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弁護士に頼まずにB型肝炎訴訟を乗り切った話
タイトル通りなのですが、実際に訴訟を起こしたのはコロナが流行し始めた2020年のことです。
インターネットで「B型肝炎訴訟 自分で」などと検索しても、出てくるのは「自分では無理」「弁護師に相談を」とばかり出てきて、実際の経験談がまったくなかったので、体験談をのこしておこうと思います。
もう5年くらい前の話で、詳細はうろ覚えなので、こんな感じで裁判が進むんだ~くらいで読んでいただけると幸いです。
一定の条件はありますが、条件さえ満たすことができれば、B型肝炎訴訟は弁護士に頼まなくても自分で必ずできるはずです(条件については反響があれば有料で販売しようかな)。
特に困難なことはありません。
そりゃ、テレビで弁護士法人等がCMしまくるはずです。何せ、条件さえ満たせば確実に和解金をいただくことができるのですから。
このNOTEを読んで、訴訟に挑戦する人が増えたら幸いです。
原告(父)の情報について
原告は私の父です。
昭和20年代生まれの団塊世代(現在70代)。注射の回し打ちなど当たり前のように行われた時代です。
B型肝炎だと気づいたのは、40を過ぎて人間ドックで指摘されたとかなんとか。訴訟云々より以前にB型肝炎の治療は行っており、現在もお高い薬を無料でいただいて服用しています(ありがたいことです)。
そんな父ですが、2019年に肝がんがみつかりました。
幸い早期に近い発見だったこともあり、手術で無事切除。抗がん剤も服用することなく、今は経過観察のみしているとのことです。
訴訟してみようと思ったきっかけ
肝がんになった時、父に言いました。
「これ、訴訟いけるんじゃね?」
父も同様に考えたようで、知り合いの弁護士に聞いたそうです。
弁護士曰く、「医療訴訟は本当に難しいんだ。証拠を集めるのも大変だし、書類をそろえても裁判に勝てる可能性は低いよ」と言われたそうで、あきらめたとのこと。
私もそんなものかなあと思ったけど、一応インターネットで調べてみると、厚生労働省にB型肝炎訴訟について(救済対象の方に給付金をお支払いします)というページがあるではないですか。
内容を見てみると、父は確実に対象者に当てはまっています。
必要書類も集められないことはなさそう。
しかも弁護士を通さなくても行けそうな感じ。
やってみるか~
ここで私が訴訟準備をすると父に宣言します。
訴訟準備
そうして訴訟準備、つまり訴訟に必要な書類をそろえていくのですが、これがそれなりに大変でした。
誤解しないでいただきたいのが、大変というのは手間がかかるということであり、書類の取得が難しいという話ではありません。
そろえる書類が多いので、病院や役所には何回も行く必要がありますし、新たな検査もしなくてはならないのです。
なんだかんだで4か月くらいかかったと思います。
高齢で医療知識のない父には書類に記載必要事項が書いてあるかどうかも理解できないので、病院等に行くときは毎回同行しました。
当時たまたま有給の取りやすい部署に配属されていたので、なんとかなりましたが、土日休みの会社員にはハードルが高いかもしれません。
ただし、1つ1つの書類取得難易度はそれほど高くはありません。
ここまで書いておいて伝え忘れていましたが、私は一応医療職とよばれる資格を持つ人間です。医療関係の単語に忌避感はありませんし、少し調べれば大抵の書類は理解できますので、一般の方よりは難易度が低かったと思います。
しかし、そのことを加味しても、書類の取得難易度は高くないと考えます。HBs抗原陽性、HBV-DNA陽性、HBe抗原陽性、HBc抗体陽性(高力価)など聞きなれない単語が出てきますが、それぞれの検査結果を集め、足りなければ再度検査を実施してもらえばよいのです。
B型肝炎訴訟は、原告が死亡・肝がん・肝硬変(重度)の状態であれば3,600万円もらえます。ほんの少しの勉強でこれだけもらえるなら、頑張ることをお勧めします。
いざ訴訟へ!
全部の書類が集まったら、裁判所に書類を提出に行きます。
私は事前に書類確認をしてもらうため、アポをとって裁判所に向かいました。
そこで担当者に言われたのが次の言葉です。
「素人でも書類は用意できるんだよ。でも、実際の裁判になったらお父さんだけで法廷で証言とかできるの?テレビでみるような法廷に弁護士もなしで一人で立つんだよ。今からでも弁護士探したほうが良いんじゃない?」
私は震えました。自分ならそれなりに医療知識もあるし、聞かれたことは全部答えることができる。でも父には無理かもしれない。
そこでいったん書類を持ち帰り、父に相談しました。裁判所の人がこうやっていってるけど、どうかな?って。
父は言いました。
「別に犯罪をしたわけじゃないんだし、正しいことにはハイと答えるだけだ。問題ない!」
心の底から父カッケー!と思った瞬間でした。
数日後、再度裁判所に向かい、書類を提出します。
「弁護士なしでいかせてもらいます!」
裁判所の担当者はしぶしぶでしたが書類を受領し、ここから国を相手にした訴訟が始まったのです。
裁判開始
裁判所に書類を提出(2020年3月)した一か月後くらいに地方裁判所の担当者から電話がかかってきました。
「訴訟は確かに受領しました。ただし、全国で同様の訴訟がたくさんあるので、実際の裁判手続きはかなり先になりそうです」
2020年4月といえばコロナパニック状態の時。みんな自宅待機でなんでも自粛しましょうっていう風潮。
まあしょうがないですねとお答えし、今後の手続き等も確認して、電話は終了しました。
この時、一番のネックだった法廷に父一人が立つのを避けるため、父は足腰も弱いし(ウソ、めっちゃ元気)、認知能力も落ちているので(ウソ、計算もばっちり)、息子の自分が付き添いして、難しそうな話があったら自分が回答してもよいかと確認。
そういうことなら大丈夫ですよ、との回答で一安心しました。
公判1回目
次に連絡があったのは2020年7月くらいだったかな?国の担当のスケジュールがとれそうだから日程調整しましょうと。
そして日程調整できたのが2020年8月。お盆真っ盛りの暑い日でした。
私と父は県庁所在地にある地方裁判所に出頭(ちなみに書類を提出したのは住んでいる市にあった簡易裁判所)。
厳重なセキュリティチェックをエントランスで受けた後、地方裁判所の担当者のいるフロアまで移動します。
そのフロアは普通の薄暗い行政オフィスでした。
担当者と挨拶して、廊下の古めかしいソファで待機。
20分ほど待った後、担当につれられて法廷に移動します。
そして緊張して入った法廷は・・・・・・
めっちゃ会議室やん!
8畳ほどの狭い会議室におじさんが3人座っていました。
長机のお誕生日席に一人。
そのお誕生日おじさんから見て左側側面におじさん二人。
私たちはお誕生日おじさんから見て右側に座るように指示されました。
皆が着席すると、地方裁判所の担当者がそれぞれを紹介。
お誕生日おじさんが裁判長。私たちの正面の二人が国の担当者のことでした。
裁判長が発言します(うろ覚えなので文言は結構違うと思います)。
「令和2年(ワ)第○○○○号の訴訟について開始します」
その後、裁判長が訴訟の中身を読み上げ(30秒程度の文言)、次の言葉が出ました。
「では、特に問題なければ一回目の公判を終了します」
え?終わり??
父はもちろん、国の担当者も一言もしゃべってないですけど。
そして忙しいのか、裁判長も国の担当者もさっさと会議室から退出。
そんなこんなで1回目の裁判は終了。時間にして3分くらいだったかな。
やる気満々だった私も父も拍子抜けしてしまったと同時に、これならいけそうだなと自信もつきました。
公判2回目
次に地方裁判所の担当者から連絡があったのは2021年の1月でした。
結構時間かかるって言ってた割には早かったなあと思ったら、中間報告をやるとのこと。
父子で地方裁判所に出頭。
前回と同じ会議室に行くと、おそらく前回と同じメンツがそろっていました。
裁判長のこれから始めますの合図で、今回は国の担当者が発言します。
「書類確認の担当が案件が多すぎて忙しい上に、コロナでなかなか審査がすすまないっす」
こちらは「ああ、そうですか」と回答して、即解散。
今回も3分程度で終了です。
父と二人、せっかく都会に来たからと、カウンター寿司を食べて帰りました。
公判3回目
次に連絡があったのは2021年10月。担当からは、おそらく今回で終わりではないかとのこと。
翌11月にいつものメンツで会議室に集合です。
裁判長「3回目の公判を始めます」
被告である国の担当者が和解案の書いてある書類を裁判長に提出します。
裁判長は和解案を読み上げ、「こちらで和解できますか?」と私たちに聞くので、「問題ありません」と回答。
「では、これにて裁判終了です」となり、解散。
今回も5分はかかっていなかったと思います。
請求手続き
和解成立後、数週間で和解金受領手続きのための書類が郵送されます。
そちらに必要事項を記入して返送。
実際の入金は2022年1月末でした。
終わってみて
本当にあっけなかったし、こんなの誰でもできると思いました。
何なら後半二回目の途中経過は、父の体調次第で(コロナ感染の危険性もあっただろうけど)、出頭しなくても良いですよといわれたくらいでした。
終わってみれば、今回の訴訟の一番の山は、簡易裁判所の担当者に「素人が裁判なんかできるんか?おん?」と脅されたところだったと思います。
脅しに負けなかった父がいてくれてよかった。
ちなみに和解金は非課税なので、丸々手元に残ります。大学まで行かせてくれた両親に、最後の親孝行ができたと思いました。
最後に
ここまで読んでくれてありがとうございます。
B型肝炎訴訟は全然難しくありません。
実は平行して、知り合いが弁護士事務所にB型肝炎訴訟を依頼していたのですが、こういう書類をとってこいと指示があるだけで代行してくれるわけではなく、結局自分が動かなくてはならないようです(事務所や手数料によっても違うとは思いますが)。
弁護士を使うと和解金に弁護士費用が上乗せされるのですが、それを勘案しても自分で手続きしたほうが絶対残るお金は多いと思います。
病態によっては和解金も少ないとは思いますが、もし将来に肝硬変や肝がんになれば追加で和解金をもらうこともできます。
申請期限も迫っていますので、一人でも多くの人が和解金を受け取ることができるように願っています。