見出し画像

『遙かなる時空の中で7』感想/乱世と武士、そして運命。

“ならば、そなたが乱世を鎮めてみせよ”
主人公は山の中の神社の娘として育った、現代の女子高生。

ある日、実家近くで怨霊に襲われたところを、駆けつけた若者に助けられる。
真田幸村と名乗るその若者は、時代劇のような甲冑を身にまとっていた。
次々と姿を現す、戦装束の男性たち。
山中の怨霊は増え続け、ついには町につながる唯一のトンネルまでも塞いでしまう。

その原因は異世界の龍脈の乱れ。
異なるふたつの時空がつながり、幸村たちの暮らす異世界から現代へ、
怨霊が流れ込んでいるのだという。

事態を解決するため、主人公は幸村たちとともに異世界・戦国へ向かうことに。
そこでは戦乱が続いて龍脈が乱れ、天下は荒れ果てていた。

かつて信長の居城だった安土城の跡を訪れた主人公は、
自分が信長の娘であり、この城で育ったことを思い出す。

父・織田信長が残した最後の言葉を胸に、
少女は怨霊はびこる乱世を駆けていく――

(*公式サイトより)

 順番が前後するかたちで記事を掲載することになると思いますが(すでにフルコン済みのゲームがあるにも関わらず我慢できずこちらの記事に着手している関係で)、今回は『遙か』シリーズ待望の新作『遙かなる時空の中で7』の感想記事になります。個人的には無印からプレイしているシリーズになるので(発売後かなり経過してシリーズに追いついたかたちですが)、今回はどんなお話になるのかと楽しみにしていました。舞台となる時代も戦国時代ということで、とうとう戦国時代を舞台にするのか……と思っていたこともあり、発売日に早速プレイした次第です。

 特段ネタバレを含まない感想というかわたしの気持ちの話なんですが、もともとコーエーから発売されている『戦国無双』シリーズが好きなのもあり、製造ラインは違えどコーエーの香りを感じることのできる味付けになっていると嬉しいななどと思っていたので、今回の『遙か7』はかなり満足行く内容になっていました。では以下にネタバレ込みの感想を綴って行きたいと思います。

真田幸村(CV:寺島拓篤)

「ですが、それでも。私は、あなたに神子の使命を果たしていただきたい」

 一番はじめに攻略したのが彼、真田幸村でした。わたしの『遙か7』感想のほとんどすべてが真田幸村という男への感想に収束してしまうのではないか……と思いつつも書いて行くのですが、彼のルートで描かれたすべてが期待以上というか、ある意味では想像通りというか、真田幸村という男を描く上で一番正しく、そして一番魅力的な書き方で始終シナリオが進行していたかと思います。『遙か7』は構成上五章まではすべてのキャラクターの共通が展開され、それ以降が個別のシナリオになるんですが、彼のルートをプレイしている時、一体彼をどこに着地させるシナリオになるのだろうかとそればかりを気にしてプレイしていたことを覚えています。

 兄である真田信之との離別であったり、あるいは蟄居先である九度山での暮らしであったり。彼の生涯について少しでも思うところがあれば、そこは……と思わず顔を覆いたくなるようなフレーズを終始ぶつけられるルートになっていました。こんな要素がありながらも、でもなんだかんだ、史実の通り大坂の陣で討ち死にするようなことはないんだろう、ギリギリのところで史実から分岐して命を繋ぐ、あるいは間一髪のところで七緒の神子としての力を用い現代へ飛ぶようなエンディングになるんだろうなどと思っていたのですが、そのすべてを否定するように展開していくシナリオには嬉しくもあり、同時に真田幸村という人が今後迎える終わりを思い、胸を詰まらせたりしていました。

 ここまで来るとそれぞれのシナリオ感想などではなく、とにかく『遙か7』の真田幸村の中にはわたしがこれまで触れてきた『戦国時代』シリーズの真田幸村の気高くそして残酷な遺伝子が流れていました……という話になってしまうような気もするのですが、七緒との関係性も美しく描かれていたと思います。歴代『遙か』シリーズにも通ずるポイントだと思うんですが、とにかくドラマチックにふたりの関係が描かれているところに特に好感を抱きました。

 八葉として同じ青龍を戴くものである五月と比較すると彼という人間を語りやすいと思うんですが、幸村は序章でもすでにその立ち位置を表明しているんですよね。異世界に行くことを反対する五月に対して、「危険から守り、庇護するだけが愛情ではないと思います」「その覚悟を認め、運命を受け入れることもまた彼女を思うことであるはずです」という台詞を口にするんですが、後の幸村自身の運命を知るかのようなその台詞に、わかっててこの台詞を言わせてるんだろうな……と初周時にも感じ取ったほどでした。五月ルートが七緒を白龍にさせない、と抗う内容だとしたら、幸村ルートは「それでも、自分には努めるべき役目があり、責任を負っている」が七緒だけでなく、幸村自身の人生も表しており、久しぶりに乙女ゲームをプレイしてここまで泣いたなというレベルで声を上げて泣きました。『遙か7』が行った真田幸村というキャラクターのデフォルメ化(歴史上の人物からキャラクターとしての落とし込み方)が物凄く上手いと感じたルートでした。

 幸村、兼続、三成の三人で酒を呑むシーンに、まさに、幸村という人はこういう人なんだよなと思わせる台詞があるので最後に引用したいと思います。ここの掛け合いが、すべてを知る存在である石田三成の口から恨み言としてではなく、ただ事実を噛み締めるように出てきたこともほんとうに胸がいっぱいになりますね。兼続のことを糾弾するために口にしたわけではなく、戦の張本人でありつつも、どこか俯瞰するような物言いになって出てきたことが。

「そうだ、幸村は最後まで義を曲げぬだろう。こいつはそういう男だ」
「俺もひとりの人間だ。迷いもすれば、過ちも犯す。義の権化などではないぞ」
「いいや。俺は知っている。真田幸村は最後まで義を貫くと」

天野五月(CV:鈴村健一)

「悪いけど、お前の思いどおりにはさせない」
「このまま、違う名前のまま死なせてなんかやらないよ」

 幸村の感想でも綴ったのですが、地の青龍として幸村とは真っ向から対立する価値観で以て七緒と対峙するのが五月です。八葉であり星の一族、だけで留まらず七緒の家族として、五月は七緒が白龍になることを時にとんでもない方法で拒みます。まさか、ネオロマンスでヒロインの目の前で術士をフルボッコにしたり、浄化を行い白龍の力を使わないように軟禁したり(現地だけでなく現世に帰還させて時空的にも距離取らせてますしね……)する兄(将来の夢は公認会計士)を見ることができるとは思わなかったです。

 彼のこの突き抜けた方法は彼の双子の兄である石田三成改め天野三鶴が幼い頃に時空を超えてしまったことも関係があると思うんですが、本編通して五月が三鶴と再会することが叶うのは五月ルートのみになります。兼続ルートなど、五月が作ったお札を見て五月を懐かしむ三成が見られたりと、匂わせ系のイベントはあるものの、ふたりが同じ場所に集まるのは、五月のルートのみになります。ルートの数だけ石田三成は史実の通りに死に、永遠に再会は叶わない……と思うと、五月ルートだけでも共に現世に戻るエンディングがあってもいいんじゃないか、と思うんですがさすがそこは石田三成。五月の隙をついて、現世から戦国の世に舞い戻ります。この後、一体石田三成としてなにをしたのか、または現世に戻ったのか……はすべて推測の域を出ないものの、石田三成としてやるべきことをすべて終えて、たとえ何年のタイムラグが発生しようと、現世に戻ってくるんだろうなと思うとようやく取り戻すことができた五月の家族に安堵します。これで五月まで現地残留エンディングだった場合、天野両親……と顔も知らない両親に同情を寄せてしまうので……。辛すぎませんか? 息子ふたりが異なる時空に攫われてしまうの……。

 大和も同様に現世組ですが、五月はより、七緒をひとりの少女として幸せにしたい、幸せになってほしいと願っていたのではないかと思いました。だからこそ、白龍になってほしくないと願い、白龍になってしまった後はなんだかとんでもない手段で七緒を神の座から引き摺り落としたりしてましたし。代替わり、など、七緒が乱世で生まれたことなどを利用した展開もあり、楽しくプレイできました。

宮本武蔵(CV:阿部 敦)

「姫様への想いを心にオレはこれからも歩き続けます。ずっと、どこまでも」

 共通ルートでは宮本武蔵なのに試合で勝ったこともない、二刀流でもない……などと大和から散々な言われようでしたが、まさにそこに言及した(というかそこにフューチャーした物語構成にしたかった)のが武蔵ルートでした。ルート終盤では大和と巌流島で会おうと約束をしたなど、皆が知る剣豪・宮本武蔵に近づいていく様子にはワクワクさせられます。

 武蔵の師匠改め足利義輝ですが、意外なことに足利義輝に味方をしたため共に討たれた神子に関する話は特に出て来ずだったので、どこかわたしが見ていないBADエンドなどで言及されているのだろうか……などと思った次第です。

 物語終盤でまさかの引き留めなしに、エーッ!? と驚いたんですが七緒の選択如何ではこのまま離別エンドがあるという容赦のなさにさすが旅をする男だ……と思いました。乙女ゲームの旅をする男、数年単位でヒロインを放置しがちじゃないですか? わたしの観測圏内での話になってしまいますが。

佐々木大和(CV:岡本信彦)

「俺、ひとりぼっちにはならねえ気がする」
「どうせ、お前が今日みたく追いかけてきてくれるだろ?」

 宮本武蔵と対になる朱雀にして名字が「佐々木」。なぜ気がつかなかった! と終盤の流れを見て膝を打ったんですが、いますよね、もちろん。佐々木小次郎。大和がまさか小次郎枠だとは思わなかった……。その原因は彼が現代人であることだったんですが、確かに誰も大和が戦国の世に居残らないとは言ってないんですよね……。上手いこと騙されたな、と最後の最後で感心しました。先入観を利用して、こう展開していくかと。確かに佐々木小次郎って一説によるとほぼ伝説みたいな立ち位置なので、説得力もありますしね。

 さてそんな大和ルートなんですが、現代では多趣味という名の無趣味、飽き性で何事にも本気になれず共に暮らす父親とは疎遠……というキャラクター付けになっているんですがそんな彼が剣の道にのめり込むことで物語が進行して行きます。これが歌や踊りであれば剣呑なことは起こりようもないのですが、剣の道は魔の道も兼ねるのか、剣に関する事件も起きつつ大和ルートは進行して行きます。

 そんな彼の剣の腕については、七緒のモノローグが印象的でした。七緒のモノローグにて(私も武道をやっていたからわかる。あんな動き、数ヶ月どころか数年やっても身につくものじゃない)(――天才でもなければ)とかなり序盤で語られているんですが、今思えばそれこそが剣豪として後世語られることとなる佐々木小次郎としての第一歩だったんだろうなとも思わされました。鍛治師から刀を受け取らなかったのもそうですが、将来佐々木小次郎という伝説になることが運命付けられている大和には、彼を彼たらしめる「運命の刀」があって当然だろうという点も踏まえ、すべて知った状態で読み直してみるとこんなにもわかりやすくお膳立てされていたんだ……と感じたりもしつつ。彼のルートでちらりと七緒について「ほら。お前、無表情だと顔キツいじゃん。表情があるほうがいい」と言われているのもなんだか好きでした。「おかしい。大和より、私のほうがよっぽど大和に詳しいなんて」という七緒の台詞がありますが、お互いの目線を借りることでより鮮明に浮かび上がってくるものが大和だけでなく七緒にもあるのがいいな、と。

黒田長政(CV:立花慎之介)

「神子して重荷を背負うよりも花として過ごしているほうが似合いだ」
「穏やかに微笑み愛でられる存在として生きる。……その方が楽なのでは?」

 シリーズ通してプレイされている方はなんとなくわかると思うんですが、これまで白虎の男を好きになる傾向になるわたしがやはり案の定ほしいものを読むことができたな……と思ったのが黒田長政でした。黒田の話に関しては別ジャンルでも好きなキャラクター(というか刀ですが……)がいるので折に触れて読み解いてきたものではありますが、長政に関しては確かにお家騒動に関する話もありますが、とにかく序盤の舐め腐った態度が物凄く好きでした。

 これもまた『遙か』シリーズのお家芸というか伝統というか、絶対に一作品にひとりはこういう八葉いるよね、という話になるんですが神子に対して神子をやめろだとか神子に向いてないだとか、そういうことを口にする男が物凄く好きなんですよね。今後どんなシナリオ展開でヒロインを神子として認めていくのか、またどんな苦難がその男に降りかかるのか……など考えれば考えるほどに好きな要素しかないんですが、長政はまさに序盤でやってくれましたね。引用した台詞もですが、事あるごとに童女童女とからかうところとか。すべて恋愛感情や好意に紐付いて自分を苦しめることになる台詞を重ねる様は、まさに嬉々として見詰めてしまいました。

 今思うとその下りで出てくる「魂が入っていなくても仕方ない。七つまでは神の内とも言うしな。これから育てばいいことだ」という長政の台詞には、神の内か……といろいろ考えさせられますね。その後その台詞が自分に跳ね返ってきて「お前が、本当に七つの童女だったら俺もいくらか楽だったろうに」という台詞になるのも含めて。過去の自分の言葉に縛り付けられたり、過去の自分の言葉にしっぺ返しにあったり、そういった身から出た錆的な展開が大好きなので……。

 また長政ルートでは、今作がどうして最終的には史実をなぞってしまうのか(数人の命は救われているものの戦の大局は変わらないため)というところが如実に語られていたように思いました。「お前に止められる戦があるとすれば…それはこれから何十年も先の戦だ」という長政の台詞もありましたが、すでに蓄積してしまった膿は爆発すべくして爆発しているのであって、今から患部を処置したところでどうしようもないんですよね。確かにルートによって岐阜城が落ちたり、落ちなかったり、転封されたり、そもそもお取り潰しにあったり……といろいろありますが、それによって関ヶ原には大きな影響は出ていないわけで。結局神子であっても人の子には違いないのだから、これから先影響を与えるとしたらそれは先々の話になるだろうという語り口が乱世を象徴しているようで好きでした。七緒と長政はわりと短期間で再会できましたが、長政は恐らくは最悪の場合も想像する男だと思うので、かなりの期間七緒と再会できないことも視野に入れていたんだろうな……とも思い、だからこそ、「その生涯の終わりには他ならぬ俺が誉めてやるさ」「たとえそれが遠い空の下にあってもな」という言葉になって現れたんでしょうね。改めて振り返りをすると、長政、如何にもないい男でしたね。

直江兼続(CV:竹本英史)

 「……君は俺の心に吹いた香り高い一陣の春風だった」 「君が一生分の夢を見せてくれたから俺はこの先も重い荷を背負って生きていける」

 長政ほど直接的に神子として認められない、と口にするようなキャラクターではないものの上杉家の執政としての立場以上に八葉としての立場を重んじることはできない、自分を使いたいのならその気にさせてみせろと挑発してくるこれまた『遙か』シリーズ恒例の白虎ムーブをかまして来ます。そういった意味ではわりと長政と感想が共通してしまう部分があるのでその部分に関しては割愛しつつ……。

 少なくとも、長政と兼続を比較した時に顕著になる部分は、共通部分が終わり、個人ルートに入った時ですよね。長政は七緒の立場(神子としての立場ではなく織田家の姫としての立場)を引き合いに出し、通じているはずの思いを確認することすら拒みますが、兼続の場合はそこら辺は特に問題とならず。と言うのも、織田家も上杉家同様に立場としては三成寄り(現状)だからなのですが。この点、白虎枠をこのふたりにしたことが凄い采配だな……とキャラクター発表があった際にも感じました。兼続は即座に米沢に七緒を連れ帰るので、ふたりのルートを連続で見ると物凄く楽しいだろうな(対比として)と思います。長政ルートでは童女からひとりの女性に、兼続ルートでは頼りない神子から頼もしい才女へといった具合に。兼続ルートの七緒が和歌を引用しての言葉に和歌で返答したり、教養が見られるところも物凄くよかったです(わたし自身に教養がないので選択肢を選ぶ時に若干迷いましたが)。だからこそ、最終決戦前(と、その時は思っていた)に兼続の思いを聞き出そうとした七緒が「兼続さん本人の言葉で聞かせてください。和歌も駄目、漢詩も駄目ですよ」と窘めるのが効くんですよね。

 シリーズ通して、様々なものに喩えられる神子ですが兼続のルートではバッチリ天女になっており、その点においても楽しくプレイができました。別メーカーのゲームだと恥ずかしくなるような呼び方も、ネオロマがやるとあれ不思議、これを待っていた! になるんですよね……これを見るためにプレイした! とばかりに……。「君は、本当に神の遣わした存在だったんだな」という台詞はほんとうに見たかったを凝縮したような台詞だったので、芋を片手に真面目な顔をしているという話の流れを知らなければ物凄いシュールなスチルなんですが、そんなことがまったく気にならなかったです。

 とは言え、初回で幸村ルートを攻略してしまっている身としては兼続が「実を言えば、君にはずっと神秘的なものを感じている」など台詞を口にする度に実はあなたが腕に抱いている神子、龍神そのものです……という気持ちになり、兼続ルートでも龍神になってしまう展開があったらどうしようと真剣に考えました。兼続を二人目に攻略したので、青龍独自の展開だとまだ思っていなかったので……。共通ルート明けてすぐに双方に恋愛感情があること前提でルートがはじまったこともあり、今までにないテイストで楽しいルートでした。

阿国(CV:四反田マイケル)

「……光慶。明智光慶……君に憎まれるべき存在だ」
「……出会ってからずっと君をだましていた」

 これまで何度か『遙か』シリーズの様式美について語って来ましたが、阿国はまさにもうひとつの様式美である「泣く男」です。これまでシリーズを通してひとりはいたであろう泣き枠なんですが、さすが泣き枠、泣きに足る武器を引っ提げて堂々の登場です。そうだよね、この時代だし、いるよね、許嫁……! とプレイしはじめて思いました。そもそも阿国というキャラクターにさらに明智光慶を上掛けしてくると思わなかったんで、そこも驚きポイントでした。こう、なんだか今回こういった属性の重ね掛けが絶妙で上手いな……と思うところが多かった気がしております。後述する宗矩に関してもそうなんですが。

 阿国ルートの物語の主軸はずばり「家族」なんですが、明智と織田の確執を描かずにそもそもそういった確執を生む根底にある家族という共同体への帰属意識や義務感からの解放だったのでこういう話になるかと退屈せずに読めました。やっぱり分かりやすい仇討ちの構図になってしまっている以上、そういう話をメインに据えてくるのかなと思いやぶさかではなかったのですが、細川ガラシャを引き合いに出すかたちで家族という共同体から解放され、ただの阿国として生きていくという結論に達したところが物語として爽やかだと感じました。そこに足利家というひとつの共同体に執着している平島義近をぶつけてくるところがいいバランスでしたね。

 余談ではありますが、彼のルートくらいは現代エンドに言ってもおかしくないのでは? と、思っていたのですが現地に残留するエンディングでしたね。

柳生宗矩(CV:安元洋貴)

「死ぬ覚悟なら、できている」
「……だが、お前の笛を聞いた時にまさかと思った」
「同時に、死にたくないと……こんなことは初めてだ」

 前述もしましたが、やっぱりいるよね鬼枠が彼でしたね。八葉という属性に鬼の一族であることを重ね掛けし、また柳生という家の話にもマッチしていたのでやはりここら辺のバランス感覚がほんとうに今作は上手いですよね……。

 ところで宗矩なんですが、口数は少ないながらとにかく仕草がいい具合に可愛いんですよね。あまりこういう言い方を普段しない人間なんですが、宗矩は文句なしに可愛い大人だな……と思いました。現代ではじめてロボット型掃除機が動き出したのを見て警戒していたのを七緒に見られた時、なぜかおもむろに庭に出て鍛錬をして警戒していたのを誤魔化しさ様など「ネコちゃんなのでは!?」になったりと、無口であまり表情が動かないキャラクターにこういう属性を付与するのはほんとうに大正解だな……と。

 彼も彼で背負っているものは皆と負けず劣らずなんですが、特に過去の過ち(宗矩は何度過去をやり直すことができたとしても、そうするんだろうなと確信を抱きつつ)が何度も何度も目の前に現れて自分の行いを糾弾するという悪夢のような展開なので、正直宗矩ルートのラスボス関連の話が一番疲労感……というか、疲れを感じました。ヘイトが溜まるとまではいかないものの、これでもまだ改心しないか!? と思ったり。

 とは言え、最終的に封印というかたちでターラを倒し、これが一件落着……と行かないのが宗矩ルート。完全に気を抜いていたんですが、まさかここで再び七緒が龍神に取り込まれる(実際は七緒自身が龍神なのですが)展開が来るとは思わず。一体何年かけて宗矩は活人剣に至ったんだ……と思いつつ、命ある間に再会が叶ってよかったな、となりました。

最後に

 攻略キャラクター八人分ともなるとさすがに長々とした感想になりましたが、『遙か』シリーズらしいところもありつつも、新鮮な味付けがされている部分もある『遙か7』、物凄く楽しくプレイすることができました。

 オトメイトの乙女ゲームを連続でプレイしていたので、久しぶりにネオロマンスの新しい風にも触れることができたこともあり、より楽しめた気がします。同日発売だった『VARIABLE BARRICADE』も購入しておりますが、こちらは移植作になるのでゆっくりとプレイして行きたいと思います。

 それでは。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?