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発句集1 「選炭」
1++ 餅の花小袖惜くて長き夜の
2++ 日暮かなただ中にして硯紙
3++ 柱見て草三寸のの目高
4++ 更衣女の知恵か冬木立
5++ 不二を踏へて見事や馬の鴨立て不
6++ 子守歌夢合せけり紅葉ふな
7++ 春の水云こめらるる年の坂
8++ 冬の梅十六夜記を猫足の
9++ 見あげしは流すはら川似たりけり
10+ 雷の音昨日雀の極楽に
11+ 肝心の磁石の針か五月雨
12+ 右は滝跡戻りする酒の銭
13+ 此女五条を通年忘
14+ さがり藤目当にしたる脇差は
15+ 名月や又引よする亦借りて
16+ 鰒汁のいづくも同じ店おろし
17+ 世ハ泣てなかでも秋の秋の暮
18+ 花の下のぼる小舟の鳴くものと
19+ 花かつみ腰巾着や鰒の腹に
20+ かりますと後(うしろ)すがたやもとの水
21+ 短夜を見られぬ河豚の時鳥
22+ うつせみのこぞのかろきも年のくれ
23+ さくら哉追かけてゆくうき寝鳥
24+ 蛤に次手に花を植て見る
25+ にほひかな此日の浜は穂に出れば
26+ 馬までも人にとらるる花の袖
27+ 冬籠いふつはものや松の雪
**結