見出し画像

大宮脱毛日記3

通された部屋は何と契約を交わしたブースの隣だった、しかもここ扉はあるが上空は開いている、防火の法令順守のためだろうか。
しかしこんな玄関先な所でやるとは思っていなかったぞ、もう少し奥まった部屋へと繋がる道があるのだがあれはもしや脂肪吸引や二重整形とかの激しめのお客さんブースなのだろうか。きっと騒ぐいや絶対騒ぐ、私は痛みには弱い方なんだ少しの事でキーキー騒ぐんだ。

もしあの契約ブースに他のどうしようかな、毛?抜いちゃう?でもぉとかの迷える子羊ちゃんがいた場合、私の絶叫等でビビり散らかさせてせっかくここまで足を運んだのに全てがパアになってしまう可能性すらある。
いるのか分からぬ他の客のために私は口をへの字にしたが、全くもってそんなことで私の絶叫が止められるわけはなかった。。
元気な看護師レディはにこやかに履くべき紙パンツの前後を指示し、ベージュのボタン付きスカートを渡すと部屋から出て行かれた。
おおう、これが脱毛用の紙パンツ。極限まで薄く青くゴムは白く全くもって頼りない事この上ない、防御力-2みたいな作りだ。
面積の広い方が前で紐状態が後ろ……いや逆だったか?いかんもう忘れてしまった。パンツの向きも忘れてしまうとは、いやきっとこれは脳がこの情報はどうでもいいデータですと判断して消去したなうん、そういう事にしよう。
で、防御力-2パンツを装備しボタンを前にして結構長いスカートを穿く、上半身は着てきた服のままだがもしワンピースで来た場合どうなるのだろうか、たくしあげるのか?

施術台に寝ればいいのか座ればいいのかはたまたその脇に立っていればいいのか不明なので何故か岩の上に座るアリエルみたいなポーズで元気レディを待つ、ああいった時どうすればいいんでしょうね。
元気レディがブースに入ってくると寝かされなんやかんや雑談をしながらベッドが上昇していく、昔の店では競泳選手みたいなゴーグルを装着したがここはハンドタオルを目の上にかぶせる方式らしい。しかし念には念を入れて私は目を瞑ることにした。

レディが大きなヘッドの方でわたしのVゾーンをパチコンパチコンと処理していく。
驚いたのがよくHPなどで輪ゴムを当てたような痛みですって書いてあったので、ショットを撃つたびにパチンという音がするのだと勝手に思い込んでいたのだが、実際はピッという電子音が鳴るだけでよくまあ考えてみれば当たり前なのだが、人間の思い込みの力は恐ろしいと思った次第です。
あと輪ゴムは違うと思う、なんかこうぎゅむって摘ままれてじわっとしてイッテーーーーー!って感じです。ごめんなさいここ痛いと思いますってレディが言う場所はもう本当に間違いなく痛い。

最初水色の不織布が敷かれたベッドの両端を握っていたのだが、ここを握って痛みのあまり破壊した上に手汗べちゃべちゃ野郎だから不織布が物凄く濃い青色になったら恥ずかし過ぎる!と思い直し、がばちょと広げられたクリーム色のスカートの端を団子状にして握りしめる事でベッド破壊を阻止することに成功した。

ねえみんなこれ我慢してるの?こんな激しめの拷問を乗り越えてみんなツルスベお肌ゲットだぜしてるの?すごいわ、今まで脱毛してきた人々に畏敬の念だわ。
人体の不思議を感じまくりですよ、右側ショット打たれると左の足先がビヨンって勝手に揺れるんですよ、何なのこのシステム。
もうね堪えてるけどぐはあぐはあしまくりで、本当に脱毛レベル1みたいな悩めるお客様がいないことを願いまくった。うるさかっただろうなと思う。

途中で筋肉は緊張していると痛みを感じやすいからはいだらーんってしてねってコロナの自衛隊予防接種で自衛隊のイケメン先生に言われたことを思い出し、力を抜くともうね声が漏れてしまうのですよ。
ぐはああみたいな。恐怖の薩摩汁!という謎のワードが脳内を飛び交いスカート団子を握る手はマックスハートというわちゃわちゃ状態を乗り越え、元気レディが細かい部分をやりまーすという死の宣言をゾンビ状態で拝聴する。
あばばばばば、やめてくれ今ので十分致死量の痛みは喰らった。ひんやりジェルを塗りながらこっちの方が痛いっていうお客さん多いんですよねとか即死ワードをサラッと言わないでくれ。ここから脱出…無理だ、9900円払ったんだ今の多分4500円分くらいだろう。自分の中のみみっちい生き物がガンバレという最低な声をかけてくる。
あうあうあうしながら塗り込められたジェルの上からハイ行きまーすという死の宣告を受ける。

ピッ

おふう。

あ、大丈夫です。ゴリラは一般の人間と痛みの感じ方が違うのかさっきより全然我慢できるーーー!
さっきのがギュムゥアチイウオッだとしたら今回のは分かりやすく針、極細針でちくりんこされている感触です。ちくんちくんしますねえといった感じ。
元気レディはこっちの方が嫌がるお客さんが多いんですけどねえと言っていたが痛みというのはおそらく個人差が激しいもんなんだろう、強弱のどこまで我慢が出来るかレベルが違うのは勿論痛みの種類でも耐える耐えられないというのは変わって来るんじゃないかと。
そんでもって施術はガンガン進み、O部分に到達した。これどうすんのと思っていたが(腰を突き出す女豹のポーズでもするのかとビビっていた)まさかの足を自ら抱えるスタイル。そうすることで施術できると、よかった女豹じゃなくて。
しかし女豹回避をしても更なる体験が私を襲う。ジェルつけて器械を押し当てられると無茶苦茶くすぐったいのである、もう奥歯噛みしめてどうにかなるレベルではない。はいじゃあ照射しますねーの声掛けの次の瞬間結構な大きさの声で爆笑、そして走り込んでくる鋭敏な痛み。
ワハハイテェ!っていう感じがエンドレスですよ、笑わせて痛がらせて感情もう無茶苦茶ですよ。
まあそうこうするうちにじゃあ終わりですねのお声がけ、ふうやれやれ生きて帰ってこられたわいと思ったのも束の間まさかの

「あ、一か所だけもう一回やってもいいですか」

普通なら諸手をあげてありがとうございますと五体投地するべき案件だろう、打ち漏れないようきめ細やかなチェックの結果という事なのだから。
しかしもうジェルも拭きとられた後にもう一度か、ぐぎぎイエ結構デスと言いたいのを堪え一般人の仮面を被り「オネガイシマス」と言ったのであった。偉いぞ私。

もう全てが終わった後はホヘーとしてしまった。全身の力をマックスまで籠めていたので(途中で力を抜くと決めたのに結局力はみなぎっていた悲しきゴリラ)反動なのか何なのか脱力感が凄い。
ヘロヘロモードのまま元気レディに一旦家帰ってまた次やるかどうか連絡するわと言い残し私は城本クリニックを去った。
レディはエレベーターが来るまでずっとお見送りをしてくれて、高級旅館に来たんだっけと回らない頭で考えながら大都会大宮に私は放り出された。

HP及びMPまでもが著しく減少したため、駅の中にあるチーズタルトの店BAKEでソフトクリームを注文し、なんだかんだで残暑が物凄い大宮駅の雑踏を眺めながら食べる。
ここの店は昔北海道で有名なきのとやの若い子が立ち上げてなんやらかんやらしたという話をふんわり知っていて、あの極旨だった新千歳空港のきのとやソフトクリームのジェネリックバージョンが食べられるのではないかと期待して購入した。
結論から言うと美味しい、しかし全くもって100パーセント同じかと言われると微妙に違うような気もする。新千歳空港のはもうお腹がはち切れそうになるようなボリュームだったが、BAKEのはなんだかんだ言って自分一人でぺろりと食べきってしまった。ただ単に昔よりも大食いになったのだけかもしれないが。

次の施術後どこのソフトクリームを食べようかと考えていた時ふと気が付いた。私はどうやら次も行くらしい。
さて、本当に行くのか。お得な五回コースを申し込むのか、それともこれからの日々で何らかのまた気持ちがしょげる出来事が勃発しここで打ち止めになるのか。

こうご期待。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?