか・・・。
落ち込んだ表情の僕に気づいたのか、次の瞬間思ってもなかった言葉が聞こえた。
「アプリでの出会いって少なからず下心があるじゃん。
だから、この人とはないなって思った瞬間、会話したくないし、早く帰りたいなってなるわけ。
でもね、君みたいな人間初めてだよ。
付き合いたくないけど、めちゃくちゃ友達として仲良くなりたい。だって、めっちゃ面白いもん^^」
泣けた・・・。
いや、彼氏を探すということに関しては完全に敗北したのだが、なんだか泣けた。
「あ・・、ありがとうございます。そんなこと言われたの初めてです」
素直に嬉しかった。
「君と話してるうちに、デサントTシャツがカッコよく見えてきたもん^^」
あ・・・。やっぱりデサントTシャツダサいと思ってたんだ・・・。
1時間くらい話した後、そろそろ帰ろうかということで別々に帰路についた。
家路の途中で、アプリにメッセージが届いた。
確認すると、さっきお茶をしていた人からだった。
「今日は楽しかったよ、ありがとう。今度、ご飯食べに行こう^^」
嬉しかった。
正直友達でいいのなら、ゲイに限らずノンケ(異性愛者)でもいいはずだ。
以前にも記事に書いたと思うが、ゲイの世界では
友達 > 彼氏 > セックス
難←←←←←←←←←←←←←←←易
の順に難易度が上がる。
なので、今回の件はとても光栄なことだった。
体と体の関係が付き合いのメインとなってしまうようなゲイの世界で、普通に人間として興味を持ってもらったことは自信にも繋がった。
ただ、やはり思ってしまった。
自分には何故色気がないのだろうか?と。
マッチングアプリガチ勢になるために超えなければいけない課題だと思われるので、色気の正体についても今後考察していきたいと思う。