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【映画】『敵』を観た話
FFさんからオススメされて、映画『敵』を観てきた。
映画館はシネ・リーブル神戸。好きな映画館。
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原作は筒井康隆氏の小説。未読だ。
主演は今(元)教授やらせたら日本一の名優・長塚京三氏。
この初老の元フランス文学の教授の一人暮らしぶりがいい。
風呂場のシーンで見せる氏の裸体がまた素晴らしい。
当然年相応にくたびれてはいるのだが、それでも引き締まった腹とかは憧れる。
ああいうふうに身体も年老いたいなと。
全編モノクロなのだが、年季の入った日本家屋といい、教授が作る簡単な男やもめ料理といい、陰影に富む美しさがよく映し出されている。
話は、夏から始まり秋そして冬を越してやがて春を迎えんとする季節の移り変わりとともに、ゆっくりとまた唐突に、狂っていく。
その様がじわりと怖い。
夢と現を行ったり来たりしながら、亡くなった妻、元教え子の女性、Barの仏文専攻の女子大生と、教授の下衆もまた姿を現す。
しかし結局現実の教授は双眼鏡で覗くだけの傍観者で、夢の中でのみ行動を起こすがそれもまた悪夢として覚醒する。
さて「敵」とは何か?
僕はやはりわかりやすく「死」なのかなと。
それも一人で迎える死。
死は確実に来るがいつどうやってくるかはわからない。
その死に対して教授は残高=寿命と見立てて、計画的な死、すなわち、自死で人生を終えようとする。
最終的にどのような死に様だったかは明らかにされていないが、敵が死ならば、どうあがいても勝てないのが道理。
そこに対して遺言書できちんと後始末をつけた時点で、教授はなんとかイーブンに持ち込んだ気がした。
で、あとは任せたと。