アイライナーの間違った使い方
私がビューラーというものを知ったのはもう20年も前だ。当時はホットビューラーなど知らなかったから、よくドライヤーで温めてはゴムをダメにしていた。
今では100均でさえホットビューラーが買える。でも私はいまだにドライヤー派だ。
そこでふと思った。ビューラーの代わりにアイライナーは使えないか。
ためしにそのままやってみたが、どうもうまくできない。それどころか、なぜかまつ毛に変な色がついてしまう。
というか持ちづらい。持ち方を変えていろいろやってみても、やはり手や鼻に変な線が描かれるだけだった。
やはり温めたほうがいいのだろうか。
ドライヤーで温めてみた。持ちやすさはさほど変わらないが、まつ毛に色がつくことはなくなった。
しかし、肝心のビューラーの代わりは果たせていない。何度鏡を見ても、使用前と使用後で差があるとは思えなかった。
念のため写真を撮って使用前後の画像を重ねてみたが、やはりほぼ一致した。
何がいけないのかわからない。途方に暮れた私はそこであることに気付いた。
「ホットアイライナー」という商品は存在しない。
ということは、もしこれを売り出せば市場を独占できるはずだ。ホットアイライナー開発者として有名になる未来を想像し、私はにわかにやる気が出てきた。
まず問題点を整理しよう。
1つ目。そのままではまつ毛や手が汚れてしまう。
2つ目。持ちにくい。
そして最大の問題は、ビューラーの代わりにならないこと。
1つ目の問題点は温めることで解決できそうだ。いずれホットアイライナーとして売り出すことを考えれば、この問題はクリアできたと言っていいだろう。
持ちにくいことについては、デザインを変えれば何とかなるはずだ。私は人間工学には詳しくないのでどんなデザインがいいのかはわからない。これは誰か詳しい人に頼もう。
そして最後の難題。アイライナーがビューラーの代わりにならない。
そもそもビューラーはどうやってまつ毛をカールさせているのか。私は友達を観察したりメイク動画を検証したりして研究した。
そして私はついに発見した。ビューラーは手でまつ毛を持ち上げることでカールさせていたのだ。
この発見で、ようやく何がいけなかったのかわかった。
アイライナーではまつ毛を撫でるだけで持ち上げてはいない。だからビューラーの代わりにならなかったのだ。
では、どうやって持ち上げればいいか。
ビューラーは物理的な力を使う。しかしアイライナーでは力が足りない。
私はここで発想を変えた。物理的な力が足りないのなら、化学的な力にしたらどうか。
覚えているだろうか。最初に失敗したとき、まつ毛に色がついたのを。色がつくだけで、カールしなかったことを。
つまりアイライナーは物理的な性質は変えずに、化学的な性質を変えられるということになる。
アイライナーの成分を「まつ毛がカールする物質」に変えればいい。そうすれば力を使わずにすむ。
しかし私は化学には詳しくない。そもそもそんな物質があるのかどうかさえわからない。
もうこれは私の手には負えない。
ん…?というかそれマスカラじゃね?
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