五感ドラマ「君が心をくれたから」のこと
「五感」とは人や動物が外界を認知するための感覚機能のうち、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五つの総称として用いられている言葉です。
もしも「五感」が失われるとしたら、どんなことが起きるでしょうか?
色々な答えが思い浮かぶでしょうが、このドラマにおいての正解は「五感が無くなると恋愛が出来なくなる」です。
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そんなふざけたドラマがあるのか?
と、お怒りになる気持ちは分かりますが、説明させて下さい。
「君が心をくれたから」はフジテレビ系列で月曜午後9時から放送されている作品、いわゆる月9です。主演は永野芽郁、山田裕貴の2人、今をときめく人気俳優が出演する「五感を失う恋愛ドラマ」です。
まず、この2人の高校生時代の回想からドラマは始まります。
永野芽郁が演じる逢原雨(通称:ザー子)は性格が暗すぎるという理由で学校中から笑いものにされていました。(これでも令和の作品です)
そんな雨にも明るく優しく接しているのが山田裕貴演じる朝野太陽(通称:ピーカン)でした。
いつしか2人は心惹かれ、学生らしい恋愛をしていました。そして卒業を迎え、雨はパティシエになる夢を叶えるために上京し、太陽は実家の花火工場を継ぐために地元の長崎に留まるため、前向きに別れることになりました。
時は過ぎ、それぞれの道を進んでいましたが、雨は幼少期に母親から虐待を受けていたトラウマが原因でパティシエを諦めて長崎の祖母の元へ帰ってきます。一方、太陽は花火師になるための修行を積んでいましたが赤色が認識できないという視覚障害になり、彼もまた夢を諦める岐路に立たされていました。
……ここまでの展開を読んで「正直クソつまんなそう」という感想を持たれた方も多いと思います。
特に太陽が視覚障害を起こすくだりで最近流行ったドラマの二番煎じの凡作だと思い、見るのをやめる方もいるでしょう。
しかし、この後そんなことは小さく思えるような事態が起きます。
雨(永野芽郁)が五感を失います。
視覚聴覚味覚嗅覚触覚、全部です。
座頭市も目黒蓮も天川アキトも敵いません。
しかもドラマの進行に合わせて、五感をひとつずつ失っていくという映画には出来ないテレビドラマの枠に合わせた仕様です。
なぜそんなことになるのかというとここが非常に難解なのですが、長崎で再会した2人が道を歩いていると太陽が急に事故に遭い重症を負います。そんな展開許されるの?とお思いでしょうが、事態は更に激変し、動揺する雨の前にいきなり黒服の斎藤工が現れ「彼の命を助ける『奇跡』を起こせますが、代償としてあなたの五感を奪います。どうしますか?」と聞いてきます。
何が起きているのかさっぱりですが、雨は太陽の存在が自分の生きる理由だと決意し、五感を差し出す代わり彼の命を救う選択をしました。
ここから2人の恋愛と、永野芽郁が五感を失っていく物語が始まっていくのでした。
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ここまで読んで頂いた方はおそらくこう思われたと思います。
「導入がクソ雑で急にファンタジーになったけど要はよくある闘病して悲恋してワーワー泣くやつじゃん」だと……
実際にその通りです
今のところそこを超える気配もありません
しかし、そのような感想を抱く方々にこそお尋ねしたいのですが、実際にこういうテイストの作品をちゃんと見たことはありますでしょうか。
この「世界」の「ルール」をご存知でしょうか。
それは「全てにおいて恋愛が至上」なんです。
恋愛さえ出来ればなんでもOKの世界なんです。
そのルールをこのドラマに当てはめると
五感よりも恋愛が大事
五感は恋愛をするためのもの
という現実では考えられない価値観の狂った世界が繰り広げられているのです。
五感を失うことになった雨は太陽との思い出だけを支えにして姿を消そうとしますが、太陽への思いを断ち切れず、また、太陽も雨への気持ちが日に日に高まり、2人はどんどんと関係を深めていきます。その前に色々とやることがあると思いますが、まずは恋愛です。
登場人物も増えていき、こんな重い話なのにまさか恋のライバルになりそうなイケメンも登場して度肝を抜かれます。
しかし、無情にも雨の五感を失うことは止められず、五感を失っていくたびに雨は五感の重要性に改めて気付いていきます。
その内容を簡単に書くと…
味覚…無くなると、好きな人から貰ったお菓子の味が分からなくなる
嗅覚…無くなると、好きな人から貰った花の匂いが分からなくなる、香りから恋人の記憶を思い出すことが出来なくなる
触覚…無くなると、好きな人を触っても分からなくなる、触覚は幸せを感じるためのものだった
全て常軌を逸していますが、これがこの世界では当たり前に通ります。
この世界のルールを再度申し上げます。
五感よりも恋愛が大事
五感は恋愛をするためのもの
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この狂った世界観がこのドラマの見どころであり、いつ、誰が、どんなことを言ってのけるのか目が離せません。
とにかくこんなに「五感を失う」という台詞が毎回のように登場する恋愛ドラマを見たことがありません。
つい最近の回まで、雨が五感を失うと何度言っても誰も病院に連れて行きませんし、そんな病気は無いから思い込みだよ、と受け流しながら恋愛ドラマが続いていました。
もしかしたら現実もそんなものなのかもしれません。
最後に、この作品が扱っているテーマはとてもセンシティブですが、障がいに対して差別や偏見を持っている作品ではありません。(無意識の差別や偏見は散らばっていると思われます)
五感よりも恋愛が優先される世界だからこそ、恋愛のことしか話に出てこないので、逆になんとかなってるようにも思えます。
無理をして見るほどの作品ではありませんが、この作品でしか得られないものが確かにあると思います。
気が向かれたら是非とも「君が心をくれたから」のご視聴をお願い致します。